上 下
127 / 138
最終章

121

しおりを挟む
 もう1人のクーリアのような少女は、蔦の柵の外からサラ達をその紅い・・瞳で静かに見つめていた。

『ソれはわたシノ』

 そう口にし腕を上げた瞬間、蔦がサラ達のほうへと襲いかかる。

「っ!《ファイヤーボール》!」

 いきなりのことに動揺しつつも、襲いかかってきた蔦をサラが焼き尽くした。
 そのまま柵の蔦も焼こうとしたが、新たに地面から現れた蔦がサラの魔法を薙ぎ払う。

『ムダ。にんゲンはヨワい』
「なら、貴方はどうなのよっ!」

 魔法が効かないならと、サラが魔導銃の引き金を引く。しかし、それもまた蔦に叩き落とされた。目には到底見えない速度で飛ぶ魔導弾を、だ。

「なっ!?」
『…ソノ武器、キらイ。うばッタ、わたシの…だカラ、ケス。ぜんぶ。邪魔、サセナイ』

 その言葉とともにサラ達の足元から蔦が突き出し、完全に身体を拘束する。
 必死で藻掻くが、更にキツく拘束されていく。
 さらに地面から現れた蔦は、ナターシャの腕の中で眠るクーリアへと伸び……




「《リジェクト》」

 砕け散った。

『……ふぅン。まダ、生キてた・・・・ンだ』
「勝手に殺さないでくれる?」

 未だ身動きが取れないナターシャの腕から、クーリアがするりと抜け出す。

「クー…」
「大丈夫だよ、サラ」

 クーリアが微笑み、サラ達に絡み付いた蔦に触れる。すると、蔦はまるでクーリアの意思に従うようにサラ達から離れ、地面へと消えていった。

「え……?」
「痛いところ、ない?」
「あ、うん…って、それわたしの台詞だから! クーは大丈夫なの!?」

 鬼気迫る表情を浮かべ、クーリアに詰め寄る。

「平気だよ、心配掛けてごめんね」
「ホントにそうよ! 全く貴方は……」

 クーリアの腕を掴みながら、サラが泣き崩れる。

『……ソレが、ソンなに大ジ?』
「当たり前でしょ! わたしの親友なんだから!」

 少女の言葉に対して、サラが涙目になりながら怒りの声を上げる。

『……気ニいラナイ。破ヘン・・・の癖に』
「破片……? どういうことなの?」

 サラがクーリアへと目線を向ける。だが、クーリアは少女を見つめるだけで何も答えない。

『もうイイ。モう、いらないカラ』

 その言葉と共に蔦がクーリア達へと襲いかかる。
 ……だが、

「戻って」

 クーリアがそう呟くだけで、蔦が地面へと戻っていく。その様子を見て、今まで無表情だった少女の顔に僅かな驚愕が浮かんだ。

「驚いた? 破片如きに力を使われて」
『……ワタしをコロすつもリ?』
「さぁ? でも、貴方が止まらないのなら、わたしはそれをするかもね」
『止まルツモりなんテない』

 クーリアの言葉に食い気味に答える。……まるで、それだけが生きる理由だとでも言うように。

「そう……なら、戦う殺し合うしかないみたいね」

 クーリアが、ホルスターから魔導銃を引き抜いた。




 







 

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

滅びた国の姫は元婚約者の幸せを願う

恋愛 / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:2,529

初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:1,048

気配消し令嬢の失敗

恋愛 / 完結 24h.ポイント:837pt お気に入り:6,123

悪役令嬢、釣りをする

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:143

処理中です...