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2話
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……結果から話そう。レギノルカは確かに人として生きてみたいと願い、実際にそれは叶った。叶ったのだが……
「まさか赤子からとは思わなんだ…」
それも母君が気を利かせたのは知らないが、龍としての力を持ったままだ。
当然そんな力を持った赤子を宿した今生の母親が無事で居られる訳もなく…転生して早々自らの母親を救う為に力を使う事になったのだった。
そうして無事? 産まれる事が出来たレギノルカではあったものの、それで終わりでは無かった。
「……まさか捨て子になるとは」
突然だが力とは何処から来るものだろうか。それは身に宿す魂だ。
そして当然の事ながらレギノルカの魂はとても大きく、力強い。それこそ、ただの人間の両親から受け継ぐはずであった性質を弾いてしまう程に。
……そう。つまりレギノルカは全くもって両親との繋がりが存在しなかったのだ。
「しかし…この世界はどうにも妾の知る世界とは違うのう」
レギノルカが今迄生きていた世界は、魔物と呼ばれる人間の敵が存在する世界だった。だがこの世界には魔物が存在しない。……いや、厳密に言えば地上には魔物が存在しないのだ。
だからこそ文明が発達しており、レギノルカからすれば未知の技術が大量であった。
空高く聳える高い塔。高速で動く鉄の箱。動く絵を映し出す板。
魔物が居ないからこそ平和な世界で、レギノルカは憂う。
「……母君よ。妾はこの世界に合わぬと思うのだが」
街一つを簡単に消し飛ばせる程の力は、この世界には本来必要が無い。…まぁ自衛としては十分過ぎるものではあるが。
「あー! 瑠華ちゃんこんな所に居たー!」
「ん? おぉ、奏か」
思考の海に沈んでいたレギノルカ……瑠華を引き戻したのは、同じ施設に住む柊 奏であった。
「何してたの?」
「少し考え事をな。それより奏はどうしたのじゃ?」
「そろそろおやつの時間だよ!」
「もうそんな時間か…」
転生して早々捨てられた瑠華ではあるが、野端に捨て置かれるということは無く施設へと預けられていた。
幼くも既に成熟した思考を持つ瑠華はその施設において浮いた存在であったものの、それを歯牙にも掛けず話し掛けて来た奏は、今の瑠華にとって大切な存在になっていた。
「ありがとの。では行こうか」
「うんっ!」
手を繋ぎ部屋へを戻る道中、奏が口を開く。
「瑠華ちゃんは将来何になりたい?」
「唐突な質問じゃな…特に考えた事もないわい」
「私はね! 探索者になりたいの!」
探索者。それは現代において比較的新しい職業であると言える。
その仕事内容は…ダンジョンの調査、又はその攻略だ。
ダンジョン。それは世界に突如として現れた大穴の総称であり、前記した地上には魔物がいないという事に繋がっている。
ダンジョン内部は複雑怪奇としか言い様が無い空間であり、そこでは地上の常識が通用しない。
現代科学では解明不能な現象──魔法やスキルと言ったものが、ダンジョンが現れると同時に出現した。それらを駆使し、ダンジョンに住む魔物を倒す。それが探索者の日常である。
「そこまで魅力的なものかえ?」
「だっていっぱいお金もらえるんだよ!?」
一攫千金。そんな夢が見られる職業。それが探索者だ。今ではほぼ大半の人間が探索者として一度はダンジョンに潜った事がある、そんな現状だ。
「妾は危ないと思うのじゃが」
「あぶないけど、でも楽しそうだもん!」
「楽しい、か…」
未知を知り、それを糧とする事に楽しさを覚える。確かにそれは瑠華も認める事だ。現に瑠華は人を知り、それを楽しいと感じている。
「だからおっきくなったら一緒になろうよ!」
「……まぁ、それも一興ではあると思うがの」
探索者は十五歳以上からと法律で定められている。瑠華はこの世界に産まれて六年と少し。探索者になるまではまだまだ時間がある。
「危ない事はするでないぞ?」
「うん!」
満面の笑みで頷く奏に、瑠華は(あ、これは無茶するな)と直感したのであった。
「まさか赤子からとは思わなんだ…」
それも母君が気を利かせたのは知らないが、龍としての力を持ったままだ。
当然そんな力を持った赤子を宿した今生の母親が無事で居られる訳もなく…転生して早々自らの母親を救う為に力を使う事になったのだった。
そうして無事? 産まれる事が出来たレギノルカではあったものの、それで終わりでは無かった。
「……まさか捨て子になるとは」
突然だが力とは何処から来るものだろうか。それは身に宿す魂だ。
そして当然の事ながらレギノルカの魂はとても大きく、力強い。それこそ、ただの人間の両親から受け継ぐはずであった性質を弾いてしまう程に。
……そう。つまりレギノルカは全くもって両親との繋がりが存在しなかったのだ。
「しかし…この世界はどうにも妾の知る世界とは違うのう」
レギノルカが今迄生きていた世界は、魔物と呼ばれる人間の敵が存在する世界だった。だがこの世界には魔物が存在しない。……いや、厳密に言えば地上には魔物が存在しないのだ。
だからこそ文明が発達しており、レギノルカからすれば未知の技術が大量であった。
空高く聳える高い塔。高速で動く鉄の箱。動く絵を映し出す板。
魔物が居ないからこそ平和な世界で、レギノルカは憂う。
「……母君よ。妾はこの世界に合わぬと思うのだが」
街一つを簡単に消し飛ばせる程の力は、この世界には本来必要が無い。…まぁ自衛としては十分過ぎるものではあるが。
「あー! 瑠華ちゃんこんな所に居たー!」
「ん? おぉ、奏か」
思考の海に沈んでいたレギノルカ……瑠華を引き戻したのは、同じ施設に住む柊 奏であった。
「何してたの?」
「少し考え事をな。それより奏はどうしたのじゃ?」
「そろそろおやつの時間だよ!」
「もうそんな時間か…」
転生して早々捨てられた瑠華ではあるが、野端に捨て置かれるということは無く施設へと預けられていた。
幼くも既に成熟した思考を持つ瑠華はその施設において浮いた存在であったものの、それを歯牙にも掛けず話し掛けて来た奏は、今の瑠華にとって大切な存在になっていた。
「ありがとの。では行こうか」
「うんっ!」
手を繋ぎ部屋へを戻る道中、奏が口を開く。
「瑠華ちゃんは将来何になりたい?」
「唐突な質問じゃな…特に考えた事もないわい」
「私はね! 探索者になりたいの!」
探索者。それは現代において比較的新しい職業であると言える。
その仕事内容は…ダンジョンの調査、又はその攻略だ。
ダンジョン。それは世界に突如として現れた大穴の総称であり、前記した地上には魔物がいないという事に繋がっている。
ダンジョン内部は複雑怪奇としか言い様が無い空間であり、そこでは地上の常識が通用しない。
現代科学では解明不能な現象──魔法やスキルと言ったものが、ダンジョンが現れると同時に出現した。それらを駆使し、ダンジョンに住む魔物を倒す。それが探索者の日常である。
「そこまで魅力的なものかえ?」
「だっていっぱいお金もらえるんだよ!?」
一攫千金。そんな夢が見られる職業。それが探索者だ。今ではほぼ大半の人間が探索者として一度はダンジョンに潜った事がある、そんな現状だ。
「妾は危ないと思うのじゃが」
「あぶないけど、でも楽しそうだもん!」
「楽しい、か…」
未知を知り、それを糧とする事に楽しさを覚える。確かにそれは瑠華も認める事だ。現に瑠華は人を知り、それを楽しいと感じている。
「だからおっきくなったら一緒になろうよ!」
「……まぁ、それも一興ではあると思うがの」
探索者は十五歳以上からと法律で定められている。瑠華はこの世界に産まれて六年と少し。探索者になるまではまだまだ時間がある。
「危ない事はするでないぞ?」
「うん!」
満面の笑みで頷く奏に、瑠華は(あ、これは無茶するな)と直感したのであった。
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