魔王様、仕事して下さい!

家具屋ふふみに

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 マリと食事を食べて寝ると、久しぶりに夢を見た。
 ……それは、昔の夢。楽し、かつての記憶。

「……こんな夢を今更見るなんてね」

 もう忘れたと思っていた記憶だ。
 ……いや、思い出すのが嫌で、忘れようとした記憶だ。

「……はぁ」

 わたしに、この夢を見るというのに……そう、理解しているはずなのに……もっと、見ていたい。そう思ってしまった。

「……、なのにね」

 これはわたしが一生、背負っていく罪だ。たった1人で。
 ……だから、誰かと深く関わることを拒むようになったのかな。巻き込みたくない……いや、弱みを見せたくなくて。
 だけれど……表に。そう、魔王として出てきた時から、何かがわたしの中で変わっていくのを感じる。

 喜ぶことなんて。

 怒ることなんて。

 哀しむことなんて。

 楽しむことなんて。

 すべて、捨てた。忘れていた、はずなのに……どうだろう。今のわたしは。

「……いいこと、なのかな」

 感情を出せるようになったこと。それはいい事なのだろう。
 ……けれど、それはを忘れてしまうような気がして。
 
「……とはいえ、この生活を今更手放す気には、なれないんだよね」

 思わず苦笑を零す。
 最初こそ……いや今でもか。魔王になるのが嫌で…でもこの仕事にやりがいみたいなものを感じてるのも事実で……もし、魔王になっていなかったら自分がどうなっていたか。もう想像すらできない。
 
「……変わった、といえるのかな……昔のわたしからは、想像できない状況だものね」

 こうして考える時間すら、忘れていたのだから。
 しかし、今こうして昔を思い、今を思い、笑い、怒り、哀しみ、楽しんでいる。
 

「……は、まだ、重いけれど」

 は、まだある。けれど、その数は…少し、少なくなった。そんな気がするんだ。




 
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