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第3章

昇格と師匠!?

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 夜の人の往来が多い通りを抜け、ギルドに到着した。ギルドに入ると、中は朝より人でごった返していた。

「こっちだこっち。はぐれるな」

「はーい。プレナは入っててね」

 《うん…忘れないでね?》

 うっ!わ、分かってるって!
 プレナを影に入れて、人混みの中をギルさんと手を繋いで歩いていく。

「あー、並んでるな」

 よく分からないけど、どうやらカウンターが混んでるらしい。

「ふふっ。お困りのようね」

 その声は!?

「カリナさん!」

 声のする方を見ると、カリナさんが微笑んで立っていた。いやでもなぜ?

「ちょっと今日は団体でね。特別にギルマスから個室を借りるの許可されたから、こっちに来て?」

 ほうほう。団体さんだったのか。
 言われた通り、カリナさんについて行く。そして、決して広いとは言えない部屋へと入った。

「おい、カリナ。こんな待遇してもらったことないぞ?」

 ギルさんがカリナさんに怖い顔をして突っかかった。あ、あれ?そうなの?

「もう、マリーナちゃんが怖がってるじゃない」

「え、あぁ…すまん。だが!」

「はいはい。とにかく座る」

 完全にカリナさんのペースだわ。ギルさんも話が進まないと分かったのか、渋々といった感じで部屋のソファへと座った。

「さてと。今回の依頼は?」

「…スライムの討伐。完了した」

 淡々とギルさんが答える。

「うんうん。それで?マリーナちゃんはどうだった?」

「わ、私?」

 尋ねられるとは思ってなかったから、ちょっと混乱状態。

「えっとー…私は弓で」

「え?魔法は?」

「使おうかなって思ったんですけど、どうせなら別の武器でやりたくて」

「なるほどね…マリーナちゃんは弓も使ったことがあるのね」

「え?初めてですけど?」

 そう言うと、何故かギルさんとカリナさんが驚いた。なんで?

「は、初めてであれなのか?」

 あれとは?
 そう思って首を傾げる。

「あれだよ。3本打ちしてただろ?」

 あぁー…やってた。

「やってましたけど?」

「それで初めてか?」

 そう言われて初めて気づいた。あれ?私ってなんで弓があんなに上手く使えたんだ?

『オケアニス様が武器スキルをマリーナ様に付与しました』

 グランパパではなく、アニスお姉ちゃん?

『はい。少しでも気に入られたいと』

 ……うん。とりあえずありがと。アニスお姉ちゃん別に好きなんだけどなぁ?

「おい、大丈夫か?」

「あ、大丈夫です。でも、なんでそんなこと聞くんです?」

 いきなりそう言うからには理由があるんだよね?

「…そうね。言っておくべきだったわ。まず、私はこのギルドのサブギルマスなの」

 ……はい?

「えぇ?!カ、カリナさんが?」

「そうなの。で、今回マリーナちゃんの実力を知りたかったのよ」

「でもあの時…あ」

 そうだった。登録の時、模擬戦してないんだ。魔法しか見てなかった。

「気づいたようね。そう。今回の依頼はそれの代わりみたいなものなのよ」

 なるほど。実力を実戦で測った訳か。ギルさんも知ってたのかな?

「俺は知らなかったぞ?」

「言う訳ないじゃない。これはギルドの重要機密なんだから」

 そ、そうなんだ…

「で、どうなんです?」

「十分よ。ギルから聞いたし、報告も合ってるから」

 報告?

「まさか…監視してたのか?」

「やぁねぇ。付き添いって言って?」

 み、見られてたんだ…全然気が付かなかった。

「まぁ今回の結果から、マリーナちゃんのランクを上げたいのだけれど…」

 カリナさんが口ごもる。なに?

「依頼、これがはじめてなのよね?」

「あぁー、まぁそうですね」

「だったら足りないのよねぇ…達成件数が」

 なるほど。

「まぁ私はあまり目立ちたくないので、上げなくても…」

「「だめよ(だ)!」」

 いきなりギルさんとカリナさんがそう叫びながら立ち上がった。ビックリした…

「なんで?」

「なんでって…宝の持ち腐れじゃない」

 うーん…そうなのかなぁ?

「上がったらなにがあるんです?」

 メリット、デメリットを聞いておかないと。

「そうねぇ…まず受けられる依頼が増える。そして比例して報酬が上がる」

「その反面、危険が増す」

「あと、強制力はそこまで強くないけど、ギルドから依頼を持ちかけられるわね」

 ギルさんとカリナさんがそれぞれ説明してくれた。なるほどね。いっぱいお金が貰えるけど、その分危険と義務が発生するのか。

「分かりました。ひとまずその話はまた今度でいいですか?もう夜も遅いので」

「あ、そうね…えぇ。じゃあ今日の依頼の達成受理をするわね」

 カリナさんにギルドカードを渡して、達成受理してもらう。
 カリナさんは目の前でカチャカチャと四角い機械を操作して、再び私に返してくれた。ギルさんも同じ。

「はい。これで完了。とりあえず報酬金は明日でもいい?あの団体のせいでお金がないのよ」

 お、お金がないって…どんだけあの団体貰ったのよ。

「じゃあ魔石も明日のほうがいいか」

「ええ。そうしてちょうだい。その時、マリーナちゃんも来ておいてね?」

「分かりました」

 そう約束して、カリナさんと共に部屋から出る。すると、人はだいぶ少なくなっていた。

「あ、やっと来た!」

 リナさんがそう言って近づいてきた。かなり待たせてしまったみたい。

「すまんすまん。じゃあ行くか」

 ギルさん達とギルドを後にする。向かったのは勿論[宿り木亭]。そこで食事をとる。

「私は…スープで」

 流石に2日連続でロールハーキュは無理です…

「師匠!なんで食べてくれないんだ!」

 いきなり厨房から男の人、確か…ダリオさん?が叫びながら出てきた。てか師匠ってなに?!

「え、えっとー…ダリオさん?」

「あぁ。師匠!食べてくれ!会心の出来だ!」

 やっぱり師匠って私のことか……ダリオさんの右手には大きな、それは大きな……ロールハーキュ。

「ダ、ダリオさん…」

「なんだ?」

「……恥ずかしいわ!!」

 思わず声を荒らげる。だってまだ他にもお客さんいるのよ?恥ずかしいでしょうが!

「す、すまん…だが」

「はぁ…分かりました!食べますから師匠ってやめてください!!」

「いやむりだ」

 なぜだぁ!

 その時、ぽんぽんと肩をたたかれた。誰だと思って見てみると…宿のカウンターにいた女の人だった。

「ウチの夫がすまないねぇ」

 夫……

「あ、ダリオさんの奥さん?」

「あぁ。夫はこう言ったら聞かなくてねぇ…」

 そう言ってどこか遠くを見つめる奥さん…大変だったんだね。

「はぁ…」

 本日2回目?のため息をつく。

「食べますからもうそっとして…」

「あ、あぁ…」

 ダリオさんもちょっと冷静になったのか、静かに去っていった。
 ………特大ロールハーキュを置いて。

「マリーナ…まぁがんばれ」

 …ギルさんも手伝ってね?食べるの。


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