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学園 高等部1年 終
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女性について行った先にあったのは、この森に似つかわしくないほど美しい、銀色のガーデンハウスだった。
「ここは…」
「ここはわたしの、いえ、わたし達の憩いの場、みたいなものね」
「達…?」
「ええ」
するとガーデンハウスの近くの茂みが揺れだした。
クーリアは思わず身構えるが……現れた姿を見て、その構えを解いた。
「ガルル…」
茂みから現れたのは、あの銀狼であった。故にクーリアは構えを解いたのだ。
「達ってそういう…」
「そ。えっと…今はリーヴォだったわね」
「ワフッ!」
リーヴォが返事をするが、口になにかを咥えているようで、上手く返事が出来なかった。
「あ。持ってきてくれたの?」
「ワフッ!」
リーヴォが口に咥えていたのは、排出された薬莢だった。
「ありがと」
クーリアはそれをリーヴォから受け取り、観察した。
(…やっぱり魔導刻印はもう使えないか)
薬莢に施された魔導刻印は、熱によるものなのか、溶けて原型を留めていなかった。もうこれは使えないだろう。
「行ってくる?」
「アウ!」
元気よく返事をし、リーヴォは銀狼へと向かっていった。
銀狼は優しくリーヴォを迎え入れる。久しぶりの再会を喜んでいるのだろう。尻尾が少し揺れていた。
「ふふっ」
「可愛らしいわね…」
「はい。……ところで、あの魔獣ってどうすればいいと思いますか?」
クーリアが以前倒したことがある魔獣は小さく、それごと持ち帰ったのだが……今回はそうもいかない。だからクーリアは女性に相談した。
「素材に興味は?」
「ないです」
「なら、あのままでいいわ。他の魔獣の食料になるから」
「なるほど」
だからあの場から早く離れる必要があったのだ。魔獣が集まってきてしまうから。
「ところで…それって魔導銃?」
女性がクーリアの腰についた魔導銃を指さす。
「はい」
「どうしたの?」
「…貰いました。不本意ですが」
「そ、そう……」
クーリアの心底嫌そうな雰囲気に女性がたじろぐ。それだけ今のクーリアには、威圧感があったのだ。
「…ちょっと見せてもらえる?」
「え?いいですけど…」
不思議に思いながらも、クーリアが女性に魔導銃を手渡した。
「ありがとう。……魔力登録してあるのね」
「はい」
「なるほど…造りはそう変わらないけど…今のあなたにはちょっと無理があるかしら」
「え?」
「ここをみて」
女性が指さしたのは、グリップと銃身の間。あの石が埋め込まれている場所。
……そして、そこにちいさな亀裂が走っていた。
「これを使ったのは何回目?」
「さっきが初めてです…」
「となるともう1回は使えないわね…最悪暴発するわ」
「そう、ですか…」
クーリアの顔が青くなる。もし1回目で暴発していたらと思うと……冷や汗が伝う。
「…ちょっと貸してもらってもいい?直してみせるわ」
「え……直せるんですか?」
魔導銃の製法は秘匿されている。故に修理することが出来る者は限られるのだ。
「もちろん」
自信満々に女性が頷く。
「それにさっきみたいなことあるかもしれないからね。あったほうがいいでしょ?」
「…お願いします」
「任されたわ。まぁ明日には届けるわ」
「はい」
クーリアにとって、女性が自分の家を把握していても不思議はなかった。考えるだけ無駄だと思ったからだ。
転移魔法を使えるならば、場所さえ分かれば届けるのも容易い。なので返事に迷いはなかった。
「ここは…」
「ここはわたしの、いえ、わたし達の憩いの場、みたいなものね」
「達…?」
「ええ」
するとガーデンハウスの近くの茂みが揺れだした。
クーリアは思わず身構えるが……現れた姿を見て、その構えを解いた。
「ガルル…」
茂みから現れたのは、あの銀狼であった。故にクーリアは構えを解いたのだ。
「達ってそういう…」
「そ。えっと…今はリーヴォだったわね」
「ワフッ!」
リーヴォが返事をするが、口になにかを咥えているようで、上手く返事が出来なかった。
「あ。持ってきてくれたの?」
「ワフッ!」
リーヴォが口に咥えていたのは、排出された薬莢だった。
「ありがと」
クーリアはそれをリーヴォから受け取り、観察した。
(…やっぱり魔導刻印はもう使えないか)
薬莢に施された魔導刻印は、熱によるものなのか、溶けて原型を留めていなかった。もうこれは使えないだろう。
「行ってくる?」
「アウ!」
元気よく返事をし、リーヴォは銀狼へと向かっていった。
銀狼は優しくリーヴォを迎え入れる。久しぶりの再会を喜んでいるのだろう。尻尾が少し揺れていた。
「ふふっ」
「可愛らしいわね…」
「はい。……ところで、あの魔獣ってどうすればいいと思いますか?」
クーリアが以前倒したことがある魔獣は小さく、それごと持ち帰ったのだが……今回はそうもいかない。だからクーリアは女性に相談した。
「素材に興味は?」
「ないです」
「なら、あのままでいいわ。他の魔獣の食料になるから」
「なるほど」
だからあの場から早く離れる必要があったのだ。魔獣が集まってきてしまうから。
「ところで…それって魔導銃?」
女性がクーリアの腰についた魔導銃を指さす。
「はい」
「どうしたの?」
「…貰いました。不本意ですが」
「そ、そう……」
クーリアの心底嫌そうな雰囲気に女性がたじろぐ。それだけ今のクーリアには、威圧感があったのだ。
「…ちょっと見せてもらえる?」
「え?いいですけど…」
不思議に思いながらも、クーリアが女性に魔導銃を手渡した。
「ありがとう。……魔力登録してあるのね」
「はい」
「なるほど…造りはそう変わらないけど…今のあなたにはちょっと無理があるかしら」
「え?」
「ここをみて」
女性が指さしたのは、グリップと銃身の間。あの石が埋め込まれている場所。
……そして、そこにちいさな亀裂が走っていた。
「これを使ったのは何回目?」
「さっきが初めてです…」
「となるともう1回は使えないわね…最悪暴発するわ」
「そう、ですか…」
クーリアの顔が青くなる。もし1回目で暴発していたらと思うと……冷や汗が伝う。
「…ちょっと貸してもらってもいい?直してみせるわ」
「え……直せるんですか?」
魔導銃の製法は秘匿されている。故に修理することが出来る者は限られるのだ。
「もちろん」
自信満々に女性が頷く。
「それにさっきみたいなことあるかもしれないからね。あったほうがいいでしょ?」
「…お願いします」
「任されたわ。まぁ明日には届けるわ」
「はい」
クーリアにとって、女性が自分の家を把握していても不思議はなかった。考えるだけ無駄だと思ったからだ。
転移魔法を使えるならば、場所さえ分かれば届けるのも容易い。なので返事に迷いはなかった。
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