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43話

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 ちょっとした注目を集めつつも、瑠華達は無事に渋谷ダンジョンへと到着する事が出来た。

「着いたー」

「人が思ったよりも多いのう」

 渋谷ダンジョンは入口前がダンジョン協会の出張所となっており、そこで直接ダンジョンへ潜る申請を行う事も出来るようになっているという少し特殊な場所だ。それに立地も相まって、かなり人気が高いダンジョンである。

 そして、そんな人気のダンジョンに現れた和装の二人組というのは……当然の事ながら人の目線を集めた。

「あれってもしかして…」

「瑠華ちゃんと奏ちゃんじゃね?」

「おぉ…実在してたのか…」

「まぁその気持ちは分かるけど、わざわざ口に出すなよ…」

「あ、すまん」

 明らかに瑠華達のチャンネルの視聴者である事が分かる会話が聞こえてきたり。

「あの装備でこのダンジョン…?」

「見た目的にお嬢様っぽいかも」

 などと知らない人からはズレた認識をされつつも、受付でシリアルナンバーを確認してすんなりとダンジョンへと潜り込んだ。

「ここなら邪魔にならないかな?」

「カメラにはモザイク機能もあるのじゃから、そう気にする必要はなかろうて」

「まぁそうなんだけど…声出すからやっぱり周りには気を配らないとね」

 もう慣れた様子でカメラを準備し、スマホを接続。そこから配信サイトにアクセスして配信を始める。元々告知自体はしていた為、直ぐに同接数が増え始めた。

「よしっ。皆見えるー? 久しぶりの配信だよっ!」

 カメラに向かって笑顔を浮かべ手を振れば、コメント欄に反応が流れる。

 :きちゃ!
 :こんにちは~。
 :こんちゃ。久しぶり~。
 :待ってた!

 配信を待ち望んでいたという言葉が多い事に、奏が人知れず安堵の息を吐く。

「ほら、瑠華ちゃんも」

「瑠華じゃよ……のう奏。そろそろ挨拶を決めんか?」

 :それはそう。
 :でも今はそれよりその服装が気になりすぎる!
 :それな!
 :和服!!

「あ、忘れるところだった。えへへ~いいでしょー」

 くるりとカメラに見せびらかすようにして奏が回転する。

 :巫女服!
 :しかもお揃い…
 :てぇてぇ…
 :あっ! もしかしてトーカーで流れてきたの瑠華ちゃん達?
 :俺も見たわ。渋谷ダンジョン前に居たって。

 視聴者の言うトーカーとは、写真や文章を気軽に投稿する事が出来るSNSの事だ。奏が配信の告知を行うのも、そのトーカーである。

「おー、なんか話題になってるみたいだね!」

「……あまり喜ばしい報告では無いのう」

 無邪気に喜ぶ奏とは対照的に、瑠華の表情は渋かった。

 :なんで?
 :所謂盗撮だからだよ。
 :顔はぼかしてもやってる事はほぼ犯罪。
 :写りこんだならまだいいけど、許可無く撮るのは流石にねぇ……

「あ、そっか…」

「まぁそれでもし押し掛ける不埒な輩が居たのならば……少し灸を据えねばならんかのぅ」

 :あ……
 :瑠華ちゃんの逆鱗…いや誰でもそうか。
 :まぁいざとなれば〖認識阻害〗もあるし。
 :そういえばそんなチートあったな……

「まぁ今の所実害は無いから、このまま進めるよっ」

 :おっ、そうだな。
 :その装備の詳細ч(゜д゜ч)ぷり~ず
 :まぁスポンサーからの提供だろうけど。

「そう! これはお察しの通り【八車重工業】からの提供なんだけれど…名前が龍吟ノ巫女装りゅうぎんのみこしょう……」

 :噛んだなwww
 :じょく…あ、装束しょうぞくかwww
 :言い難いのは分かるwww

「…瑠華ちゃぁん!」

「……代わりに妾が説明しよう。妾が着ているものが“龍吟ノ巫女装束りゅうぎんのみこしょうぞく暁闇ぎょうあん”という装備じゃ。そして奏のものは“龍吟ノ巫女装束りゅうぎんのみこしょうぞく暁光ぎょうこう”と言う」

 :直ぐに助けを求める奏ちゃんカワヨ。
 :さす瑠華。
 :俺絶対噛むわこれ…
 :名前めちゃカッコイイ…

「軽く説明を読んだ限りでは、耐火耐水耐刃耐魔と全方面に優れておるようじゃ。妾の“明鏡ノ月”は無理じゃろうが、奏の“無銘”ならば薄く切れる程度じゃろうな」

「私の刀で切れないの!?」

 :わぁおwww
 :やべぇな。
 :てか瑠華ちゃん達の武器の名前も初出しでは?

「あ確かに。まぁ大丈夫でしょ」

 :大雑把過ぎるwww
 :奏ちゃんだもの。

「それどういう意味?」

 ずいっと奏がジト目でカメラに詰め寄る。

 :圧が可愛い。
 :もっとやって下さい!

「……なんか、ヤ」

 :草。
 :まぁ上のは上級者だから…

「奏。収益化については話さんのか?」

「あっ、そうだった。皆! とうとう配信が収益化出来たよ!」

 :おお!
 :ならば!
 :¥5,000 お祝い!
 :¥1,000 少ないけど!
 :¥10,000 祭りじゃぁ!

 途端に送られ始めたスパチャに、奏が目を白黒とさせる。

「わわっ!? み、皆無理しちゃ駄目だよ!?」

「気持ちは有難いが、無理はするでないぞ」

 :大丈夫、生きられるだけは残すから。
 :ところで旅行の目標金額は達成してるの?

「あ、覚えてくれてる人居たんだね。えっと…確か半分くらいだっけ?」

「詳しい金額は伏せるが、まぁその程度じゃ」

 :¥30,000 成程。
 :¥40,000 つまり。
 :¥50,000 こうすればいいんだな?
 :草。
 :連携完璧かよwww

「えっ!? えと…十二万…!?」

「そこから手数料が引かれる故満額とはいかぬがの」

 :¥1,000 俺そんなに送れないごめん。
 :ええんやで。
 :無理するなよ。

「そうだよ。見てコメントしてくれるだけで嬉しいんだから」

 :でも本音は?

「お金欲しい」

「これ」

「あたっ」

 あまりにも本音を明け透けにした奏の頭をペシンと叩いて咎める。

 :仲良いなぁ…
 :てぇてぇ。
 :でも本音出し過ぎなのはワロタwww

「しかしこうも集まるとはのう…」

「……もしかしてもう目標金額まで貯まった?」

「うむ…」

「……急いで来た意味ないじゃん」

 :草。
 :まぁ入金まで時間掛かるから……。
 :俺たちは嬉しいけど。
 :配信があるのが嬉しい。

「あそうそう。その事なんだけど、夏休みに入るから配信がちょっと増えるよ」

 毎日配信は流石に難しいとは思っているが、それでも週に三回は配信をしたいと考えていた。

「ただし妾が決めるノルマを達成してからじゃがな」

 :ノルマ?

「夏休みの課題じゃよ」

 :あーwww
 :毎日コツコツが大事だから…
 :やっぱりお母さんじゃんwww


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