上 下
31 / 130
第2章

これは私のわがままです

しおりを挟む
 オケアニス様が空中から取り出した…いや、取り出すには少々大き過ぎる気もするけど…

「どう?」

 そう自信満々に聞いてくる。

「こ、これって…」

 私の目の前に現れたのは…………向こうで使い慣れたシステムキッチンだった。

「え、ど、どうして…」

 脳内プチパニックである。あ、いや。今は脳ないんだっけ?
 でも、そんなことよりなんで?!なんであのシステムキッチンが!?

「ふふふっ。驚いた?」

「いや、驚いたというか…理解できないというか…」

 だってもう使うことはないって思ってたから…

「これはマリーナちゃん…正確に言えば真衣ちゃんの記憶から作ったのよ」

「私の…記憶…?」

「そうよ。だって必要な道具が分からなかったんですもの」

 いやまぁ確かに言ってなかったけど!

「私の記憶…覗けるんですか?」

「ええ、もちろん!だって神様よ?」

 ま、まじかぁ…え、てことは今までの心の声とかも筒抜け?

「私の…考えてることも分かるんですか?」

 思わずそう尋ねてしまった。

「ああー…それは…分からないのよ」

 あ、あれ?てっきりそれも分かるものかと…

「人間相手とかだったら分かるんだけど、マリーナちゃんは違うしね」

 ええ、神龍ですね、私は。未だに認めたくないけどね!

「神龍っていうのも神の眷属に当たるから、漠然と考えてることが分かるんだけど…マリーナちゃんは、もはや神龍とは言えないになっちゃったからね」

 いやその言い方なんか怖いんですけど!?未確認生命体ですか?私は!

「そ、それって大丈夫なん…ですか?」

 私がじゃなくて、、だ。

「まぁ大丈夫なんじゃない?」

 …随分軽いな。神様がそんなんでいい訳?ちょっと抗議の視線を向ける。

「だ、大丈夫だから!ちゃんと確認してるから!だからその目止めて?!」

 …ほんとかなぁ?疑わしいのでグランパパに目線を向ける。

「大丈夫ですよ。私も確認してます」

 ほ、なら安心だね。

「え、私ってそんなに信用ないの!?」

 後ろでオケアニス様が倒れ込んだ。なんか落ち込んでる…落ち込む要素あったかな?

「…とりあえず…これは…どうしたらいいんですか?」

 グランパパに助けを求める。

「大丈夫です。ほっとけば戻ります」

 なんか扱い雑くない?!いや、私も言えたもんじゃないけどね?

「そ、そうですか…で、これは使っていいんですか?」

 オケアニス様を放置し、システムキッチンを指さす。

「多分いいんじゃないでしょうか?」

「でもこれってどう運べば…」

 あ、そう言えば無限収納庫インベントリはこっちでも使えるんだっけ?でも、これ何処で使うよ?

「何処で使えばいいんでしょう?」

「ここで使えばいいのでは?」

 いや、料理するためにわざわざ教会に来るのもめんど…大変だしなぁ。

「ううぅ…マリーナちゃんが構ってくれない…」

 え、構って欲しかったの?

「えーっと…オケアニス様?」

 とりあえず名前を呼んでみる。

「……違うぅ…」

 あ、あれ?名前間違えちゃった?

「名前間違えましたか?」

「いや名前は合っていますよ」

 私の質問にグランパパが答える。じゃあなんで違うの?

「あのー…じゃあ、どう呼んだらいいんです?」

 答えを本人に聞くほうが早いよね。
 私がそう考えて尋ねると、待ってました!と言わんばかりに、オケアニス様が顔をバッと上げた。

「マリーナちゃんはグランのことをパパと呼んでるわよね?」

「ええ、そうですね」

 あ、この流れは…

「じゃあ私はマ「お断りします」まだ言ってないのに!?」

 だってね?そこまで言ったら分かるよ。

「オケアニス様をママとは呼べません」

「ど、どうしてよ!?」

「私が、グランドリア様をパパと呼んでいるのは…私というからです」

 だから何も関わってないオケアニス様をママとは呼べない。変な考えかもしれないけど、私にとってパパとママとはそういう意味を持つ。無論本当の親はお父さんとお母さんだけどね。

 

「そんなのズルい!グランはマリーナちゃんを帰れなくした張本人なのに!」

 …まぁそうでもあるよね。

「確かにそうかも知れません」

「だったら…」

「それでも、私のために頑張ってくれました。私からしたら、それがとても有難かった」

 右も左も分からない私をフォローしてくれたのは直接的には[ハク]だけど、それを創ってくれたのはグランパパだからね。

「だから感謝してるんです。別に恨むとか、そういう感情がないからこそ、私はパパと呼んでいるんです」

 でも、確かにオケアニス様も私のために…だよね?システムキッチンを創ってくれた。その感謝はしないとだよね。まぁママと呼ばないのは、ただの私のわがままなんだけど…

「だからママは無理ですけど…そうですね、お姉ちゃんはだめですか?」

 なんとなく、妹が好き過ぎるお姉ちゃんに見えてしまうんだよね。

「お姉ちゃん…私がお姉ちゃん…」

「あ、あの…?」

 ちょっと目が怖い感じでブツブツ言うもんだから、心配になって声をかけたんだけど…
 …その瞬間、またしても抱きしめられた。

「ゔっ!」

「とっても嬉しいわ!」

 た、大層嬉しそう…なんだけど、

「く、苦しい…」

 堪らずペシペシとオケアニス様の腕をタップする。

「あ、ご、ごめんね!」

「はぁー…」

 ゆっくりと息を吐く。ほんと死ぬかと思った…

「今度から気をつけて下さいよ……アニスお姉ちゃん」

 オケアニスの後ろを取って、アニスお姉ちゃん。

「……っ!」











 ………………とてもお気に召したようで、またしても抱きしめられることになったということは、言わなくても分かるだろう。ぐぇー…

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

笑う女の子

ホラー / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:0

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:8,165pt お気に入り:4,180

チートな親から生まれたのは「規格外」でした

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,499pt お気に入り:529

無関係だった私があなたの子どもを生んだ訳

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:27,606pt お気に入り:9,782

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:1,879

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:6,879pt お気に入り:3,843

転生幼女の愛され公爵令嬢

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,817pt お気に入り:2,420

処理中です...