129 / 138
最終章
123
しおりを挟む
「え…」
クーリアが、いや、その場にいた全員が目を見開いた。可愛らしい鳴き声が聞こえたと思えば、先程まで荒れ狂っていたはずの蔦が全て地に落ちたのだから。
「リー、ヴォ?」
「ワンっ」
クーリアに呼ばれたリーヴォは、元気な鳴き声と共に一目散に彼女の元へと駆け寄った。
「なんで、ここに……」
クーリアが疑問の声をあげるが、当然ながらその疑問に答える声はない。
『そ、レ…なん、で…』
掠れた声で、精霊が呟く。その瞳には、悲しみ、怒り、嘆き、そして……懐かしさが浮かんでいた。
『もう、やめよう?』
「っ!?」
その時、突如として響いた、幼い声。
「リーヴォ、なの…?」
『そうだよ、主様』
リーヴォが精霊へと目線を向けながら、そう答える。
響いた幼い声は、リーヴォのものだったのだ。
『…ボクのせいなんだ。あの子が、こんな事を始めてしまったのは』
「…え?」
クーリアが詳しく聞こうとするが、その前に精霊の声が響いた。
『やっパり、そウ、だ…いキテタ、』
「生きて…まさか」
『…ごめん。ずっと待たせた』
その言葉が意味するのは…
『あるジ、サマ…』
精霊が、もう枯れきってしまったはずの涙を流し、地面へとへたり込む。そこへリーヴォが静かに歩み寄った。
『……ごめん。君を置いて、そしてこんなにも待たせてしまって』
『…イい、かえっテきてクレたかラ。でモ…ナんデ…』
『それは、君のおかげでもあるんだ』
『ぇ…?』
リーヴォがクーリアへと目線を向ける。
『君の力を、主様を通してもらった。だから、こうして君と話せるんだ』
リーヴォはクーリアから、精霊の欠片の力を受け取ることで、精霊獣としての変革を遂げていたのだ。
「だから、軽かったんだ…」
『実体はあってないようなものだから』
クーリアはやっと腑に落ちた。リーヴォの正体について。魔力を糧とする動物など、存在しないのだから。
『さぁ、終わらせよう』
『……そレは、むり、ダヨ……もウ、テオくれ』
「…っ!?」
『わたシは、堕ちテ、しまッタかラ…もウ、むり、だヨ…』
堕ちてしまった精霊は、もう戻ることは許されない。そして、その力もまた、制御することは出来ない。
魔の氾濫は、堕ちた精霊の憎悪に染まった魔力が引き起こしたもの。それを精霊自身がどうにかすることは出来なかったのだ。
「そんな……じゃあ、どうすれば……」
サラ達が絶望の表情を浮かべる中、クーリアだけは、ただ真っ直ぐと精霊を見つめていた。
「…大丈夫。わたしが、終わらせるよ」
クーリアが、いや、その場にいた全員が目を見開いた。可愛らしい鳴き声が聞こえたと思えば、先程まで荒れ狂っていたはずの蔦が全て地に落ちたのだから。
「リー、ヴォ?」
「ワンっ」
クーリアに呼ばれたリーヴォは、元気な鳴き声と共に一目散に彼女の元へと駆け寄った。
「なんで、ここに……」
クーリアが疑問の声をあげるが、当然ながらその疑問に答える声はない。
『そ、レ…なん、で…』
掠れた声で、精霊が呟く。その瞳には、悲しみ、怒り、嘆き、そして……懐かしさが浮かんでいた。
『もう、やめよう?』
「っ!?」
その時、突如として響いた、幼い声。
「リーヴォ、なの…?」
『そうだよ、主様』
リーヴォが精霊へと目線を向けながら、そう答える。
響いた幼い声は、リーヴォのものだったのだ。
『…ボクのせいなんだ。あの子が、こんな事を始めてしまったのは』
「…え?」
クーリアが詳しく聞こうとするが、その前に精霊の声が響いた。
『やっパり、そウ、だ…いキテタ、』
「生きて…まさか」
『…ごめん。ずっと待たせた』
その言葉が意味するのは…
『あるジ、サマ…』
精霊が、もう枯れきってしまったはずの涙を流し、地面へとへたり込む。そこへリーヴォが静かに歩み寄った。
『……ごめん。君を置いて、そしてこんなにも待たせてしまって』
『…イい、かえっテきてクレたかラ。でモ…ナんデ…』
『それは、君のおかげでもあるんだ』
『ぇ…?』
リーヴォがクーリアへと目線を向ける。
『君の力を、主様を通してもらった。だから、こうして君と話せるんだ』
リーヴォはクーリアから、精霊の欠片の力を受け取ることで、精霊獣としての変革を遂げていたのだ。
「だから、軽かったんだ…」
『実体はあってないようなものだから』
クーリアはやっと腑に落ちた。リーヴォの正体について。魔力を糧とする動物など、存在しないのだから。
『さぁ、終わらせよう』
『……そレは、むり、ダヨ……もウ、テオくれ』
「…っ!?」
『わたシは、堕ちテ、しまッタかラ…もウ、むり、だヨ…』
堕ちてしまった精霊は、もう戻ることは許されない。そして、その力もまた、制御することは出来ない。
魔の氾濫は、堕ちた精霊の憎悪に染まった魔力が引き起こしたもの。それを精霊自身がどうにかすることは出来なかったのだ。
「そんな……じゃあ、どうすれば……」
サラ達が絶望の表情を浮かべる中、クーリアだけは、ただ真っ直ぐと精霊を見つめていた。
「…大丈夫。わたしが、終わらせるよ」
0
お気に入りに追加
213
あなたにおすすめの小説
【本編完結】魔眼持ちの伯爵令嬢〜2度目のチャンスは好きにやる〜
ロシキ
ファンタジー
魔眼、それは人が魔法を使うために絶的に必要であるが、1万人の人間が居て1人か2人が得られれば良い方という貴重な物
そんな魔眼の最上級の強さの物を持った令嬢は、家族に魔眼を奪い取られ、挙句の果てに処刑台で処刑された
筈だった
※どこまで書ける分からないので、ひとまず長編予定ですが、区切りの良いところで終わる可能性あり
ローニャの年齢を5歳から12 歳に引き上げます。
突然の変更になり、申し訳ありません。
※1章(王国編)(1話〜47話)
※2章(対魔獣戦闘編)(48話〜82話)
※3章前編(『エンドシート学園』編)(83話〜111話)
※3章後編(『終わり』編)(112話〜145話)
※番外編『王国学園』編(1話〜)
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど
新婚初夜に浮気ですか、王太子殿下。これは報復しかありませんね。新妻の聖女は、王国を頂戴することにしました。
星ふくろう
ファンタジー
紅の美しい髪とエメラルドの瞳を持つ、太陽神アギトの聖女シェイラ。
彼女は、太陽神を信仰するクルード王国の王太子殿下と結婚式を迎えて幸せの絶頂だった。
新婚旅行に出る前夜に初夜を迎えるのが王国のしきたり。
大勢の前で、新婦は処女であることを証明しなければならない。
まあ、そんな恥ずかしいことも愛する夫の為なら我慢できた。
しかし!!!!
その最愛の男性、リクト王太子殿下はかつてからの二股相手、アルム公爵令嬢エリカと‥‥‥
あろうことか、新婚初夜の数時間前に夫婦の寝室で、ことに及んでいた。
それを親戚の叔父でもある、大司教猊下から聞かされたシェイラは嫉妬の炎を燃やすが、静かに決意する。
この王国を貰おう。
これはそんな波乱を描いた、たくましい聖女様のお話。
小説家になろうでも掲載しております。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…
三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった!
次の話(グレイ視点)にて完結になります。
お読みいただきありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる