魔王様、仕事して下さい!

家具屋ふふみに

文字の大きさ
上 下
17 / 55

脱出

しおりを挟む
 誘拐され、捕まっていた子たちの種族は本当にバラバラだった。
 さっきのエルフの少年に、獣人。鳥人。樹族etc……ちなみに人間は全てを魔族と呼んでいる。
 ……それぞれの種族からこの国総攻撃されても文句言えないレベルだぞ、これ。

「僕たちを、どうするつもり…?」
「いやどうするも何も。助けに来たんだって」
「……ほんと?」
「ホントだよ」

 不安そうな表情を浮かべる獣人の女の子を撫でる。おぉ、この耳もふもふだ。

「あ、あんまり触らないで…くすぐったい」
「あ、ごめんねつい」

 もうちょっともふもふしたかったけど、嫌がられることはしたくないからね。諦めよう。

「さてと。1番問題なのは…あなただね」
「俺?」

 わたしが指を指したのは、エルフの少年。だってねぇ…エルフって、戦争の影響で人間嫌いだから。こんなことされたってなったら、絶対戦争になる。それは避けないといけない。

「名前、教えてくれる?」
「……ウィルフレッド。ウィルフレッド・リンフォード」
「そっかぁ……って、えぇ?!まじで?!リンフォード?!」
「お、おう」

 はぁぁぁ……ほんとこの国終わるぞ。

「……ちょっと連絡するから待ってて」
「…え?あ、あぁ」

 子供たちから離れて魔導石版タブレットを取りだし、目的の人物に連絡を取る。

『…なんだ。悪いが今は時間ないんだ』

 不機嫌を隠そうともしない声が聞こえる。うわぁ…やっぱりだぁ…。

「それって子供探すため?」
『…なんで…いや、お前なら有り得るか』

 その評価どっからくるんだろうか……まぁいいか。とりあえず確認しよう。

「ウィルフレッドって名前?」
『ああ』

 ビンゴ。

「その子を探してるんだよね」
『そうだ。だから今は…』
「見つけたよ」
『…は?』
「いやね。ちょっとした用事こなしてたらさ。見つけた」
『…そのちょっとした用事が気になるんだが』
「こまけぇこたぁいいんだよ」
『お、おう』

 反応そっくり。

「……じゃあそっちはどこにいるの?」
『今は里だ。今から捜索に向かうところだった。ジジィ共を説得すんのに時間かかってな…』

 確かに年寄りのエルフは郷から出るのは否定的だからねぇ。

「じゃあ直接送るよ」
『ああ、頼む。後でどう説明しようか…』
「……説明が面倒なら、わたしの名前、出してもいいよ」
『……いいのか?あれだけ自分の名前出すの嫌がってたくせに』
の為だもの」
『……分かった。感謝する』

 そこで通信が切れた。やれやれ……

「じゃああなただけ先に送るね。連絡ついたから」
「連絡ついたって…」
「あ、それと、誘拐されたってことは言わないこと」
「は?なんでだ?」
「…下手したら戦争になる」
「…っ!」

 この言葉を信じるってことは、かつて何があったを知ってるんだね…。

「だからそうだなぁ……遊んでたってことにでもしといて」
「…それ俺思いっきり叱られねぇ?」
「それは…頑張れ。まぁ、あなたの父親が上手くやるさ」
「親父と知り合い…?」
「まぁ、後で聞くといいさ。じゃあね」
「あ、おい!」

 少年の……ウィルフレッドの姿が掻き消える。これでやっと1人か……頑張ろ。



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

英雄様をお招きしたら、魔王様が増えちゃいました。

きゅりおす
ファンタジー
英雄が眠る伝説の祠から現れたのは魔王たち!?! 魔王が支配する世界を変える為、救いを求め召喚士は英雄が眠るとされる伝説の祠に訪れる。しかし召喚の儀によって現れたのは魔王たちだった。 魔王が増えちゃった状態で召喚士は、無事にこの世界の魔王から世界を救えるのか!!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...