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学園 高等部1年 対抗戦編

28※

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 本に夢中になっているクーを見つめる。相変わらず可愛い……ってそうじゃない。
 確かにクーは可愛いんだけど、やっぱり似てないのよねぇ……

 緋色の騎士はよく知っている。だからこそ、クーとは似ていないと分かる。それを言うとクーがものすごく落ち込むから言わないけどさ。

「クー、クー?」

 呼びかけても全く反応しない。凄い集中力よね…

 わたしがクーに渡した無属性の魔法書。それは、クーに言うつもりもないけど、わたしが作らせたもの。
 そもそも数が少ないし、ほとんどボロボロだったからね。ちょうどよかった。

 クーが独学で無属性魔法を研究していることは知っているし、それがとても凄いことだとも知っている。
 だけど、本来の無属性がどんなものなのかを知るのは大切だ。それは全ての属性に言えること。そうしないと普通魔法は満足に使えない。

 ……目の前にそれが出来ちゃう子がいるけど。それはあくまで例外。
 
 クーがこの魔法書を読んだことで何を思い、何を得るのか、それがとても気になるけど……

「心配でもあるのよねぇ…」

 ただでさえクーの才能は計り知れない。しかもそれが基礎もできてないのに、だ。
 そこで基礎を知ったらどうなるのか…

「まぁ大丈夫よね」
「何が?」

 おっと。いつの間にかクーが本から目を離していたらしい。

「なんでもないよ。それより、もういいの?」
「うん、理解できた」

 それを聞いて、自分の顔が引き攣ってしまっているのが分かった。
 わたしでも1週間かけて理解したのに……まだ10分も経ってないのよ?

「ほんとに?」
「まぁ大まかに、だけど」
「?」

 クーにしては珍しい答え方だ。いつもなら全て理解したと言うのに。

「大まかでいいの?」
「良くはないんだけど……ママから、他の人の家で本を読む時は程々にしなさいって言われてるから」
「そ、そうなんだ…」

 確かに本を読んでいるときに話しかけても、クーには全く聞こえてないみたいだし。クーのお母さんはそれで他人に迷惑をかけないように、言い聞かせているんだろう。

「サラ様、クーリア様。食事の用意ができました」

 ちょうどいいタイミングね。

「分かったわ。じゃあいきましょうか」
「うん……これは?」

 クーが魔法書を持ち上げる。

「今日はここまでよ。また明日見せてあげるから」
「…分かった」

 渋々と言った様子でクーが魔法書を机に置く。もしかしたら一晩中読み耽るかもしれないからね、ここで止めておかないと。
 わたしはクーと一緒に書庫を後にした。
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