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38話 閑話 レギノルカ①
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これは遥か昔の、瑠華がまだレギノルカであった時の話。
―――――そして、レギノルカがまだ“私”であった時の話である。
その日レギノルカはのんびりと日の光を浴びながら羽を伸ばしていた。
しかしそれはただボーッとしている訳では無く、しっかりとした目的があっての事だ。
広げた二対の巨大な翼によって世界に漂う魔力の調整を行い、折り畳んだ四本の脚から地中の魔力に干渉しその流れを整える。これらがレギノルカの目的であり、仕事の一つである。
そうして今日も世界を調整していたレギノルカの元へ、何かが近付く気配がした。
(何かしら…?)
探知範囲や精度が桁違いのレギノルカであれど、相対的に極小な存在の事細かな情報を遠距離から得るのは困難だと言わざるを得ない。
一先ずその小さな存在をふとした拍子に吹き飛ばしたりしないよう、静かに翼を畳んでいく。そして上げていた首を下ろして顎を静かに地面へと着ければ、そこに何かが飛び付いてきた感覚がした。
山をも超える巨体であるレギノルカに対して躊躇無くその様な事を出来る存在は、彼女が覚えている限り一人しかいない。
『……メル。危ないからやめなさい』
「やだっ! ここまで来るの大変だったんだから!」
イヤイヤと首を横に振りながら頬を擦り付けるのを止めない彼女―――メルティアに、思わず出そうになる溜息をグッと堪える。もしここで溜息を吐こうものなら、一瞬で吹き飛んでしまうのは想像するに容易いからだ。
暫くされるがままになっていたレギノルカが動いたのは、別の存在が近付くのを察知した時だった。
『離れなさいメル。動くわよ』
「んぇ? ……あ、魔物か」
レギノルカが居着いた場所の付近は、魔力が溜まりやすくなる。その結果そこに生息する魔物はその魔力にあてられて、力をつけてしまうようになる。
それでもレギノルカからすれば吹けば消えるような存在でしかないが、ただの人間にとっては勝ち目などほぼ無い敵だ。レギノルカにそんな存在が近付いてくるのを放置する選択肢はなく、魔法で消し飛ばそうと魔力を高め始めた。
「んー…いや、私がやる」
『メル?』
「ルカちゃんに私が強くなったとこ見てもらうんだからっ!」
そう言うや否やメルティアがレギノルカから離れると、レギノルカと同じように魔力を高めていく。そして紡ぐは、清らかな音。
「《我が命ず》《白き雪華の輝きよ》《我が刃に力を》《与えるは絶望》《死よりも静かに》《永遠なる凍てつきをここへ》《白き墓標を突き立てよ》」
その声に魔力が応える。気温が下がり、メルティアの足元から霜が下りる。高められた魔力が形を成し、無数の刃となって近付いてきた魔物へと一斉に襲いかかった。
『ほぅ…』
一つ一つは小さな刃。しかしそれは当たった瞬間に凍結し、みるみるうちに魔物を氷の中へと閉じ込めてしまう。
「ふふん。どうどう?」
『凄いわね。たった三十年でここまで出来るようになってるなんて』
「ルカちゃんがどっか行ってから必死に特訓したんだからねっ!?」
レギノルカは一つの場所に留まる事をしない。それは同じ場所では全てを整える事など出来ないからだ。故にメルティアは三十年前にレギノルカが場所を移動してからずっと、レギノルカを探して旅を続けていた。その結果、レギノルカであっても思わず感嘆してしまう程の実力を身に付けるに至ったのだった。
『それを見せる為に私を探していたの?』
「ちがぁう!」
『……何をそんなに怒っているのよ』
久しぶりに友人に会ったと思えばいきなり怒鳴られ、レギノルカはただ困惑するしかない。しかし、それはメルティアとしても同じ事だった。
「ルカちゃん何も私に教えてくれなかったじゃん! 私たち友達だよね!?」
メルティアからすれば友達が何も言わずに忽然と姿を消してしまい、レギノルカにとって自分はその程度の存在だと言われているとしか思えなかったのだ。挙句三十年ぶりに会えたと思えば昔と変わらぬ呑気な様子で待っており、流石に堪忍袋の緒が切れるというものである。
『それは…ごめんなさい』
「ルカちゃん私の事嫌いになったのかと思って夜しか眠れなかったんだからねっ!」
『……それは眠れているのではなくて?』
「…兎に角!」
誤魔化した。
「もう離れないんだからねっ!」
またしても顎にへばりつくメルティアに、レギノルカは罪悪感から拒否するのを躊躇ってしまった。
『危ないわよ? 私大きいんだから』
「ルカちゃんに潰されるなら本望!」
『私が本望じゃないのよ全く…ほら』
「うわっ!?」
レギノルカが魔法を使ってメルティアの身体を軽々と持ち上げると、自らの頭の上へと乗せて首を持ち上げる。
『気持ちいい?』
「純粋に怖い!」
『あ、あら?』
「ルカちゃん自分がどれだけ大きいか自覚してよ!」
『しているつもりなのだけれど』
実際のところ横の大きさは把握しているものの、縦の大きさに関しては理解が薄いレギノルカである。
『ごめんなさい。私の頭の上に乗りたがる人間が多いものだから、てっきり喜んでくれるものかと思って…』
「…それどんな人だった?」
『え? うーん…覚えていないわね。私からすれば小さすぎてよく分からなかったし…数だけは多かったけど』
「ふぅん…そんなヤツ居たんだ」
『メル?』
「ねぇルカちゃん。多分それ舐められてるよ」
『舐め…?』
「ルカちゃんは優しいから人間を守ったりするけど、それでルカちゃんよりも偉いとか勘違いするのも人間なんだよ」
『そういうもの?』
「ルカちゃんが思ってるより、人間は汚いよ」
その言葉には、何処か実感が伴っていた。
「だからさ、威厳出していこうよ」
『威厳?』
「ルカちゃん声優しいし、口調も合ってはいるんだけど…距離が近過ぎると思うんだ。だから口調を威厳あるものにして、舐められないようにしないと」
『私としては舐められても気にしないけれど』
「私が気にするの! 私の大切な友達が舐められたままで嬉しい訳ないでしょ! ルカちゃんだって私が馬鹿にされてたら嫌でしょ?」
『それはそうだけれど…口調程度で変わるもの?』
「…多分」
実際のところ、変なテンションで口走ってしまった感は否めない。だが一部の人間の間でレギノルカが軽視されているのは事実であり、それに対してメルティアが怒りを抱いているのもまた事実だった。
「兎に角やってみよ! まず一人称を変えてみようよ!」
『何にするの?』
「うーん…我…私…いやルカちゃんに合わないな。何か他に良いの…あっ、妾っていうのはどう?」
『妾』
「そうそう! で、一人称がそれなら口調も変えないと…語尾に『のじゃ』付けるとか、『かえ』とか『ぞ』とか…」
『……こんな感じかえ?』
「そうっ!」
『本当にこんな事で変わるのじゃろうか…』
「……え、早速使い熟してる…」
『メルの考えを少し読ませて貰ったからの。凡その把握は出来たのじゃ』
「うわぁ…でもやっぱりこっちの方が威厳ある!」
『ならばこのままにしようかの。感謝するぞ、メル』
「うんっ。あ、でもでも、私以外の人間の言葉は鵜呑みにしちゃダメだよ? ルカちゃんを利用しようとする汚い人間ばっかなんだから」
『それは心得ておるよ。妾が信頼するのはメルだけじゃからの』
「……ルカちゃんの馬鹿」
『何故妾は貶されたのじゃ…』
◆ ◆ ◆
「――――ちゃん。瑠華ちゃん? どうしたの? 居眠り?」
レギノルカ―――瑠華が、自らを呼ぶその声に閉じていた目を開ける。すると、こちらを心配そうに覗き込む奏の姿が目に入った。
「……まぁ、そのようなものじゃな」
「ふーん……でも瑠華ちゃんがソファで居眠りなんて珍しいね」
「そうじゃの…」
実際には眠っていた訳ではなく、膨大な記憶の整理をしていただけなのだが。
永きを生きるレギノルカは、その記憶領域も膨大である。それら全てを把握はしているものの、定期的にその記憶の整理をする事がある。それはレギノルカにとって数多くある思い出に浸る、大事な作業だった。
(懐かしい記憶じゃの…もう十万年以上前の事じゃったか)
その後のレギノルカの印象を決定付けたその出来事は、レギノルカにとって一二を争う程の大切な記憶の一つである。
「…のう、奏」
「何?」
「妾の口調は、嫌いかえ?」
「嫌いな訳無いじゃん。まぁちょっと不思議な印象はあるかもだけど、私にとっては昔から慣れ親しんだ瑠華ちゃんの口調だし…何より瑠華ちゃんにピッタリだと思うよ?」
「……そうか」
「どうしたの? 嫌な記憶でも思い出したの?」
奏が眉根を寄せて瑠華の手を握る。瑠華がその口調によって人の輪から弾かれた事があるのを、奏は知っていたからだ。
「いや、寧ろ逆じゃな」
「そうなの?」
「うむ。それにもし仮に何か言われたとしても、妾は好いてくれる者がおる事を既に知っておるからの」
「っ! うんっ」
嬉しそうに満面の笑みを浮かべる奏に、瑠華が優しく微笑みを返した。
かつて世界を見守り続けた始祖龍は、今も尚人々の成長を見守っている。
――――――――――――――――――――
終わりませんよ!?
《補足情報》
レギノルカの全長についてですが、軽くkmは超えています。よく街踏み潰さなかったよね…
翼は二対四枚。羽ばたいたら地形が変わるので、もっぱら飛行は魔法で身体を浮かせていました。つまりただの飾り。
鱗の色は真っ白で、紅玉の様な瞳を持っていました。鱗一枚で小さな村くらいなら覆えると言えば、どれだけ巨大だったか分かるかと。
………改めて考えるとバカでかいな。
ちなみに瑠華も龍化は出来ます。今の大きさは東京ドームにギリギリ収まるくらい。わぁ可愛い()
―――――そして、レギノルカがまだ“私”であった時の話である。
その日レギノルカはのんびりと日の光を浴びながら羽を伸ばしていた。
しかしそれはただボーッとしている訳では無く、しっかりとした目的があっての事だ。
広げた二対の巨大な翼によって世界に漂う魔力の調整を行い、折り畳んだ四本の脚から地中の魔力に干渉しその流れを整える。これらがレギノルカの目的であり、仕事の一つである。
そうして今日も世界を調整していたレギノルカの元へ、何かが近付く気配がした。
(何かしら…?)
探知範囲や精度が桁違いのレギノルカであれど、相対的に極小な存在の事細かな情報を遠距離から得るのは困難だと言わざるを得ない。
一先ずその小さな存在をふとした拍子に吹き飛ばしたりしないよう、静かに翼を畳んでいく。そして上げていた首を下ろして顎を静かに地面へと着ければ、そこに何かが飛び付いてきた感覚がした。
山をも超える巨体であるレギノルカに対して躊躇無くその様な事を出来る存在は、彼女が覚えている限り一人しかいない。
『……メル。危ないからやめなさい』
「やだっ! ここまで来るの大変だったんだから!」
イヤイヤと首を横に振りながら頬を擦り付けるのを止めない彼女―――メルティアに、思わず出そうになる溜息をグッと堪える。もしここで溜息を吐こうものなら、一瞬で吹き飛んでしまうのは想像するに容易いからだ。
暫くされるがままになっていたレギノルカが動いたのは、別の存在が近付くのを察知した時だった。
『離れなさいメル。動くわよ』
「んぇ? ……あ、魔物か」
レギノルカが居着いた場所の付近は、魔力が溜まりやすくなる。その結果そこに生息する魔物はその魔力にあてられて、力をつけてしまうようになる。
それでもレギノルカからすれば吹けば消えるような存在でしかないが、ただの人間にとっては勝ち目などほぼ無い敵だ。レギノルカにそんな存在が近付いてくるのを放置する選択肢はなく、魔法で消し飛ばそうと魔力を高め始めた。
「んー…いや、私がやる」
『メル?』
「ルカちゃんに私が強くなったとこ見てもらうんだからっ!」
そう言うや否やメルティアがレギノルカから離れると、レギノルカと同じように魔力を高めていく。そして紡ぐは、清らかな音。
「《我が命ず》《白き雪華の輝きよ》《我が刃に力を》《与えるは絶望》《死よりも静かに》《永遠なる凍てつきをここへ》《白き墓標を突き立てよ》」
その声に魔力が応える。気温が下がり、メルティアの足元から霜が下りる。高められた魔力が形を成し、無数の刃となって近付いてきた魔物へと一斉に襲いかかった。
『ほぅ…』
一つ一つは小さな刃。しかしそれは当たった瞬間に凍結し、みるみるうちに魔物を氷の中へと閉じ込めてしまう。
「ふふん。どうどう?」
『凄いわね。たった三十年でここまで出来るようになってるなんて』
「ルカちゃんがどっか行ってから必死に特訓したんだからねっ!?」
レギノルカは一つの場所に留まる事をしない。それは同じ場所では全てを整える事など出来ないからだ。故にメルティアは三十年前にレギノルカが場所を移動してからずっと、レギノルカを探して旅を続けていた。その結果、レギノルカであっても思わず感嘆してしまう程の実力を身に付けるに至ったのだった。
『それを見せる為に私を探していたの?』
「ちがぁう!」
『……何をそんなに怒っているのよ』
久しぶりに友人に会ったと思えばいきなり怒鳴られ、レギノルカはただ困惑するしかない。しかし、それはメルティアとしても同じ事だった。
「ルカちゃん何も私に教えてくれなかったじゃん! 私たち友達だよね!?」
メルティアからすれば友達が何も言わずに忽然と姿を消してしまい、レギノルカにとって自分はその程度の存在だと言われているとしか思えなかったのだ。挙句三十年ぶりに会えたと思えば昔と変わらぬ呑気な様子で待っており、流石に堪忍袋の緒が切れるというものである。
『それは…ごめんなさい』
「ルカちゃん私の事嫌いになったのかと思って夜しか眠れなかったんだからねっ!」
『……それは眠れているのではなくて?』
「…兎に角!」
誤魔化した。
「もう離れないんだからねっ!」
またしても顎にへばりつくメルティアに、レギノルカは罪悪感から拒否するのを躊躇ってしまった。
『危ないわよ? 私大きいんだから』
「ルカちゃんに潰されるなら本望!」
『私が本望じゃないのよ全く…ほら』
「うわっ!?」
レギノルカが魔法を使ってメルティアの身体を軽々と持ち上げると、自らの頭の上へと乗せて首を持ち上げる。
『気持ちいい?』
「純粋に怖い!」
『あ、あら?』
「ルカちゃん自分がどれだけ大きいか自覚してよ!」
『しているつもりなのだけれど』
実際のところ横の大きさは把握しているものの、縦の大きさに関しては理解が薄いレギノルカである。
『ごめんなさい。私の頭の上に乗りたがる人間が多いものだから、てっきり喜んでくれるものかと思って…』
「…それどんな人だった?」
『え? うーん…覚えていないわね。私からすれば小さすぎてよく分からなかったし…数だけは多かったけど』
「ふぅん…そんなヤツ居たんだ」
『メル?』
「ねぇルカちゃん。多分それ舐められてるよ」
『舐め…?』
「ルカちゃんは優しいから人間を守ったりするけど、それでルカちゃんよりも偉いとか勘違いするのも人間なんだよ」
『そういうもの?』
「ルカちゃんが思ってるより、人間は汚いよ」
その言葉には、何処か実感が伴っていた。
「だからさ、威厳出していこうよ」
『威厳?』
「ルカちゃん声優しいし、口調も合ってはいるんだけど…距離が近過ぎると思うんだ。だから口調を威厳あるものにして、舐められないようにしないと」
『私としては舐められても気にしないけれど』
「私が気にするの! 私の大切な友達が舐められたままで嬉しい訳ないでしょ! ルカちゃんだって私が馬鹿にされてたら嫌でしょ?」
『それはそうだけれど…口調程度で変わるもの?』
「…多分」
実際のところ、変なテンションで口走ってしまった感は否めない。だが一部の人間の間でレギノルカが軽視されているのは事実であり、それに対してメルティアが怒りを抱いているのもまた事実だった。
「兎に角やってみよ! まず一人称を変えてみようよ!」
『何にするの?』
「うーん…我…私…いやルカちゃんに合わないな。何か他に良いの…あっ、妾っていうのはどう?」
『妾』
「そうそう! で、一人称がそれなら口調も変えないと…語尾に『のじゃ』付けるとか、『かえ』とか『ぞ』とか…」
『……こんな感じかえ?』
「そうっ!」
『本当にこんな事で変わるのじゃろうか…』
「……え、早速使い熟してる…」
『メルの考えを少し読ませて貰ったからの。凡その把握は出来たのじゃ』
「うわぁ…でもやっぱりこっちの方が威厳ある!」
『ならばこのままにしようかの。感謝するぞ、メル』
「うんっ。あ、でもでも、私以外の人間の言葉は鵜呑みにしちゃダメだよ? ルカちゃんを利用しようとする汚い人間ばっかなんだから」
『それは心得ておるよ。妾が信頼するのはメルだけじゃからの』
「……ルカちゃんの馬鹿」
『何故妾は貶されたのじゃ…』
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「――――ちゃん。瑠華ちゃん? どうしたの? 居眠り?」
レギノルカ―――瑠華が、自らを呼ぶその声に閉じていた目を開ける。すると、こちらを心配そうに覗き込む奏の姿が目に入った。
「……まぁ、そのようなものじゃな」
「ふーん……でも瑠華ちゃんがソファで居眠りなんて珍しいね」
「そうじゃの…」
実際には眠っていた訳ではなく、膨大な記憶の整理をしていただけなのだが。
永きを生きるレギノルカは、その記憶領域も膨大である。それら全てを把握はしているものの、定期的にその記憶の整理をする事がある。それはレギノルカにとって数多くある思い出に浸る、大事な作業だった。
(懐かしい記憶じゃの…もう十万年以上前の事じゃったか)
その後のレギノルカの印象を決定付けたその出来事は、レギノルカにとって一二を争う程の大切な記憶の一つである。
「…のう、奏」
「何?」
「妾の口調は、嫌いかえ?」
「嫌いな訳無いじゃん。まぁちょっと不思議な印象はあるかもだけど、私にとっては昔から慣れ親しんだ瑠華ちゃんの口調だし…何より瑠華ちゃんにピッタリだと思うよ?」
「……そうか」
「どうしたの? 嫌な記憶でも思い出したの?」
奏が眉根を寄せて瑠華の手を握る。瑠華がその口調によって人の輪から弾かれた事があるのを、奏は知っていたからだ。
「いや、寧ろ逆じゃな」
「そうなの?」
「うむ。それにもし仮に何か言われたとしても、妾は好いてくれる者がおる事を既に知っておるからの」
「っ! うんっ」
嬉しそうに満面の笑みを浮かべる奏に、瑠華が優しく微笑みを返した。
かつて世界を見守り続けた始祖龍は、今も尚人々の成長を見守っている。
――――――――――――――――――――
終わりませんよ!?
《補足情報》
レギノルカの全長についてですが、軽くkmは超えています。よく街踏み潰さなかったよね…
翼は二対四枚。羽ばたいたら地形が変わるので、もっぱら飛行は魔法で身体を浮かせていました。つまりただの飾り。
鱗の色は真っ白で、紅玉の様な瞳を持っていました。鱗一枚で小さな村くらいなら覆えると言えば、どれだけ巨大だったか分かるかと。
………改めて考えるとバカでかいな。
ちなみに瑠華も龍化は出来ます。今の大きさは東京ドームにギリギリ収まるくらい。わぁ可愛い()
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