ドラゴンさんの現代転生

家具屋ふふみに

文字の大きさ
上 下
100 / 128

100話

しおりを挟む
 瑠華が魔銃の調整をしている間に、奏が話を率先して進めていく。

「サナさんはどんなコラボ企画を考えているんですか?」

「そこまでバッチリ決めている訳ではないけれど…どうせなら少し遠い、あまり人気の無い所に行きたいとは思うわね」

「人気が無い、ですか?」

 その言葉に奏は疑問を持つ。配信者とは見てくれる人が居るからこそ成り立っている。だからこそ、人の目を集める話題作りは必須だ。それなのにわざわざ人気の無い場所に行くとは、どういうつもりなのだろうか。

「私達は配信者である以前に探索者。それはダンジョンを調査し、時に管理もする義務があるという事よ」

「勿論知ってます。試験にも出ましたし」

 サナの言葉に頷く。まだ試験を終えてからそう時間も経っていないので、探索者に関する権利や責任、義務についてはちゃんと覚えていた。

「そして探索者の中でも配信を行っている人には、特別な仕事がダンジョン協会から斡旋される事があるの」

「特別な仕事…」

「それが所謂広報活動……まぁ言ってしまえば、人気の無いダンジョンを何とかして盛り上げて欲しいって依頼よ」

 ダンジョンは放置した場合、地上にモンスターが溢れ出すダンジョンブレイクを引き起こす可能性がある。それをたった数人の探索者で防止するのは不可能だ。
 そこでダンジョン協会が考えたのが、ダンジョン配信者を活用した広報を行う事だった。

「どうかしら? ただ配信を続けるだけじゃなくて、こういう事も経験しておいて損は無いと思うの」

「そう、ですね…それは何か指示があったりするんじゃなくて、ただ攻略している姿を配信するだけでいいんですよね?」

「ええそうよ。それで何か起きても通常通り自己責任ではあるけれど、完了すれば特別手当が支給されるわ」

「……凪沙はどう?」

「私は瑠華お姉ちゃんと一緒だったら別に何でもいい」

「まぁそうだよね…分かりました! じゃあその方針でいきましょう」

「ありがとう。勿論先輩としてちゃんとサポートはするから安心してね」

 そうしてコラボ企画の話が進んだところで、瑠華の作業が終わった。

「ほれ。これで以前通りになっておるはずじゃ」

「わざわざごめんなさいね。ありがとう。お礼…って言っても金銭は色々と問題がありそうだったから、菓子折りを持って来てるんだけど…」

「気遣い感謝する。最近は寄付金も多くなっておる故、そうして貰えると有難いのじゃ」

 瑠華が申し訳なさそうに眉を下げながら、サナが手渡してきた菓子折りを受け取る。
 配信を始めた影響で、【柊】に対する寄付金は実際かなり増えていた。これ以上増えると提出書類が何かと面倒になるので、本当に有難い対応だった。

「お菓子!」

「後で皆で食べようかの」

「ん。楽しみ」

「……多めのやつ買っといて正解だったわね」

 人知れずサナが安堵の息を吐き、胸を撫で下ろす。知人の勧めに従って正解であったと。

「ところで瑠華ちゃん。瑠華ちゃんなら壊れない魔銃も作れたんじゃないの?」

「それをしてしまうと流石にやり過ぎじゃからというのはあるが…壊れぬ物というのは何かと火種になりやすいからの。迂闊に作るべきでは無いのじゃよ」

「あー、成程ねぇ……」

「……え待って。サラッと流してるけど、壊れない物作れるの?」

「意外と簡単じゃな。それこそ奏でも、あと少し文字を学べば作れるぞ」

「あ、魔法文字使うんだね。そろそろ瑠華ちゃんに教えてもらったやつも終わりそうだし、次はそれ?」

「そうじゃな…順調に進めばそうなるかのぅ」

「……うん、いいやもう。これ諦めた方が楽だわ」

 置いてきぼりを食らったサナは、何処か遠い目をして呟いた。今なら瑠華達の視聴者の気持ちも理解出来るなと。

「…瑠華お姉ちゃん。私も勉強したい」

 サナが少し放心状態になっている間に、置いてきぼりを食らったもう一人である凪沙がクイクイと瑠華の袖を引いてそう訴える。

「ん? …奏に渡したものを使うと良いじゃろう。それに勉強に関して聞くのであれば、妾よりも奏の方が適任じゃ」

 元から全て知っている瑠華と、自ら知識を吸収した奏では、後者の方が勉強を教える事に向いているだろう。
 凪沙としては瑠華から教えて貰いたかったが、それ以上の我儘は駄目だと自制する。そんな事を続けていては、いつまで経っても自分は“妹”でしかなくなってしまうのだから。

「それで何処のダンジョンに向かうつもりなのじゃ?」

「……あっ、えっと…群馬の方にあるダンジョンね。山間部に位置しているから、そもそものアクセスが悪くて人気が無いそうなの」

「……山間部」

「ええ。それがどうかした?」

「……いや、なんでも無い。少し気になっただけじゃ」

(まさか妾が以前行ったダンジョンではあるまい。そんな偶然は無い…はずじゃ)

 思い出すのは、瑠華が気分転換で向かい、紫乃を助け出したダンジョン。あれも確か山間部に位置していたように思う。だが同じ様な地形に存在するダンジョンも数多い為、流石に同一の物では無いだろう。

「……そういえば前に瑠華ちゃん、夜中に気晴らしでダンジョン出掛けてたね?」

「よく覚えておるのぅ…」

「まぁ色々あったし…もしかしてそこ?」

「分からぬ。妾も適当に向かったからのぅ」

 本当に適当に飛んで向かった場所なので、詳しい地名など分かる訳もない。

「適当にダンジョン向かったって…それでも入るには予約いるでしょう?」

「………」

「あー…うん。出来るもんね、瑠華ちゃんならバレずに入るの」

「それ普通に罰則の対象なんだけど…」

「……すまぬ。黙っておいてはくれんか」

 瑠華にしては珍しい萎れた姿に、挟む二人は楽しげに目を輝かせる。対照的にサナは心底困惑した様子で頭を抱えた。

「……証拠は残ってないのね?」

「のはずじゃ。目撃されても意識には残っておらんしの」

 そしてその当時は画面越しにも効力を発揮する程に強化した状態だったので、例え映像が残っても誰にも気付かれないだろう。

「それならまぁ誤魔化しようはあるか…他には誰にも言ってないのよね?」

「言っておらん。配信でもな」

「そう。…はぁ…普段頼りにされる存在が問題起こしてどうするのよ……」

 その言葉に、瑠華はぐうの音も出なかった。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...