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第2章

ランク

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 訓練場から出て、また受付に戻ってきた。

「じゃあ今からギルドカード作っちゃうから、待っててね」

「はーい」

 作るって言ったけど、魔法の適性とか見てないし、模擬戦もしてないけど、大丈夫なのかな?

「はい、出来たわよ」

「はや?!」

「ふふふっ。ここのギルドにはこれがあるからね」

 そう言って指さしたのは、四角い箱みたいなの。

「これに必要な情報を書いた紙をいれると、すぐに作ってくれるのよ」

 コピー機みたいな感じかな?

「じゃあこれがマリーナちゃんのギルドカードよ。無くさないようにね」

「はい!でも、もし無くしたらどうするんですか?」

「その時は再発行できるわ。ただし、金貨1枚かかるけどね」

 ふむふむ。要するに罰金みたいな感じかな。貰ったギルドカードは、免許証くらいのサイズ。だけど何も書かれていない。

「自分の魔力を流すと、文字が出てくるわ」

 そう言うので、魔力を流してみる。するとギルドカードが一瞬光り、文字が表れた。そこには名前、魔法適性、クラス…そして、Cランクと書かれていた。どれくらいなんだろ?

『Cランクは、上から4番目にあたります』

 え、高くない?!

『ランクは高い方から順に、S.A.B.C.D.E.Fまであります。なのでCは丁度真ん中のランクです』

 それは…どうなの?

「うん、大丈夫そうね。ランクに関しては、一気にそこまでしか上げることができないの。ごめんなさいね」

「え?!とんでもないです!むしろ高すぎるくらいです!」

「そう?マリーナちゃんの魔法を見る限り、BどころかAはありそうなんだけど…」

「そんなにないですよ」

『Sオーバーくらいですね』
  
 それもないわ!!

「うーん…まぁマリーナちゃんがそういうのなら、そういうことにしとくわ」

 しとくって…もう、訂正するのもめんどくさくなってきた…それでいっか。

「あ、ギルさんたちは?」

「ギルたちなら今ギルマスと話してるはずよ。それまでそこのソファで待つ?」

「はい、そうします」

 ギルさんたち、早くこないかなぁ~。

 ーーーーーーー

 俺たちはマリーナと別れ、ギルマスの部屋に向かっている。

「ねぇ?あれ、どう思った?」

「あれってなんだ?」

「マリーナちゃんの親のことよ。マリーナちゃん、目が覚めたら森にいたって言ってたでしょ?」

 そういえばそんなことも言ってたな。

「それがどうしたんだ?」

「もう!気づかないの?マリーナちゃんが、実はもう…って言ったのよ?つまり、親が亡くなっていることを知っているってことでしょ?」

「いや、マリーナはそれだけしか言ってないぞ?親が亡くなったとかは一言も言ってないじゃないか」

「あれ?そういえば…」

 そう、マリーナは一言も親が亡くなっているとは言っていない。数日過ごして分かったが、マリーナは5歳とは思えないほど頭がいい。知らないと答えるより、思わせぶりな言動をすることで紛らわしたんだろうな。

「その話は後にするぞ。今は報告だ」

 そう言って俺は、ギルマスのいる部屋のドアを開けた。

「おお、ギル!よく帰ってきたな!」

 出迎えたのはいつもみる、髭もじゃのじじぃだ。今はヨボヨボに見えるが、かつてSランクに上り詰めたこともある、凄腕の冒険者だ。

「して、報告とな?」

「ああ、とりあえず座っていいか?」

「おお、そうじゃった!ほれ、座れ座れ。今茶を出す」

 このギルマスとはよく酒を飲む仲だ。だからいつもこんな感じだ。

「報告となると…深淵の森に関してかの?」

「ああ、そうだ。俺たちの受けた依頼は、フォレストラビットだったろ?」

「そうじゃったの。それがどうかしたのか?」

「それがなぁ…全然出会わなかったんだよ」

「出会わなかったじゃと?そこまでレアな魔物ではあるまい?」

 深淵の森には、数多くの魔物が生息している。フォレストラビットのその内の一体だ。だから、深淵の森に入ったら、必ずと言っていいほど遭遇する。それなのに、遭遇することが出来なかったんだ。

「ああ。代わりにバレットラビットに遭遇した」

「バレットラビットじゃと!?一体どこまで行ったんじゃ?」

「そこまで深いところじゃない。本来バレットラビットは生息していなかったとこだ」

「なんじゃと?!」

 驚くのも無理はない。バレットラビットが生息するのは、深淵の森の最奥。最も魔素が濃く、強力な魔物がいる場所だ。そこに入るには、それこそSランクの実力が必要と言われるほどに。

「もしそれが本当なら…大変なことになるぞい…」

 本来弱い魔物が生息しているところに強い魔物が出てくると、無論弱い者は蹂躙される。そして、弱い魔物を求めてきた冒険者もだ。

「できる限り早く、情報を集めたほうが良いと思うぜ」

「ああ…分かった。じゃあ報告感謝する」

「またな」

 そう言って俺たちは、ギルマスの部屋を後にした。

 ーーーーーーー

 ソファでボケェ~ってしてると、ギルさんたちが受付のカウンターから出てきた。

「おかえりなさい!」

 私は満面の笑みで迎えた。

「おう、待ったか?」

「あんまり待ってないよ!」

「そうか。で、どうだった?」

 どうだった…模擬戦のことかな?

「模擬戦はしなかったよ」

「は?!ちょ、それどういうことだ?!」

 いや、そんなに詰め寄られても困るんだけど!?

「ギル、顔怖いわよ。マリーナちゃん、どういうこと?」

「なんか魔法適性を見るって言われて、水魔法使ったら、もういいって言われた」

「それ本当?」

「うん」

 そう言って頷くと、リナさんはカリナさんがいる受付に行ってしまった。なんかまずいこと言ったかな?

「その顔、なにも理解してないね~」

 バケットさんがそう言うけど…なんのことかさっぱりわかんない。

「どういうことなんです?」

「実はね、登録の時の模擬戦とかは、絶対にしないといけないって、決まりがギルドにはあるんだよ」

 え、まじですか?それならカリナさん職務怠慢みたいな感じになってるってこと?

「やっと分かったみたいだね~」

「そんなこと知りませんでした…あ!カリナさんは大丈夫なんでしょうか?」

「こんな時でも相手のことを考えるなんてお人好しだねぇ~。まぁ大丈夫だと思うよ。ほら」

 バケットさんが指さした先には、呆れた顔のリーナさんと苦笑するカリナさんがいた。あれ?あ、帰ってきた。

「マリーナちゃん…的を壊したみたいね?」

「うん、なんか壊れちゃって」

「はぁ…なら、カリナの模擬戦をしないっていうのは正しい選択だったかしらね」

「え?どういうことですか?」

「あの的はね?本来魔法の魔力を吸収する仕掛けがあるの。だから、魔法で壊れることはない…はずなのよ」

 ま、まじですか?!

「…やっちゃいましたか?」

「まぁそれだけで、マリーナちゃんが凄いってことが分かったのよ。だから模擬戦をしなかったのね」

 それは…なんかやだな。そんなに注目されたくないのに…

「今回のカリナの対応は理解できるわ(下手したらカリナが…)。だから、マリーナちゃんはなにも心配しなくていいからね?」

「…なんか私のせいでごめんなさい」

「マリーナちゃんのせいじゃないわ」

 そう言われてもなんか責任感じるなぁ…

「てことは、マリーナはDランクくらいか?」

「いえ、Cランクです」

「Cランクだと?!そんなことあるのか?」

 疑われたので、ギルドカードを出した。それを見てようやく納得したみたい。

「ほんとにCランクなんだな…」

「まぁ良かったじゃない!じゃあお祝いで食べに行きましょ!」

 ということで食事を食べに、ギルドを後にした。










 …その後ギルマスが組織した調査隊は、深淵の森で何も異常を見つけることができなかったらしい。元凶だった存在が森を去っていたので、生態系が戻っていたのだ。しかし、そのことに気づいた者は誰一人いなかった…本人を含めて。


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フィーナが全然でてきませんが、口数が少ないという設定です。本文に書くのを忘れてました...。
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