上 下
144 / 159
最終章 決戦

第143話 無限の壁

しおりを挟む
 身を隠したことで攻撃が止んだということは、……索敵は視覚にだけ頼っているのかもしれない。
 ……でも、その視覚が何処にあるのかが分からない。前の敵と同じなら、何処かに眼があるはず。けれど、先程攻撃してきた時も眼らしきものは見えなかった。

「…ガルマ」
『…すまぬ、主』

 名前を呼んだ瞬間、ガルマから謝罪の言葉が聞こえた。

『どうやら邪魔されているようだ。出られない』
「…そっか。分かった」

 まさか翡翠に続きガルマまで姿を出せないとはね……ガルマに先行してもらって弱点を探そうと思っていたけれど、それは無理そうだ。

「…考えてる暇は無さそうだね。はぁ…」

 突然世界地図ワールドマップに増えた敵の反応。その正体は……パラサイ・カラモス。それも一体ではなく…三体。そのどれもがあの木の付近にいきなり現れた。

「…待てば不利になるのはこっちのほうか」

 パラサイ・カラモスが突然現れたことから、おそらくあの木は親玉で確定。だとすると、まだまだ出てくる可能性がある。
 一体であれだけ厄介だったんだから、集まられたらどれほど大変か分かったもんじゃない。

「…まてよ?視覚に頼っているのなら…」

 私は光学迷彩を展開する。その後気配隠蔽も展開し、壁から出る。

「げっ」

 壁から出た瞬間、ギョロっとした瞳と目を合わせてしまい、思わず声が出てしまった…幸い、気付かれた様子はない。ほっ…

 どうやら私の予想は当たっていた様で、パラサイ・カラモスが襲ってくる様子もこちらに気付く様子もない。
 ……じゃあさっきまでの私の苦労は一体…。

 まぁ気付かなかった私が悪いし、過ぎたことは仕方ないので割り切る。とりあえずいつ襲われても対処出来るよう準備し、木の元へと向かった。

「……うわぁ」

 またしても思わず声が出てしまった…けれど、仕方ないと思う。だって…木の枝に丸い実のようなものがぶら下がっていて、それが地面に落ちるとうにょうにょと触手を生やし、あっという間に見覚えのある姿へと変化したんだから。
 どうやってパラサイ・カラモスが増えていたのかは判明したけど、肝心のどうやって止めるべきかが全く分からない。

(……ひとまず攻撃してみるか)

 光学迷彩は私に触れているもの全てに働く。なので、無論手に持っている翡翠も同様に相手には見えなくなっている。
 その翡翠を普通に真正面からオレンジ色の眼へと突き刺す。

 キシャァァァァ!!

 カラモスが断末魔のような鳴き声を上げながら燃え尽きていく。

(おっと)

 その様子を見てなのか、親玉が枝を私が悪い倒したカラモスの周りに叩きつけ始めた。
 ……この行動で分かることは、それなりの知能があるということだ。そうでなければ、見えない敵を攻撃するなんてことはしない。そもそも、知能が高く無ければ、見えない敵の存在自体をのだから。

 空歩を使いながらその場を離脱すると、親玉の攻撃が止んだ後に他のカラモス達がその場へと集まり、胴体ごとその大きな眼を動かして何かを探すような仕草をする。おそらく、何かしらの痕跡を探しているのだろう。
 ……となると、このカラモス達は親玉の命令を聞いて行動することができるようだ。一斉に同じ行動をしたという点から推測できる。

(…こいつらを倒しても、また増えるだけ)

 倒すべきは親玉のみ。

(…距離は、いけるか)

 聖火の矢を数十本創り出し、木の幹の周りを囲む。
 すると危険を察知したのか、枝が動き矢を弾き落とそうとしてきた。けれど、そう簡単には弾かせない。

「いけっ!」

 第一、第二と同じだけの矢を創り出し、それぞれがバラバラの場所を狙う。さすがにこれは捌ききれないはず……

「………嘘でしょ」

 捌ききれないと木が判断した後の行動は、とても素早かった。
 まるで枝を繭のようにして壁を作り出し、それで全ての聖火の矢を受け止めたのだ。
 聖火の矢の貫通性能はあまり高くない。燃やすことが本質だからだ。その為、枝の層を撃ち抜けない。

 枝は何層にも重なり、燃えたところから切り離されていく。まるで自動修復型の要塞だ。

(…魔力は、まだある。けど…)

 このままではジリ貧だ。

(……いや、寧ろこれはチャンスかもしれない)

 木が防御に徹しているのならば、こちらに攻撃はこない。しかも、本体に眼があるのなら今の状況では周囲の把握が出来ないはずだ。

 とりあえず残っていたカラモス達を聖火の矢を使って燃やして倒す。もしかしたら、感覚共有などで視界を共有できる可能性があったから。

「さて」

 私は木の眼が本体にあるのかを確かめるため、わざと光学迷彩を解除する。
 ……すると、本体を覆っていた枝の一部が動き、いきなり私へと襲いかかってきた。



しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...