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学園 高等部2年 校外実習編
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クーリアを試着させたその後何点か服を物色し、3人は店を後にした。
「ほんと綺麗で素敵な服ばかりだったわね」
「はい。一つ一つが丁寧で、どれも素晴らしかったです!」
量産品ではない、一つ一つ丹精込めて創られた服達。それは、他の追随を許さないほどの逸品であった。
「……高かったのに、本当にいいの?」
だからこそ、全てそれなりに値が張るものだった。
クーリアとしてはサラ達の言い分を聞いて気持ちは理解できたものの、やはり貰っていいものかと不安になっていたのだ。
「大丈夫よ。お金なら少し余裕あるし」
「わたしも少しくらいなら」
「……2人の少しが一体どれほどなのかを知りたいような知りたくないような……」
明らかに市民の感覚からはズレているだろう。貴族なのだから。
……無論クーリアも伯爵令嬢なので貴族なのだが、普段屋敷で過ごしていないので、感覚としては庶民よりだ。故に感覚のズレが生じてしまう。
「あなたは貰う側なのだから気にしなくていいのよ」
「…まぁそうかもしれないけど」
それでもやはり気が引けてしまう。
(…本当にクーは謙虚というか…それは美徳だけど、時に毒でもあることを分かっているのかしら…)
サラはクーリアの反応を見て、内心そう心配するのだった。
「…では。お気をつけて」
「はい。ありがとうございました」
ぺこりと村長に対してサラがお辞儀をする。本当はもう少しのんびりすることも出来たのだが、旅路に予定外は付き物。その為、今日出発することにしたのだ。
「後でクーちゃんの衣装見せてね?」
「…そんな見せびらかすようなものではないですけど」
「ボクも見たいー!」
「俺も見てみたい」
「……まずはナターシャさんに見せてからのほうが良いと思います」
男子二人の主張に対して、リーフィアがそう口にした。
「え、そんなに不味いの?」
「不味いというか…」
「危険なのよねぇ…」
「あー……なるほど。2人の言いたいことがよく分かったわ」
ナターシャも目が節穴ではない。服はまだ見ていないとしても、2人の反応から大体の予想が着くというものだ。
「はいはい。この話はお終いにして、そろそろ行くわよ」
「分かったよ。じゃあ出すぞ」
ヴィクターがそう言って馬車を進ませ始める。
馬車の中には行きよりも大小様々な箱が多く積み込まれており、それがぶつかり合い音が鳴った。
「多いわねぇ…」
「まぁ仕方ないのでは?」
この箱の中身は全て織物だ。本来はもう少し少なかったはずなのだが、ナターシャ達が村の周りを掃除してくれたお礼として、多めに積み込まれたのだ。
「……何だか嫌な予感がするわね」
「そういう事言わないでください」
クーリアがナターシャを睨む。言葉には力があるのだから…………
「ほんと綺麗で素敵な服ばかりだったわね」
「はい。一つ一つが丁寧で、どれも素晴らしかったです!」
量産品ではない、一つ一つ丹精込めて創られた服達。それは、他の追随を許さないほどの逸品であった。
「……高かったのに、本当にいいの?」
だからこそ、全てそれなりに値が張るものだった。
クーリアとしてはサラ達の言い分を聞いて気持ちは理解できたものの、やはり貰っていいものかと不安になっていたのだ。
「大丈夫よ。お金なら少し余裕あるし」
「わたしも少しくらいなら」
「……2人の少しが一体どれほどなのかを知りたいような知りたくないような……」
明らかに市民の感覚からはズレているだろう。貴族なのだから。
……無論クーリアも伯爵令嬢なので貴族なのだが、普段屋敷で過ごしていないので、感覚としては庶民よりだ。故に感覚のズレが生じてしまう。
「あなたは貰う側なのだから気にしなくていいのよ」
「…まぁそうかもしれないけど」
それでもやはり気が引けてしまう。
(…本当にクーは謙虚というか…それは美徳だけど、時に毒でもあることを分かっているのかしら…)
サラはクーリアの反応を見て、内心そう心配するのだった。
「…では。お気をつけて」
「はい。ありがとうございました」
ぺこりと村長に対してサラがお辞儀をする。本当はもう少しのんびりすることも出来たのだが、旅路に予定外は付き物。その為、今日出発することにしたのだ。
「後でクーちゃんの衣装見せてね?」
「…そんな見せびらかすようなものではないですけど」
「ボクも見たいー!」
「俺も見てみたい」
「……まずはナターシャさんに見せてからのほうが良いと思います」
男子二人の主張に対して、リーフィアがそう口にした。
「え、そんなに不味いの?」
「不味いというか…」
「危険なのよねぇ…」
「あー……なるほど。2人の言いたいことがよく分かったわ」
ナターシャも目が節穴ではない。服はまだ見ていないとしても、2人の反応から大体の予想が着くというものだ。
「はいはい。この話はお終いにして、そろそろ行くわよ」
「分かったよ。じゃあ出すぞ」
ヴィクターがそう言って馬車を進ませ始める。
馬車の中には行きよりも大小様々な箱が多く積み込まれており、それがぶつかり合い音が鳴った。
「多いわねぇ…」
「まぁ仕方ないのでは?」
この箱の中身は全て織物だ。本来はもう少し少なかったはずなのだが、ナターシャ達が村の周りを掃除してくれたお礼として、多めに積み込まれたのだ。
「……何だか嫌な予感がするわね」
「そういう事言わないでください」
クーリアがナターシャを睨む。言葉には力があるのだから…………
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