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学園 高等部1年 対抗戦編
16※
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私があの子に会ったのは初等部の時だった。
消極的で物静かで、いつも教室の端に座って本を読んでいた。周りはそれが当たり前だという風に接していた。というより、近寄ろうとしなかった。だからいつも1人で、その子もそれを気にしていないようだった。
…だけど、私には、あの子…クーリアの瞳が時折寂しそうな感情を宿していると思った。確信はなくて、でもどうしても話しかけなきゃって思った。
思い切って話しかけたら、クーリアは誰とも変わらない、普通の女の子だった。
ちょっと抜けてて、控えめに笑う。でも、私はその笑顔に魅せられた。
みんなはクーリアが無表情だと言っていたけど、そんなのは嘘だった。ちょっと分かりにくいかもしれないけれど、同じように笑い、同じように泣く。2つの微妙に色が違う瞳に見つめられると、つい守りたくなる。不思議な子だった。
クーリアはいつも授業中眠っていた。何度怒られても懲りなくて、時には私も叱ったりした。
……でも、それでも眠っていた。これには私もイラついた。
「なんで真面目にやらないのよ!!」
ついそう怒鳴ってしまった。クーリアはしばらく唖然としていたけど、すぐにいつもの表情にもどった。
「えっとね……だってそう見えるようにしてるんだもん」
「え?」
私はクーリアが何を言ったのか分からなかった。
「私が白ってことは知ってるよね?」
「それは…うん」
「ふふっ。正直に言ってくれてありがとう」
まるで自身を嘲笑するような笑みを浮かべた。
「だからね、私は目立っちゃいけないんだよ」
「…どういうこと? 」
「誰だって白になんか負けたくないって思うでしょ?だから、私が勝っちゃうと何かと面倒なの」
そう言って窓の外を見つめる。表情は分からなかったけど、それがクーリアの本心でないということは分かった。ちゃんと真面目にやりたいけど、出来ない。周りがそれを許さない。
「そんなことって…」
「だから…こんな風にしか出来ない私だから、別に離れてもいいんだよ?」
その言葉は私の心にとても深く突き刺さった。今までクーリアが1人でいた理由が分かったから。
本当は1人でいたくない。そんな気持ちがひしひしと伝わった。
「……いやだ」
「え?」
「そんなの、悲しすぎる!私は何がなんでもクーリアのそばにいる!だから、だから…!」
そんな悲しそうな顔をしないで欲しい。
私はそれからよりずっと一緒にいるようにした。陰口を言うやつは徹底的に叩き潰した。
「そこまでしなくても…」
クーリアはいつも申し訳無さそうだった。
直接はなにもしてこないんだから、別に気にしなくていいと。
私もそうは思った。だけど、クーリアと共にいるにつれて、その陰口がどれだけ精神に響くのかを身に染みて理解した。
どんな力よりも、言葉のほうがより鋭利な武器となる。
「よくクーリアは耐えたね…」
「まぁ慣れかな。そもそも父親に比べたら全然だし」
「父親…?家族からもやられてたの?」
私はとても驚いた。だっていつも母親や兄妹の話をするクーリアは、とても楽しそうだったから。
「父親からだけ。今は会ってないから、されてないよ」
「そうなの?」
「うん」
その会話の後、正直に言うと、私はその父親のことを調べあげた。無論クーリアには内緒で。
「こんな奴が…」
そしたら出るわ出るわ不正の証拠。だけど、これはお父様の仕事。あれからその男がどうなったのかは知らない。多分…もういないかも。
そんなことをクーリアに話すつもりはないけどね。
「ねぇ、サラ?」
「なぁに?」
「……なにした?」
でもやっぱりクーリアにはバレてしまった。おかしいなぁ?完璧に私が関わったっていうのは隠蔽したんだけど…
「貴方が何者なのか、それは言わないけど、あまり他人のことに首を突っ込まないほうがいいよ?」
「そう言うってことはもう分かってるんだ?」
驚いた。まさかそんなに早く気付かれてるなんて…
「…はぁ。まぁ私の1番の秘密は気付いてないか…」
「え?なにそれ?」
「教えなーい」
それから何度も追求したけど、クーリアは教えてくれなかった。まだ信頼が足りないから教えてくれないのかな?だったら、いつか話してくれるようになったらいいな……
消極的で物静かで、いつも教室の端に座って本を読んでいた。周りはそれが当たり前だという風に接していた。というより、近寄ろうとしなかった。だからいつも1人で、その子もそれを気にしていないようだった。
…だけど、私には、あの子…クーリアの瞳が時折寂しそうな感情を宿していると思った。確信はなくて、でもどうしても話しかけなきゃって思った。
思い切って話しかけたら、クーリアは誰とも変わらない、普通の女の子だった。
ちょっと抜けてて、控えめに笑う。でも、私はその笑顔に魅せられた。
みんなはクーリアが無表情だと言っていたけど、そんなのは嘘だった。ちょっと分かりにくいかもしれないけれど、同じように笑い、同じように泣く。2つの微妙に色が違う瞳に見つめられると、つい守りたくなる。不思議な子だった。
クーリアはいつも授業中眠っていた。何度怒られても懲りなくて、時には私も叱ったりした。
……でも、それでも眠っていた。これには私もイラついた。
「なんで真面目にやらないのよ!!」
ついそう怒鳴ってしまった。クーリアはしばらく唖然としていたけど、すぐにいつもの表情にもどった。
「えっとね……だってそう見えるようにしてるんだもん」
「え?」
私はクーリアが何を言ったのか分からなかった。
「私が白ってことは知ってるよね?」
「それは…うん」
「ふふっ。正直に言ってくれてありがとう」
まるで自身を嘲笑するような笑みを浮かべた。
「だからね、私は目立っちゃいけないんだよ」
「…どういうこと? 」
「誰だって白になんか負けたくないって思うでしょ?だから、私が勝っちゃうと何かと面倒なの」
そう言って窓の外を見つめる。表情は分からなかったけど、それがクーリアの本心でないということは分かった。ちゃんと真面目にやりたいけど、出来ない。周りがそれを許さない。
「そんなことって…」
「だから…こんな風にしか出来ない私だから、別に離れてもいいんだよ?」
その言葉は私の心にとても深く突き刺さった。今までクーリアが1人でいた理由が分かったから。
本当は1人でいたくない。そんな気持ちがひしひしと伝わった。
「……いやだ」
「え?」
「そんなの、悲しすぎる!私は何がなんでもクーリアのそばにいる!だから、だから…!」
そんな悲しそうな顔をしないで欲しい。
私はそれからよりずっと一緒にいるようにした。陰口を言うやつは徹底的に叩き潰した。
「そこまでしなくても…」
クーリアはいつも申し訳無さそうだった。
直接はなにもしてこないんだから、別に気にしなくていいと。
私もそうは思った。だけど、クーリアと共にいるにつれて、その陰口がどれだけ精神に響くのかを身に染みて理解した。
どんな力よりも、言葉のほうがより鋭利な武器となる。
「よくクーリアは耐えたね…」
「まぁ慣れかな。そもそも父親に比べたら全然だし」
「父親…?家族からもやられてたの?」
私はとても驚いた。だっていつも母親や兄妹の話をするクーリアは、とても楽しそうだったから。
「父親からだけ。今は会ってないから、されてないよ」
「そうなの?」
「うん」
その会話の後、正直に言うと、私はその父親のことを調べあげた。無論クーリアには内緒で。
「こんな奴が…」
そしたら出るわ出るわ不正の証拠。だけど、これはお父様の仕事。あれからその男がどうなったのかは知らない。多分…もういないかも。
そんなことをクーリアに話すつもりはないけどね。
「ねぇ、サラ?」
「なぁに?」
「……なにした?」
でもやっぱりクーリアにはバレてしまった。おかしいなぁ?完璧に私が関わったっていうのは隠蔽したんだけど…
「貴方が何者なのか、それは言わないけど、あまり他人のことに首を突っ込まないほうがいいよ?」
「そう言うってことはもう分かってるんだ?」
驚いた。まさかそんなに早く気付かれてるなんて…
「…はぁ。まぁ私の1番の秘密は気付いてないか…」
「え?なにそれ?」
「教えなーい」
それから何度も追求したけど、クーリアは教えてくれなかった。まだ信頼が足りないから教えてくれないのかな?だったら、いつか話してくれるようになったらいいな……
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