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第3章

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 門を出て、怪しまれない程度のスピードで霧の森へと向かう。
 あ、プレナはまだ出してないよ。飛んでっちゃいそうだから。

 人が疎らになってきた辺りで、スピードを上げる。おぉ、速い速い。結局、ギルさん達と来た時の半分以下くらいの時間で到着した。

「プレナ」

 《はーい。ちゃんと呼んでくれた!》

「ちゃんと忘れてなかったから。で、昨日言ってた声って、聞こえる?」

 プレナにしか聞こえなかったっていうことは、もしかしたら、助けを求めていたのは魔物かもしれないね。
 プレナは私に言われて、耳に手を当てて音を聞いてるみたい。
 ……それがものすごく可愛い。だけど、プレナは真剣なんだから、邪魔しないようにする。

 《うーん…小さいけど、多分こっち》

 小さな手で右の方を指さした。もちろん、その方向は霧の森がある。

「こっち?」

 《うん。多分》

 とにかく頼れる情報はそれしかないので、ひとまずその方向の森中へ足を踏み入れる。

「あ、出れるかな?」

 森に入ってから気付いた。迷って出らなくなったらどうしよう?

『問題ありません。私が案内します』

 ほ…良かった。じゃあよろしくね。

『はい。お任せ下さい』

 ハクが出口まで案内してくれるなら安心。ということで、さらに森の奥へと進んでいく。すると、段々霧が濃くなっているように感じた。まるで、この先へ行かせたくないかのように……

「ね、ねぇ、こっちであってる?」

 思わず不安になる。だって私の足音しか聞こえないんだもの。

 《大丈夫!多分こっちだから!》

 た、多分…でも、それでも進むしかない。
 覚悟を決めて、さらに進んでいく。

「なんか…霧は濃いけど、空気はいいというか…」

 《それは私も思ったの。でも、嫌いじゃない》

 そう、嫌いじゃない。寧ろ…心地いい。

『おそらく、ここは聖域に近いのでしょう』

 聖域?

『はい。清らかな力が集まってできる空間です』

 なるほど…そんなものがこの森に。

 《あ!主様!あれ!》

 プレナが叫んで指さした先には、うっすらとだけど光が刺していた。
 私はその方向へ迷わず進む。そしてその光に差し掛かった瞬間、

 目の前が真っ白になった。いや、光に包まれたと言った方がいいかもしれない。実際、眩しくて思わず目を閉じてしまった。

 しばらく経って、目を開けると……

「なにこれぇ…」

 目に飛び込んできた場所は、霧なんて全くなく、木々は生い茂り、そのどれもが熟した実をつけていて、清らかな水がその脇を流れ、そこかしこに色とりどりの花が咲き乱れていた。まさに楽園とも呼べる場所だと感じたのは、間違いじゃないと思う。

 《すごい…綺麗…》

 プレナも感動しているみたい。でも、いつまでも見とれてる場合じゃない。

「プレナ、声は?」

 《…あ!ちょっと待って…こっち》

 プレナが指さした方向へと進む。進めば進むほど、空気が澄んでいくのが分かる。
 ……そして、到着した先には、1羽の灰色のうさぎが平らな石の上に倒れていた。いや、寝かされていたと言った方がいいかも。
 そのうさぎに少しづつ近付いてみる。すると、どこからともなく大小色とりどりのうさぎ達が姿を現した。しかも、まるで寝ているうさぎを守ろうとするように…

「え、えぇっと…」

 いきなりの展開にちょっとついていけないんだけど…
 すると、するするとプレナが地面へと降り立ち、会話を始めた。

 《大丈夫。主様はいい人だから》

 身振り手振りでプレナが説明していく。可愛い…

 《…主様、なんか変なこと考えてない?》

「え?!そ、そんな事ないよ?」

 ジト目でプレナが見てくる。いやほんとに、可愛いって思っただけだから!

 《…まぁ主様はこういう人だから、大丈夫!》

 それのどこが大丈夫なんだか。まぁ今そんなこと言ったら面倒なことになりそうだから、言わないけどさ。

 そんなプレナの説得?が上手くいったのか、うさぎ達が道を開けてくれた。

 《さ!主様!》

「う、うん」

 なんかモーゼみたい……って、今はそんな場合じゃないね。とにかくお礼を言って、寝ているうさぎの元へ。

「大丈夫?」

 優しく頭を撫でながら、語りかける。だけど、呼吸は荒い。

 ハク、何か分かる?

『マリーナ様の神眼で見れば分かります』

 神眼…

 心でそうつぶやくと、ポンッと半透明なプレートが現れた。

 ┠ステータス┨───────────
 名前:なし
 種族:ヴェルトーラス
 年齢:384
 レベル:138
 ステータス:魔力:5070  HP:3420(-24)
 魔法:草属性Ⅷ  風属性Ⅴ  
 ユニークスキル:聖域結界
 スキル:魔力制御Ⅴ  魔力操作Ⅴ
    称号:聖域の主 ヴェルトーラスの長

 備考:呪い

 ────────────────────

 呪い…?

 さらに詳しく。

 呪い:聖域を侵すモノに蝕まれた状態。

 聖域を侵す…

「ねぇ、聖域を侵す存在って分かる?」

 《聞いてみる!》

 プレナが聞いている間に、できる限りのことを…!

『………』

 呪いを解除するには、おそらく原因を取り除く必要がある。だけど、それをする前に、このうさぎの命は…

 考えろ。考えるんだ。
 呪い。悪意。つまり悪。それの対になるもの………聖?でもどうやって…

 そうこうしている間にも、命の灯火は消えていく。

 やっぱり私には…いや、私は助けられるほどの力を持っているはず。ここで諦めるもんか!

「聖属性…解呪…」

 解呪は…多分体を蝕む存在を追い出すこと。なら…

「ちょっとごめんね」

 うさぎの体に触れ、そこから聖属性の魔力を流す。うさぎの体の中にある、を押し出すイメージで…

「お願い…」

 焦る気持ちを抑え、慎重に魔力を流す。すると、体から黒い煙のようなモノが出てきた。これが…呪い?
 とにかくそれを逃がさぬよう、聖属性の結界で閉じ込めていく。この聖域を穢す訳にはいかないから、ね…。

 しばらくそれを続けると、次第に煙は薄くなり、やがてなにも出なくなった。

 神眼…うん。呪いは消えてる。よかった……

 《主様!?》

 視界が傾く。あぁ…ちょっと無理したかも……
 私はそのまま意識を失ってしまった。












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