21 / 130
第2章
宿
しおりを挟む
商業ギルドからでると、もう既に辺りは暗くなっていた。
「今日のとこはここまでだな。宿にいくぞ」
「あれ?ギルさんたちはここに住んでるんじゃないんですか?」
「ああ。ここには長く滞在してるが、本当はいろんなとこを巡ってんだよ」
へー!それなら私もこの世界旅してみよかな?どうせ帰れないし。
「じゃあ行くぞ。マリーナの分は払ってやるよ」
「え?!そんなお構いなく!お金ももらいましたし」
「子供が遠慮すんじゃねぇよ。ほら、いくぞ」
そう言ってギルさんは歩き出してしまった。慌てて後をついて行く。
「ごめんね、マリーナちゃん。ギルはああ言うと聞かないのよ」
「大丈夫です。むしろありがとうございます!」
日本人として、泊まらせてもらうことは遠慮したいとこだけど、せっかくの好意を無駄にする訳にもいかないしね。
歩き続けていると、突然ギルさんが立ち止まった。
「ここだ。入るぞ」
そう言って入っていったのは、入口に[宿り木亭]という看板が掲げられたこじんまりとした二階建ての建物だった。
「さぁ、入りましょ?」
「はーい」
扉を開けて中に入る。中には沢山のテーブルと椅子。そしてそのテーブルで食事を食べている沢山の人がいた。どうやら宿と食堂を併設しているみたい。
「こっちよ」
リナさんに招かれ、奥の方にあった小さなカウンターへ向かう。
「部屋が無くて私とフィーナの部屋で寝ることになるけど、大丈夫?」
「大丈夫です!」
むしろそっちの方がいい!1人だけで部屋にいるなんて寂しいもん。
「そう。それじゃあ早速部屋に行きましょう」
「はーい」
部屋は二階にあるらしく、階段を上がっていく。
「ここよ」
着いたのは角部屋。中に入ると、1人用のベッドが3台並んでいた。その他には小さな丸テーブルと椅子、それとクローゼットがあるくらいの、シンプルな部屋だった。
「どのベッドがいい?」
「うーん…どれでもいいです」
「そうねぇ…それじゃくっつけちゃいましょうか」
「いいですね!あ、フィーナさんもそれでいいですか?」
危うく存在忘れるとこだったよ。
「…ん。それでいい」
「じゃあこのベットを真ん中にして…マリーナちゃん運べる?」
「大丈夫です!このベッドをそっちに動かせばいいですか?」
「ええ、そうよ」
引きずるのはどうかと思ったので、少し浮かして運ぶ。5歳児が持てるような重さじゃないんだけどねぇ…軽々持てるよ。
「マリーナちゃん?!重くない?」
「全然大丈夫です!ここでいいですか?」
「え、ええ(引きずるかと思ったんだけど…マリーナちゃんって一体…?)」
ええ、それは私も思ってます。あ、そう言えば教会に行かないといけないんだっけ?
『はい。ただ、それは明日でもいいと思います』
そうだね。もう暗いし。
「よし!じゃあ下に降りて食事をしましょうか」
「わーい」
わーい…ここも塩味だけなのかなぁ…
下に降りると、もうすでにギルさんとバケットさんは席に着いていた。
「おーい、こっちだ!」
呼ばれたので、ギルさんが座っているテーブルまで向かう。
「マリーナちゃん、これメニューね」
リナさんに渡されたメニューに目を通すと、昼間行ったお店とほぼ同じだった。違いがあるとすれば、スープがあることだろうか?あとパン。こっちのパンってどんな感じなのか気になるし、頼んでみよっと!
「じゃあスープとパンで」
「え?マリーナちゃん、パン食べるの?」
「食べたことないので、食べてみたいんです!」
「そ、そう。あんまり期待しないほうがいいわよ?」
リナさんがそういうけど、正直私もあまり期待していない。フワフワのパンは、それなりに食文化が発展していないと作れないものだと思うしね。
「じゃあ注文するか」
ギルさんが店員さんに注文してくれた。しばらくして料理が運ばれてきた。
「じゃあ食べるか」
「いただきます」
私は手を合わせてそう言った。
「そのいただきますって、なに?」
そう言えばこの世界にこの概念はないね。
「えっと…食べ物と作ってくれた人に感謝を込めて言う言葉です」
「へぇー…いい意味ね。じゃあ私もいただきます」
リナさんがやると、他の人もやってくれた。なんか嬉しい。
私はスプーンでスープを掬い、口に運ぶ。
「美味しい?」
「うーん…美味しいか美味しくないかで答えるなら、美味しいです」
塩味のスープで、具材はなにかのお肉と野菜。それが出汁を出してくれているから、まだ美味しい。けど、鶏ガラとかだったらもっと美味しくなると思う。
「そう(まぁ毎日ジリル草のスープを食べていたものね)」
そういうことじゃないんだけど…ま、いっか。パンは黒色で、おそらく俗に言う黒パンだと思う。ものすごく硬かった。
「か、硬い…」
「やっぱりね。貴族様とかが食べる白パンはもっと柔らかいと聞いたけどね」
なるほど…柔らかいパンはあるにはあるのか。でもこの硬いのもいいよね。スープに浸して柔らかくすればいいし。
そう思ってスープにパンを浸すと、みんなから驚かれた。あれ?
「どうしたんです?」
「いや、スープに黒パンを浸けるなんて初めてみたから…」
「そうなんですか?美味しいですよ?」
浸して柔らかくなったパンを口に運ぶ。うん。美味しい。スープが良ければもっとね。
「私も食べていい?」
「どうぞ」
リナさんも同じようにして口に運ぶと、目を見開いた。
「美味しいわ!まさか、こんな食べ方があるなんて…」
「俺もいいか?」
「いいですよ。というより食べちゃってください。もうお腹いっぱいで」
この世界ででてくる食事って、5歳児のお腹からしたらものすごく多いんだよね。
「ご馳走様でした」
「それもいただきますと同じようなもの?」
「はい。いただきますは食事の最初。ご馳走様でしたは食事の最後ですね」
「そうなの。面白いわね。ご馳走様でした」
食事は宿の料金に入っているらしいので、またギルさんに奢ってもらっちゃったよ。明日は私が奢りたいな。
部屋に戻り、体にクリーンをかける。
「マリーナちゃんのクリーンって、なんか違うわね」
「そうですか?」
「なんていうか…私たちより綺麗になってるような気がするのよ」
それは一理あるかも知れない。私がイメージしたのは、古くなった角質とかを除去するイメージだからね。
「まぁ、人それぞれよね。それじゃあ寝ましょうか」
「はーい」
「マリーナちゃんは真ん中ね」
決められちゃいました。まぁ私もそっちの方がいいけどね。
ベッドに潜り込むと、少し固い気がした。どうやら下がただの板になっているみたい。そりゃ痛いわ。でもそれほど気にもならないから、いっかな。
「明日はどうするの?」
「明日は市場に行って、食材とかみたいです…あ、あと教会も」
「教会?」
「はい。ちょっとお祈りでもしようかと」
「そう。分かったわ」
そう言って私の頭を撫でてくれた。すると、私は直ぐに眠りに落ちてしまった。
「今日のとこはここまでだな。宿にいくぞ」
「あれ?ギルさんたちはここに住んでるんじゃないんですか?」
「ああ。ここには長く滞在してるが、本当はいろんなとこを巡ってんだよ」
へー!それなら私もこの世界旅してみよかな?どうせ帰れないし。
「じゃあ行くぞ。マリーナの分は払ってやるよ」
「え?!そんなお構いなく!お金ももらいましたし」
「子供が遠慮すんじゃねぇよ。ほら、いくぞ」
そう言ってギルさんは歩き出してしまった。慌てて後をついて行く。
「ごめんね、マリーナちゃん。ギルはああ言うと聞かないのよ」
「大丈夫です。むしろありがとうございます!」
日本人として、泊まらせてもらうことは遠慮したいとこだけど、せっかくの好意を無駄にする訳にもいかないしね。
歩き続けていると、突然ギルさんが立ち止まった。
「ここだ。入るぞ」
そう言って入っていったのは、入口に[宿り木亭]という看板が掲げられたこじんまりとした二階建ての建物だった。
「さぁ、入りましょ?」
「はーい」
扉を開けて中に入る。中には沢山のテーブルと椅子。そしてそのテーブルで食事を食べている沢山の人がいた。どうやら宿と食堂を併設しているみたい。
「こっちよ」
リナさんに招かれ、奥の方にあった小さなカウンターへ向かう。
「部屋が無くて私とフィーナの部屋で寝ることになるけど、大丈夫?」
「大丈夫です!」
むしろそっちの方がいい!1人だけで部屋にいるなんて寂しいもん。
「そう。それじゃあ早速部屋に行きましょう」
「はーい」
部屋は二階にあるらしく、階段を上がっていく。
「ここよ」
着いたのは角部屋。中に入ると、1人用のベッドが3台並んでいた。その他には小さな丸テーブルと椅子、それとクローゼットがあるくらいの、シンプルな部屋だった。
「どのベッドがいい?」
「うーん…どれでもいいです」
「そうねぇ…それじゃくっつけちゃいましょうか」
「いいですね!あ、フィーナさんもそれでいいですか?」
危うく存在忘れるとこだったよ。
「…ん。それでいい」
「じゃあこのベットを真ん中にして…マリーナちゃん運べる?」
「大丈夫です!このベッドをそっちに動かせばいいですか?」
「ええ、そうよ」
引きずるのはどうかと思ったので、少し浮かして運ぶ。5歳児が持てるような重さじゃないんだけどねぇ…軽々持てるよ。
「マリーナちゃん?!重くない?」
「全然大丈夫です!ここでいいですか?」
「え、ええ(引きずるかと思ったんだけど…マリーナちゃんって一体…?)」
ええ、それは私も思ってます。あ、そう言えば教会に行かないといけないんだっけ?
『はい。ただ、それは明日でもいいと思います』
そうだね。もう暗いし。
「よし!じゃあ下に降りて食事をしましょうか」
「わーい」
わーい…ここも塩味だけなのかなぁ…
下に降りると、もうすでにギルさんとバケットさんは席に着いていた。
「おーい、こっちだ!」
呼ばれたので、ギルさんが座っているテーブルまで向かう。
「マリーナちゃん、これメニューね」
リナさんに渡されたメニューに目を通すと、昼間行ったお店とほぼ同じだった。違いがあるとすれば、スープがあることだろうか?あとパン。こっちのパンってどんな感じなのか気になるし、頼んでみよっと!
「じゃあスープとパンで」
「え?マリーナちゃん、パン食べるの?」
「食べたことないので、食べてみたいんです!」
「そ、そう。あんまり期待しないほうがいいわよ?」
リナさんがそういうけど、正直私もあまり期待していない。フワフワのパンは、それなりに食文化が発展していないと作れないものだと思うしね。
「じゃあ注文するか」
ギルさんが店員さんに注文してくれた。しばらくして料理が運ばれてきた。
「じゃあ食べるか」
「いただきます」
私は手を合わせてそう言った。
「そのいただきますって、なに?」
そう言えばこの世界にこの概念はないね。
「えっと…食べ物と作ってくれた人に感謝を込めて言う言葉です」
「へぇー…いい意味ね。じゃあ私もいただきます」
リナさんがやると、他の人もやってくれた。なんか嬉しい。
私はスプーンでスープを掬い、口に運ぶ。
「美味しい?」
「うーん…美味しいか美味しくないかで答えるなら、美味しいです」
塩味のスープで、具材はなにかのお肉と野菜。それが出汁を出してくれているから、まだ美味しい。けど、鶏ガラとかだったらもっと美味しくなると思う。
「そう(まぁ毎日ジリル草のスープを食べていたものね)」
そういうことじゃないんだけど…ま、いっか。パンは黒色で、おそらく俗に言う黒パンだと思う。ものすごく硬かった。
「か、硬い…」
「やっぱりね。貴族様とかが食べる白パンはもっと柔らかいと聞いたけどね」
なるほど…柔らかいパンはあるにはあるのか。でもこの硬いのもいいよね。スープに浸して柔らかくすればいいし。
そう思ってスープにパンを浸すと、みんなから驚かれた。あれ?
「どうしたんです?」
「いや、スープに黒パンを浸けるなんて初めてみたから…」
「そうなんですか?美味しいですよ?」
浸して柔らかくなったパンを口に運ぶ。うん。美味しい。スープが良ければもっとね。
「私も食べていい?」
「どうぞ」
リナさんも同じようにして口に運ぶと、目を見開いた。
「美味しいわ!まさか、こんな食べ方があるなんて…」
「俺もいいか?」
「いいですよ。というより食べちゃってください。もうお腹いっぱいで」
この世界ででてくる食事って、5歳児のお腹からしたらものすごく多いんだよね。
「ご馳走様でした」
「それもいただきますと同じようなもの?」
「はい。いただきますは食事の最初。ご馳走様でしたは食事の最後ですね」
「そうなの。面白いわね。ご馳走様でした」
食事は宿の料金に入っているらしいので、またギルさんに奢ってもらっちゃったよ。明日は私が奢りたいな。
部屋に戻り、体にクリーンをかける。
「マリーナちゃんのクリーンって、なんか違うわね」
「そうですか?」
「なんていうか…私たちより綺麗になってるような気がするのよ」
それは一理あるかも知れない。私がイメージしたのは、古くなった角質とかを除去するイメージだからね。
「まぁ、人それぞれよね。それじゃあ寝ましょうか」
「はーい」
「マリーナちゃんは真ん中ね」
決められちゃいました。まぁ私もそっちの方がいいけどね。
ベッドに潜り込むと、少し固い気がした。どうやら下がただの板になっているみたい。そりゃ痛いわ。でもそれほど気にもならないから、いっかな。
「明日はどうするの?」
「明日は市場に行って、食材とかみたいです…あ、あと教会も」
「教会?」
「はい。ちょっとお祈りでもしようかと」
「そう。分かったわ」
そう言って私の頭を撫でてくれた。すると、私は直ぐに眠りに落ちてしまった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
409
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる