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最終章

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「ん…」

 洞窟へと差し込む淡い陽の光が、クーリアを微睡みの中から引き戻した。もうそろそろ明け方のようだ。

「…大丈夫そうだね」

 洞窟の入口を見ながら、そう呟く。仕掛けた防御魔法に損傷した様子はなく、どうやら魔獣は来なかったようだ。
 クーリアはひとまず体を伸ばそうと立ち上がろうとしたが、……足が縺れ地面へと倒れ込んでしまう。

「痛っ…うぅ…」

 手をついて体を起こそうとするが、全身に力が入らない。

「…もうそろそろ、限界、かも」

 クーリアには、原因に心当たりがあった。
 魔力崩壊病は体を蝕む。それは、静かに、けれど着実に進行していたのだ。
 以前はね上げ扉を開けることが出来なかったのも、体がボロボロになり始めていたからだった。

「よい、しょっ…と」

 体を魔力で無理やり強化し、動かす。もう既にクーリアの体は限界だった。
 それでも、クーリアは諦めない。諦めたく、ない。

(…サラ達が諦めていないのに、わたしが諦める訳には、いかないもんね)

 転けた際に着いてしまった砂をはらい落とし、手を組んで上に向け、体を伸ばす。

「…待った方がいいのかな」

 クーリアはサラがあのまま帰ったとは到底思えなかった。おそらく、王都へ到着してからしっかりと準備を整えてこちらへ向かっているだろう、と。
 …流石友と呼ぶべきか。図星である。

「…いや、多分ここまで来れない」

 クーリアの現在いる場所は、森の奥。ここに生息する魔獣はより強力なものが多く、ここまで来るにはそれ相応の危険が伴う。
 サラ達の実力を信じていない訳では無いが、それでも難しいだろう。

「うーん…」

 首を捻る。入れ違いになればそれこそ最悪だ。かと言って、サラ達が危険を冒してまでこちらへと来るのを、のうのうと待つ気にはなれない。

 ぐぅー…

「…ご飯食べよ」

 何事も腹が減っては何もできない。とりあえず食事を取る事にする。
 硬いパン取り出し、齧る。1個で十分だ。

「…ん?」

 突然、クーリアが食べる手を止める。

「……声?」

 外から、何かの声が聞こえる。だが、サラ達の声ではない。それどころか…のようで。

「…魔獣の鳴き声…じゃないな」

 明確に言葉を発している。鳴き声とは思えない。
 そもそも、言葉を操る魔獣は存在しない。もし居たとすれば大発見である。

「…なに、この感覚…」

 クーリアには、その声が……自分を呼んでいる気がした。

「…怪しすぎるんだけど…なんだか、嫌な気はしない」

 クーリアは以前にも、この感覚を味わったことがある。銀狼が怪我をしていた時だ。その時は意思そのものであり言葉ではなかったが、聞こえた声は、その時の感覚にとてもよく似ている。

「…行ってみるか」

 もしあの銀狼のような存在ならば、クーリアの事を呼ぶ以上、何か助けを求めている可能性がある。行かない理由は無かった。

「…もしかしたら、がいるかもだし」

 それならば送って貰える。そう考え、クーリアは声の元へと向かうことにした。


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