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85話
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夕食パートは割愛。因みにボウリングは最後の最後でスペアを取れたそうですよ。ヨカッタネー。
―――――――――――――――――――
茜に一日中付き添って遊んだ次の日。流石にそろそろ配信をした方が良いだろうということで、凪沙を含めた三人はダンジョンへと赴いていた。
「これが凪沙の初めての出演になるのかな?」
「写った事はある。でも顔を出すのは初めて」
【柊】の面々は配信で一度写った事があるものの、カメラの機能によって全てモザイク処理をされていた。故に凪沙の顔出しは今回が初めてである。
「じゃ、配信始めるよー」
手馴れた様子でカメラを起動し、配信サイトとのリンクを確認する。
そして無事にスマホで配信が開始されているのを確認し、カメラのレンズへと目線を戻した。
「久しぶり! 『柊ちゃんねる』の奏だよー!」
:きちゃ!
:マジでお久では。
:それな。てか人増えてる?
目敏く画面端に写りこんだ凪沙を見付けた視聴者のコメントを確認し、奏が凪沙を手招きする。
「気付いた人もいるね。今回から一緒にダンジョンに潜る事になった凪沙だよー」
「ん。よろしく」
:クール系美少女きちゃ!
:瑠華ちゃんとは違った方面のクール系。
:以前ちらっとお菓子作り配信で出て来た子?
「そだよー。元々探索者に興味があったみたいで、夏休みだしやってみたいって」
「かな姉ばかり狡いから」
:おっとぉ?
:これは…あれですな?
「…自己紹介はこれくらいにして、そろそろ本題に入らんか」
「あっ、そうだね」
:瑠華ちゃんもお久!
:瑠華ちゃん目立つ容姿してるのに、目撃情報全く無かったから……
「む。それに関しては最近【柊】の子らと共に出掛ける事が多かったからじゃの。流石に邪魔されたくは無かったのでな。〖認識阻害〗を強めにしておったのじゃよ」
:なる。
:聞けば聞くほどチートだよなそのスキル……
:〖認識阻害〗って何ですか?
:おや初見か。
:本当にその言葉通りの固有スキルだよ。人の無意識に無理矢理入り込むから、認識されてるけど認知されないみたいな状態に出来る……で合ってる?
「大方それで合っておるぞ」
視聴者がかなり正確にスキルの概要を把握している事に内心驚きつつも、それをおくびにも出さずに肯定だけしておく。
「初見さんも増えたのかな?」
:初見です。
:初見!
:サナちから来ました。
夏休みという事もあって、同接数は以前配信した時よりも増えている。それに伴い初見である人も増加した様だ。更にその中には瑠華達が助け出した配信者であるサナから来たという人もいた。
「サナさんから来たって人もいるんだね」
「有難いことじゃな」
そんな目的で助けた訳では無いが、それで名前が少なからず売れたというのは素直に嬉しい事だった。
:今回は何処のダンジョンなの?
:渋谷ダンジョンじゃないっぽい。
「あ、そうだよ。凪沙は初心者だから、流石にね……。とはいえ東京第三ダンジョンは変わり映えしないから、今回は別のFランクダンジョンに来てるよ」
「その名も平原ダンジョン……なんでこんな名前なの?」
:それな。
:安直過ぎんかwww
:これは制度が悪かったんじゃ……
そもそもダンジョンの名前を付けるのは一体誰なのか。それはそのダンジョンの第一発見者である。
これはダンジョン協会で定められた制度なのだが……そのせいか、ダンジョンの名前には時たまおかしいものがあったりする。
例に出すとその人の趣味や好み全開の名前であったり、或いは今回の様にダンジョンの特徴から付けられたり、地名や発見された順番からだったりと、正しく多種多様である。
「ふざけた名前とかあるの……?」
:あるぞ。
:これが意外と多いの笑うんだwww
:【自分家】とかあったな……
「……ほんとの自宅?」
:それは無いwww
:名付けた本人曰く、『実家みたいな安心感のあるダンジョンだから』とか言ってたな。
:実家みたいなダンジョンとは?
「……瑠華ちゃん分かる?」
「何故妾に聞くのじゃ……安心感を得るダンジョンというのは、少なからず存在してはいるそうじゃよ。それには敵が出ない、もしくは出ても少数か敵性を持たない、といった特徴が当てはまるのう」
「……駄目元で聞いたらばっちり答え返ってきて困惑」
:草。
:なんかデジャブだなこれwww
雑談はこれくらいにして、いよいよダンジョンへと足を踏み入れる。その先は東京第三ダンジョンのように洞窟が広がっている訳では無く、その名の通り見通しの良い平原が広がっていた。
「相変わらず不思議空間…」
「前の瑠華お姉ちゃん達の配信でも、似たような感じだったよね」
「だねー。まぁここはあそこ程敵も強くないから安心してね」
:奏ちゃんが意外としっかりお姉ちゃんしてる…
「どういう意味かなそれ!?」
チラリと見えたコメントに奏が噛み付いている間に、凪沙が瑠華の元へと駆け寄る。
「瑠華お姉ちゃん。私の役目は?」
「基本は遠距離支援という形を取ってもらう事にはなるが…まぁ今回も前回と同様に敵の脅威度は低いでな。案ずる事は無い」
「ん…」
その言葉を聞いて少し肩の力を抜きつつ、自らの得物である弓の弦を引いて調子を確かめる。
「アレはまだ掴めそうにないかの?」
「うん…流れはするんだけど、形にならなくて」
その会話の内容は、以前瑠華が凪沙に獲得するよう頼んだスキルについてだ。初めてダンジョンに向かってからというもの、【柊】の庭でも練習を重ねていた。しかし、数日で獲得出来るほど甘くもなかった。
「一先ずは現状のスキルを伸ばす方針が良かろうな。[速射]も十分強力なスキルじゃからの」
「ん。頑張る」
「…なんか私除け者にされてるし……」
:草。
:これは草。
:奏ちゃんってやっぱり不憫枠というか…
:意外といじられキャラな気がする。
:瑠華ちゃんが手玉に取るのが上手すぎるというのもある。
:間違いなくそれだわ……
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茜に一日中付き添って遊んだ次の日。流石にそろそろ配信をした方が良いだろうということで、凪沙を含めた三人はダンジョンへと赴いていた。
「これが凪沙の初めての出演になるのかな?」
「写った事はある。でも顔を出すのは初めて」
【柊】の面々は配信で一度写った事があるものの、カメラの機能によって全てモザイク処理をされていた。故に凪沙の顔出しは今回が初めてである。
「じゃ、配信始めるよー」
手馴れた様子でカメラを起動し、配信サイトとのリンクを確認する。
そして無事にスマホで配信が開始されているのを確認し、カメラのレンズへと目線を戻した。
「久しぶり! 『柊ちゃんねる』の奏だよー!」
:きちゃ!
:マジでお久では。
:それな。てか人増えてる?
目敏く画面端に写りこんだ凪沙を見付けた視聴者のコメントを確認し、奏が凪沙を手招きする。
「気付いた人もいるね。今回から一緒にダンジョンに潜る事になった凪沙だよー」
「ん。よろしく」
:クール系美少女きちゃ!
:瑠華ちゃんとは違った方面のクール系。
:以前ちらっとお菓子作り配信で出て来た子?
「そだよー。元々探索者に興味があったみたいで、夏休みだしやってみたいって」
「かな姉ばかり狡いから」
:おっとぉ?
:これは…あれですな?
「…自己紹介はこれくらいにして、そろそろ本題に入らんか」
「あっ、そうだね」
:瑠華ちゃんもお久!
:瑠華ちゃん目立つ容姿してるのに、目撃情報全く無かったから……
「む。それに関しては最近【柊】の子らと共に出掛ける事が多かったからじゃの。流石に邪魔されたくは無かったのでな。〖認識阻害〗を強めにしておったのじゃよ」
:なる。
:聞けば聞くほどチートだよなそのスキル……
:〖認識阻害〗って何ですか?
:おや初見か。
:本当にその言葉通りの固有スキルだよ。人の無意識に無理矢理入り込むから、認識されてるけど認知されないみたいな状態に出来る……で合ってる?
「大方それで合っておるぞ」
視聴者がかなり正確にスキルの概要を把握している事に内心驚きつつも、それをおくびにも出さずに肯定だけしておく。
「初見さんも増えたのかな?」
:初見です。
:初見!
:サナちから来ました。
夏休みという事もあって、同接数は以前配信した時よりも増えている。それに伴い初見である人も増加した様だ。更にその中には瑠華達が助け出した配信者であるサナから来たという人もいた。
「サナさんから来たって人もいるんだね」
「有難いことじゃな」
そんな目的で助けた訳では無いが、それで名前が少なからず売れたというのは素直に嬉しい事だった。
:今回は何処のダンジョンなの?
:渋谷ダンジョンじゃないっぽい。
「あ、そうだよ。凪沙は初心者だから、流石にね……。とはいえ東京第三ダンジョンは変わり映えしないから、今回は別のFランクダンジョンに来てるよ」
「その名も平原ダンジョン……なんでこんな名前なの?」
:それな。
:安直過ぎんかwww
:これは制度が悪かったんじゃ……
そもそもダンジョンの名前を付けるのは一体誰なのか。それはそのダンジョンの第一発見者である。
これはダンジョン協会で定められた制度なのだが……そのせいか、ダンジョンの名前には時たまおかしいものがあったりする。
例に出すとその人の趣味や好み全開の名前であったり、或いは今回の様にダンジョンの特徴から付けられたり、地名や発見された順番からだったりと、正しく多種多様である。
「ふざけた名前とかあるの……?」
:あるぞ。
:これが意外と多いの笑うんだwww
:【自分家】とかあったな……
「……ほんとの自宅?」
:それは無いwww
:名付けた本人曰く、『実家みたいな安心感のあるダンジョンだから』とか言ってたな。
:実家みたいなダンジョンとは?
「……瑠華ちゃん分かる?」
「何故妾に聞くのじゃ……安心感を得るダンジョンというのは、少なからず存在してはいるそうじゃよ。それには敵が出ない、もしくは出ても少数か敵性を持たない、といった特徴が当てはまるのう」
「……駄目元で聞いたらばっちり答え返ってきて困惑」
:草。
:なんかデジャブだなこれwww
雑談はこれくらいにして、いよいよダンジョンへと足を踏み入れる。その先は東京第三ダンジョンのように洞窟が広がっている訳では無く、その名の通り見通しの良い平原が広がっていた。
「相変わらず不思議空間…」
「前の瑠華お姉ちゃん達の配信でも、似たような感じだったよね」
「だねー。まぁここはあそこ程敵も強くないから安心してね」
:奏ちゃんが意外としっかりお姉ちゃんしてる…
「どういう意味かなそれ!?」
チラリと見えたコメントに奏が噛み付いている間に、凪沙が瑠華の元へと駆け寄る。
「瑠華お姉ちゃん。私の役目は?」
「基本は遠距離支援という形を取ってもらう事にはなるが…まぁ今回も前回と同様に敵の脅威度は低いでな。案ずる事は無い」
「ん…」
その言葉を聞いて少し肩の力を抜きつつ、自らの得物である弓の弦を引いて調子を確かめる。
「アレはまだ掴めそうにないかの?」
「うん…流れはするんだけど、形にならなくて」
その会話の内容は、以前瑠華が凪沙に獲得するよう頼んだスキルについてだ。初めてダンジョンに向かってからというもの、【柊】の庭でも練習を重ねていた。しかし、数日で獲得出来るほど甘くもなかった。
「一先ずは現状のスキルを伸ばす方針が良かろうな。[速射]も十分強力なスキルじゃからの」
「ん。頑張る」
「…なんか私除け者にされてるし……」
:草。
:これは草。
:奏ちゃんってやっぱり不憫枠というか…
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:瑠華ちゃんが手玉に取るのが上手すぎるというのもある。
:間違いなくそれだわ……
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