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第3章

宿とギルドにて

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 あの後ギルさん達に手伝って貰いながら、なんとかロールハーキュを食べ終えた。

「うぅ…苦しい」

「それは俺も同感だな…」

 珍しい。ギルさんがそんなこと言うなんて。いつもはお腹にミニブラックホールがあるんじゃないかって思うほど食べるのに。

「じゃあもう寝ましょうか」

「はーい…」

 リナさん、フィーナさんと部屋へと向かう。そこで体にクリーンをかけつつ、プレナを呼び出した。

 《また忘れられたかと思った!!》

 大層怒っていらっしゃる。

「ごめんね、ちょっと話し込んじゃったのよ」

 《…忘れてた訳じゃないのね?》

「もちろん!!」

 そう断言すると、ようやく機嫌を直してくれた。はぁ…

「ふふっ。大変ね」

 そんな様子を見ていたリナさんがそうつぶやく。フィーナさんはもう眠っていた。寝るのは早いのに、起きるのは遅いのよね。

「明日はどうするの?」

「ひとまずカリナさんとお話があるので、ギルドに行きます」

 ランクは上げたいか上げたくないかで言われたら、上げたくない。目立つもん。それにギルドから強制的な依頼を持ちかけられるのも御免だし。
 ただ、多くのお金を貰えるというのは嬉しい。だから、ちゃんと相談したい。

「カリナと、ねぇ…」

 そう言えば、リナさん達はカリナさんがサブギルマスだと知っているのかな?ギルさんは驚かなかったから知ってたっぽいけど…うん。ひとまず聞かないでおこう。カリナさんがサブギルマスてあることを隠して受付をしているのには、何かしら意味があると思う。だから、無闇に言うべきことでは無いよね。

「おやすみなさい」

「ええ、おやすみ」

 《おやすみ、主様》

 私はプレナを抱いて、眠りについた。あ、明日パジャマ買おう。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 翌日。起きるとプレナは枕元にいた。

 《あ!おはよう、主様》

「おはよう…で、なんでそこに?」

 《え!えぇっと……》

 途端に目を泳がせるプレナ。なぜ?

「言いたくない?」

 《…うん》

 戸惑いながらも頷いた。まぁ言いたくないことを無理に聞くつもりはない。

 《(だって主様、寝相悪いんだもん…)》

 そんなプレナの心の声は、私に届くことはなかった。

「ふわぁ…おはよう」

「おはようございます」

 リナさんが起きてきた。フィーナさんはまだ寝たままだ。

「起こして貰っていい?」

「分かりました」

 名前を呼んで体を揺すってみるけど、一向に起きる気配がしない。
 …ちょっとイタズラをしたくなった。魔法で氷を創って背中に…

「ひゃあぁ!!」

 わぁお。効果抜群。

「ちょっと!なに!」

 いつもの様子とは違うね。パニクってるから?

「ふふっ、アハハハッ!!マリーナちゃん面白過ぎる…!」

 後ろでリナさんが大爆笑してる。てか見てたのね。

「え、マリーナ?」

 心底驚いた様子で私を見つめてくる。
 私はニコッて笑って、「おはようございます」とだけ告げた。

「あ、え…おはよう…?」

 なんで疑問なんだろ。

「ぷぷぷ。さ、さぁ食事を食べに行きましょ」

「はーい」

「え…う、うん」

 そう言われてフィーナさんが着替え始めると、リナさんが私のやった事を話していた。
 背中に氷を入れたって言ったとき、フィーナさんの目が点になっていたのが、ちょっと面白かった。

「マリーナ…その、今度はやめて?」

「はい。ちゃんとフィーナさんが起きたら、しません」

「そうよね。悪いのはフィーナだものね」

 2人から言われて、フィーナさんはちょっと焦りが見えた。珍しい。

 その後下に降りると、またギルさん達が先に座っていた。

「おはようございます」

「おはようさん」

「おはよー」

 朝の挨拶を交わして、食事を頼む。スープを頼んだけど、流石に昨日のようにダリオさんが飛び出してくることは無かった。

「マリーナは今日…カリナからの話があったな」

「はい」

「なら一緒にギルドまで行って、そこで分かれることになるな」

 まぁそうだよね。ギルさん達は冒険者なんだもん。
 そのあといろいろ話しながら、食事を食べ終える。

「じゃ行くか」

 宿を後にしてギルドへ。道中プレナは影に入ってもらった。多分半日もかからないと思うから、話が終わったら昨日の霧の森まで行ってみようかな。

「あ!マリーナちゃん!来たのね」

 どうやらカリナさんは入口で待ち構えていたらしい。すぐに捕まってしまった。

「じゃあまた後で」

「おう。しっかり話を聞いて考えろよ」

「分かってます」

 そんな会話をして、ギルさん達と別れた。報酬金を受け取って、また新しい依頼を受けるらしい。後で報酬金は分けてくれるという。それとわたしが拾った魔石は、私の分でいいんだって。結構拾ったよ?有難いからいいけど。

「じゃあ昨日の部屋で話しましょうか」

「はい」

 昨日と同じようにカリナさんに案内されて、部屋に入る。そして、勧められるままソファに座った。

「さてと。昇格の件なんだけど…やっぱり依頼の数が足りないわね」 

 やっぱりそうなんだ。まぁ常時依頼はしてきたけど、それ1回だけだしね。しかも納品してないし。
  だから実質、依頼完了したことあるの、昨日のやつだけなのよね。

「という訳で、1つ依頼を受けて欲しいの」

「依頼?」

 なんだろ?ていうかそれだけで昇格できるってことは、かなり危険な依頼ってことだよね?

「依頼っていうのは…」

 焦らすカリナさんに、思わずゴクリと唾を飲む。

「…研究者の護衛をしてもらいたいの」

「……はい?」

 護衛依頼?てっきりなんかの魔物の討伐かなって思ったんだけど…

「植物の研究者の護衛なの。場所は、魔の森」

 ……とても聞き覚えのある森ですね。

「護衛するだけですか?」

「ええ。でも1人だけでは危険だろうし…」

 いや、危険ないと思います。だって魔物が私のこと避けるんだもん。

「とりあえず、実力的にも、ギル達と行くのがいいかしら?」

「あー、なるほど。大丈夫です」

「そう?なら詳しいことは追って連絡するわね」

「はい。じゃあ今日はこれで…」

「ええ。ありがとね」

 カリナさんに見送られ、ギルドを後にした。

「……あ、薬草納品してない」

 まぁお金には困ってないし、後ででいっか。とりあえず昨日の霧の森へ向かってみよう。
 そう思って私は南門へと足を向けた。







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