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49話
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進む事数分。時折襲ってくるアーミーアンツを瑠華が斬り伏せ、とうとう瑠華が探知した場所へと辿り着いた。そこは少しばかり広くなった部屋のような場所で、しかし姿は見えない。
「ここなの?」
「のはずじゃが…」
トコトコと部屋の中央へと進む。ぐるりと見回しても何処も違和感なんて……
「………」
瑠華が目を留めた場所。そこは明らかに何かがありますよと言うように、不自然な形で壁が盛り上がっていた。
「奏、少し魔法を切るぞ」
「えっ!?」
有無を言わさず瑠華が魔法の効力を落とせば、奏の視界が暗黒に染まる。これは最悪の事態を想定したからだ。
:瑠華ちゃんカメラも。
「む…すまぬ」
コメントで注意を受け、瑠華がカメラのシャッターを落とす。これで残ったのは音だけだ。
「奏、無闇に動くでないぞ。美影に頼れ」
「う、うん」
奏が美影に寄り添ったのを確認して、瑠華が壁の膨らみに近付く。そして手を当てて魔力を流し込み、中の状態を確認する。すると、瑠華の目が僅かに驚愕の色を浮かべた。
浸透させた魔力を使い壁を剥ぎ取ると、その先には土まみれになった女性の姿が。しかし微かな呼吸を繰り返しており、生きている事が窺えた。
「………間に合ったか」
思わずと言った様子で囁いた小さな声は、奏には届かなかったようだった。
地面に横たえて目立った怪我が無い事を確認し、瑠華がその頬に手を添える。その眼差しは、柔らかい。
瑠華にとって最優先すべきは奏だが、人間を見捨てる行為を好き好んで行いたくはなかったのも事実だった。
「瑠華ちゃん…?」
「む、すまぬの。今魔法を戻す」
奏に掛けていた魔法を再展開し、カメラのシャッターも開ける。
視界がいきなり戻った事で暫くパチパチと瞬きを繰り返していた奏だったが、瑠華の近くで横たわる女性の姿に目を丸くする。
「間に合った?」
「うむ。壁に埋まっておった故に酸欠気味じゃが、命に別状はない。暫く安静にすれば目を覚ますじゃろう」
「良かったぁ…」
酷く安堵した様子で奏が女性へと近付く。その顔色は先程よりも血行が良くなっている事が瑠華には分かった。
「にしても壁に埋まってたって…」
「おそらくは自らの意思じゃろう。土を掘るアンツ系統に対して、それで逃げられるかは賭けじゃったろうな」
:ほんそれ。
:間に合って良かった…
「ぅん…」
「おや、もう意識が戻ったか」
瑠華が女性の傍へと膝を着き、額に手を乗せる。そこから詳しく状態を確認すると、魔力欠乏状態である事が分かった。
そこで自身の魔力を把握した女性の魔力波長に調整し、ゆっくりと流し込む。すると次第に女性の顔色が生気を取り戻していく。
「ぁ、れ…わたし…」
「目が覚めたか。調子はどうじゃ?」
「えと…だい、じょうぶ…貴方、は?」
「救難信号を受けてきた探索者じゃよ。動けるようならば速やかに此処から脱出したいところなのじゃが…」
「何とか、動けそう…」
瑠華の手を借りて、フラフラとした様子ながらも女性が立ち上がる。瑠華へと感謝を述べたところで、女性が浮遊カメラに目を留めた。
「あれ、配信者?」
「む? 一応そうなるかの」
「おぉ、同業者にこんな可愛い子居たんだ」
「同業者ということはお主も…?」
「そだよー。『サナ』って名義で配信してるんだけど…」
「生憎妾はその辺りに疎くてのぅ…奏は知っておるか?」
「知ってるよ! 確か三十万人くらい登録者がいる、魔銃を使って戦う探索者だったかな?」
「あ、多分それで合ってるよ」
:マジか!
:まさかの同業者。
:しかも結構な大御所。
:顔出ししてないから分かんなかったわ…
そう、何故視聴者である奏がサナの存在に気付かなかったのかというと、彼女は普段顔出しを行っていない類いの配信者だったからだ。
「えと…とすると不味い…ですか?」
「あー…」
「いや、モザイク処理はされておるようじゃ。心配は要らぬよ」
:このカメラが優秀過ぎてな…
:これ選んだのも瑠華ちゃんだっけ。
:リスク管理能力が高過ぎるんよ。
「あ、そうだった。助けてくれてありがとうね。正直来てくれないかと思ってたよ。アーミーアンツの蟻酸でDバンドが壊れちゃったから……おまけに魔力も切れちゃって、最後の足掻きで壁に魔法で隠れたんだけど、空気穴作るの忘れちゃって」
:忘れちゃっては草。
:でも開けてたら熱でバレてそう。
「感謝するのであれば奏にじゃ。妾は正直諦めておったからの」
「瑠華ちゃん!?」
:正直者な瑠華ちゃん。
:いやでもあれは誰でも諦めるよ…
「事実じゃからの。隠す必要もあるまい」
「えぇ…」
「それでも助けてくれた事に変わりないから、感謝してもし足りないよ。ありがとね」
「む…」
:瑠華ちゃんが珍しく照れてる。
:かわいい。
「…帰るぞ。お主は戦力として数えても良いか?」
「えっと…ちょい待ち…」
ゴソゴソとサナが自分の荷物を確認していく。装備自体は生きてはいるが、所々アーミーアンツの蟻酸によって溶けて壊れているのが分かる。
「あ、壊れてる…」
ホルスターから引き抜いたのは、魔銃と呼ばれる魔力を弾として撃ち出す武器。見た目はリボルバーの様に見えるが、その連射性能はリボルバーの比ではない。しかし魔力を込めても弾として装填される感覚がせず、壊れてしまっているのが分かった。
「どれ、見せてみよ」
「え? う、うん…」
疑問符を浮かべながらも、サナが素直に瑠華へと手渡した。そして瑠華が魔銃に指を添えて魔力を流すと、内部魔力回路が焼き切れている事が分かった。
「この程度ならばすぐ終わる。暫し待つのじゃ」
「え…」
「瑠華ちゃん何でも出来ますから」
:ドヤ顔奏ちゃん。
:さす瑠華。
:魔力回路も直せるのやばぁ…
:瑠華ちゃんだもの。
:出た魔法の言葉!
「ここなの?」
「のはずじゃが…」
トコトコと部屋の中央へと進む。ぐるりと見回しても何処も違和感なんて……
「………」
瑠華が目を留めた場所。そこは明らかに何かがありますよと言うように、不自然な形で壁が盛り上がっていた。
「奏、少し魔法を切るぞ」
「えっ!?」
有無を言わさず瑠華が魔法の効力を落とせば、奏の視界が暗黒に染まる。これは最悪の事態を想定したからだ。
:瑠華ちゃんカメラも。
「む…すまぬ」
コメントで注意を受け、瑠華がカメラのシャッターを落とす。これで残ったのは音だけだ。
「奏、無闇に動くでないぞ。美影に頼れ」
「う、うん」
奏が美影に寄り添ったのを確認して、瑠華が壁の膨らみに近付く。そして手を当てて魔力を流し込み、中の状態を確認する。すると、瑠華の目が僅かに驚愕の色を浮かべた。
浸透させた魔力を使い壁を剥ぎ取ると、その先には土まみれになった女性の姿が。しかし微かな呼吸を繰り返しており、生きている事が窺えた。
「………間に合ったか」
思わずと言った様子で囁いた小さな声は、奏には届かなかったようだった。
地面に横たえて目立った怪我が無い事を確認し、瑠華がその頬に手を添える。その眼差しは、柔らかい。
瑠華にとって最優先すべきは奏だが、人間を見捨てる行為を好き好んで行いたくはなかったのも事実だった。
「瑠華ちゃん…?」
「む、すまぬの。今魔法を戻す」
奏に掛けていた魔法を再展開し、カメラのシャッターも開ける。
視界がいきなり戻った事で暫くパチパチと瞬きを繰り返していた奏だったが、瑠華の近くで横たわる女性の姿に目を丸くする。
「間に合った?」
「うむ。壁に埋まっておった故に酸欠気味じゃが、命に別状はない。暫く安静にすれば目を覚ますじゃろう」
「良かったぁ…」
酷く安堵した様子で奏が女性へと近付く。その顔色は先程よりも血行が良くなっている事が瑠華には分かった。
「にしても壁に埋まってたって…」
「おそらくは自らの意思じゃろう。土を掘るアンツ系統に対して、それで逃げられるかは賭けじゃったろうな」
:ほんそれ。
:間に合って良かった…
「ぅん…」
「おや、もう意識が戻ったか」
瑠華が女性の傍へと膝を着き、額に手を乗せる。そこから詳しく状態を確認すると、魔力欠乏状態である事が分かった。
そこで自身の魔力を把握した女性の魔力波長に調整し、ゆっくりと流し込む。すると次第に女性の顔色が生気を取り戻していく。
「ぁ、れ…わたし…」
「目が覚めたか。調子はどうじゃ?」
「えと…だい、じょうぶ…貴方、は?」
「救難信号を受けてきた探索者じゃよ。動けるようならば速やかに此処から脱出したいところなのじゃが…」
「何とか、動けそう…」
瑠華の手を借りて、フラフラとした様子ながらも女性が立ち上がる。瑠華へと感謝を述べたところで、女性が浮遊カメラに目を留めた。
「あれ、配信者?」
「む? 一応そうなるかの」
「おぉ、同業者にこんな可愛い子居たんだ」
「同業者ということはお主も…?」
「そだよー。『サナ』って名義で配信してるんだけど…」
「生憎妾はその辺りに疎くてのぅ…奏は知っておるか?」
「知ってるよ! 確か三十万人くらい登録者がいる、魔銃を使って戦う探索者だったかな?」
「あ、多分それで合ってるよ」
:マジか!
:まさかの同業者。
:しかも結構な大御所。
:顔出ししてないから分かんなかったわ…
そう、何故視聴者である奏がサナの存在に気付かなかったのかというと、彼女は普段顔出しを行っていない類いの配信者だったからだ。
「えと…とすると不味い…ですか?」
「あー…」
「いや、モザイク処理はされておるようじゃ。心配は要らぬよ」
:このカメラが優秀過ぎてな…
:これ選んだのも瑠華ちゃんだっけ。
:リスク管理能力が高過ぎるんよ。
「あ、そうだった。助けてくれてありがとうね。正直来てくれないかと思ってたよ。アーミーアンツの蟻酸でDバンドが壊れちゃったから……おまけに魔力も切れちゃって、最後の足掻きで壁に魔法で隠れたんだけど、空気穴作るの忘れちゃって」
:忘れちゃっては草。
:でも開けてたら熱でバレてそう。
「感謝するのであれば奏にじゃ。妾は正直諦めておったからの」
「瑠華ちゃん!?」
:正直者な瑠華ちゃん。
:いやでもあれは誰でも諦めるよ…
「事実じゃからの。隠す必要もあるまい」
「えぇ…」
「それでも助けてくれた事に変わりないから、感謝してもし足りないよ。ありがとね」
「む…」
:瑠華ちゃんが珍しく照れてる。
:かわいい。
「…帰るぞ。お主は戦力として数えても良いか?」
「えっと…ちょい待ち…」
ゴソゴソとサナが自分の荷物を確認していく。装備自体は生きてはいるが、所々アーミーアンツの蟻酸によって溶けて壊れているのが分かる。
「あ、壊れてる…」
ホルスターから引き抜いたのは、魔銃と呼ばれる魔力を弾として撃ち出す武器。見た目はリボルバーの様に見えるが、その連射性能はリボルバーの比ではない。しかし魔力を込めても弾として装填される感覚がせず、壊れてしまっているのが分かった。
「どれ、見せてみよ」
「え? う、うん…」
疑問符を浮かべながらも、サナが素直に瑠華へと手渡した。そして瑠華が魔銃に指を添えて魔力を流すと、内部魔力回路が焼き切れている事が分かった。
「この程度ならばすぐ終わる。暫し待つのじゃ」
「え…」
「瑠華ちゃん何でも出来ますから」
:ドヤ顔奏ちゃん。
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:瑠華ちゃんだもの。
:出た魔法の言葉!
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