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第3章 王都 学園中等部生活編
第63話 久しぶりの依頼その弐
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冒険者ギルドを後にして、門に向かう前に、寄っておきたい所があった。
「あ!あのおじさんの店?」
そう、あのドワーフのおじさんの店だ。理由としては、ベル、そしてシリルの武器の新調だ。私にはロビンから貰った剣があるし、翡翠もいるからね。
「おじさんの店ってなんだ?」
「そういえばシリルは行ったことなかったね。シリルの今使ってる武器とかを用意してくれた人の店だよ」
そう、シリルの武器は私が全部用意した。まぁ言われたくないけど、一応師匠なので、それくらいはしてあげないとね。
...そういえば、シリルはあの店に入れるのかな?
そんな心配をしながら店に到着した。
「シリル、どう?」
「どうって?」
「なんか弾かれる感じとかする?」
「いや、そんなんはないぞ?」
ほ...とりあえず認められたみたいだね。扉を開け、中に足を踏み入れると、
「ハッハッハ!いらっしゃい」
久しぶりに聞く笑い声が聞こえ、ドワーフのおじさん...マルコムさんが出てきた。
「お久しぶりです。今日はこの2人の武器を新調しようと思って」
「ハッハッハ!どれ...うむ。なかなか使い込んでおるの。確かに新調が必要じゃな...ちょっと待っとれ」
そう言って奥に消えていった。
「なあ、ほんとに信用できるのか?」
「大丈夫。私が保証するよ」
シリルが心配そうに聞いてきた。確かに一見するとちょっと悪そうなおじさんにしか見えないものね。
「ハッハッハ!ほれ、これはどうじゃ?」
いつの間にか戻ってきたマルコムさんが、カウンターに剣と盾、弓を並べた。早速鑑定。
ミスリルの剣:ミスリルを用いて造られた剣。魔力伝導に優れる。
ガランウッドの盾:魔力を流すと硬化する特殊金属を用いて造られた盾。見た目は木そのもの。軽さに優れる。
ミスリル合金の弓:ミスリルの合金で造られた弓。弦はミスリルの糸。魔力伝導に優れ、矢に属性を付与しやすい。魔力を流すことでしなやかさが増加、矢の飛距離が伸びる。
お、おう...結構な代物だね...
「...大丈夫かな?」
私の心配はお金や品質ではなく、2人がこの武器を使いこなせるかということだ。
「ハッハッハ!大丈夫だ。この俺が保証するよ」
武器のことを1番理解しているマルコムさんが言うなら大丈夫なのかな?
「うーん...じゃあとりあえず、2人とも持ってみて?」
持ってみることで、自分に合ってるかとか、使いやすさとかが分かるからね。
「おー!なんかよくわかんねぇけど、しっくりくる!」
「私もー!」
どうやらあっているらしい。
「じゃあこれをお願いします。いくらですか?」
「ハッハッハ!そうだな、金貨10枚だな」
「またそんなに安く...」
恐らく、金貨50枚ほどはするはずだ。
「ハッハッハ!常連だからの。サービスじゃ」
この人はこういったら聞かないので、ありがくその値段で買わせて貰おう。
「はい、金貨10枚ね」
「うむ。確かに。またの」
「うん、またよろしく」
そう言って私たちは店を後にした。
「なぁ師匠。ほんとによかったのか?」
「いいの。半端な武器使って、怪我して欲しくないしね」
「ありがと!フィリアちゃん!でも、フィリアちゃんはいいの?」
「私は剣は使うけど、主に魔法だしね」
それに武器はこれ以上ないものを持っているしね。買う必要はない。
そうこうしていると、門に着いた。
「お、昨日の嬢ちゃんじゃないか」
門番の人は、昨日私が帰ってきたときの人だった。
「今日はちゃんと余裕をもって帰ってこいよ」
「分かってます」
「それならばよし。じゃ、気をつけていけよ」
「はい」
そんな会話をして、街の外へ。
「いつもの森だよね?」
「そうだけど...どうしたの?」
「じゃあそこまで競走しよ!」
なんかベルがとてもいい笑顔でそう言うので、競走することに。
「ちょ!ま、待ってくれ!俺が2人についていけるか?!」
「じゃ、スタート!」
「無視かよ!?」
うん、シリル。頑張れ。魔力量は多いんだから身体強化でなんとか行けるでしょ!
...私は全力でやったら多分地面が抉れるから、十分気をつけてやる。
◇◆◇◆◇◆◇◆
1位は私でした。まぁステータスの速さが桁違いなので、当然といえば当然なんだけどね。
「うぅぅぅ...やっぱりフィリアちゃんに勝てないー!」
ベルはそう言うけど、だいぶ接戦だったりする。私は手加減してたけど、それでもついてこれたのは凄いと思う。
「ぜぇぜぇ...2人ともはぇよ...」
シリルはダントツで最下位。魔力はあるんだけど、その扱いに慣れてないというか...そのせいで身体強化が上手く出来てないんだよね。そこも特訓しとかないとね。
「シリル、今からオークの討伐だけど...いける?」
「む、むり...ちょっと休ませて...」
ということなので、少し休憩することに。時間的にもお昼なので、アイテムボックスから昼食のサンドイッチを取り出した。
「美味しー!」
ベルはそう言ってパクパク食べていく。よく飽きないねぇ...まぁ私もこのサンドイッチは好きなんだけどね。セバスチャンさんからはレシピを教えて貰ってるから、また今度自分で作ってみようかな。
「よし、休憩終了!シリル、いくよ!」
「お、鬼だ...」
「じゃあ後で特訓メニュー...」
「はい!行きます!だからそれだけはやめてください!」
お、おう...そんなにキツいメニューじゃないんだけどなぁー。ただ走り回るだけのメニューだし...ま、魔法で走りのじゃまはするけどね。
「さて、今日の索敵は...」
「じゃあ私がやる!」
実はこのパーティでやる時は、索敵担当を毎回決めているのだ。今回はベルが担当だね。
「うーん...あっち、200メートル先くらいかな」
うん、正解。ベルの索敵もだんだん精度が上がっているね。ベルが見つけたのは、オークの集団。数にして10体。依頼の倍だけど、問題はないね。
「じゃあまずベルが弓で先制。その後私とシリルで突撃。ベルはそのフォローね」
「「分かった」!」
作戦が大方決まったので、オークに近づく。
そして配置が整ったら、ベルが弓で一体のオークの頭を貫く。
「いくよ!」
「おう!」
それと同時に突撃。私はロビンから貰ったほうの剣を取り出した。
ブモォォォォォ!!
私たちのことを見つけたオークが襲いかかる。私たちの目的は撹乱。ベルの所にオークを行かせないことだ。
「シリル!」
「おう!」
シリルが盾でオークの持つ棍棒の攻撃を受け止め、その隙に私がオークの足を斬る。
ブビィィィィィ!!
体制が崩れ、倒れ込むオークの頭をシリルが突き刺し、とどめを刺す。
「どう?調子は?」
「むっちゃ使いやすい!」
どうやら大丈夫なようだ。そう話している間にも、オークは襲いかかってくる。
「1人でいける?」
「もちろんだ!」
私はシリルと二手に分かれて、オークの相手をすることに。さっそくシリルとは別方向に駆け出す。すると五体のオークが付いてきた。
「じゃあちょっと試させてもらおうかな」
私は剣をしまって、鉄刀を取り出した。
「...刀術・多重戦・幻想乱舞」
武闘スキルは、今のところ刀用しか練習してない。剣と刀は、似て非なる武器らしく、刀の武闘スキルは剣では使えないらしい。だから刀を使うためにシリルと別れたかった訳。まぁ別にバレても問題はないだろうけど、念の為に、ね。
「お!なかなか...」
翡翠と1対1で特訓してたから、このスキルの真価を発揮することが出来なかったけど、やってみると結構使えるね。攻撃と防御を両立できるんだから。まぁ防御といっても、躱すだけなんだけどね。
「ふぅ...終わったね」
気づいたらオークは全て倒れていた。翡翠のように一刀で首を斬ることは出来なかったけど、なかなか上手く使えたっぽいね。
「さてと、シリルは...怪我したか」
オークは全て倒したみたいだけど、どうやら盾を持つ方の腕をやったらしい。
私はオークと刀を仕舞い、シリルの元に急いだ。
「シリル!大丈夫?」
「あ、ああ...なんとかな」
「...見せて」
シリルの腕は完璧に折れていた。前世では手術が必要なほどの骨折だ。たが、この世界には魔法がある。例え腕を失っても治すことができるほどだ。
「全く...こんな無茶して」
「無茶なんて...!」
「認めないといつか...死ぬよ」
「...っ!」
そう、自分の怪我の程度ぐらいは理解しとかないと、いつか死ぬ。これは脅しなんかじゃない。過信ほど恐ろしいものはないのだ。
「はぁ...まぁこれくらいなら治せるからいいけど」
「...すまねぇ」
治癒魔法でシリルの腕を治す。
......でも、
「いってぇ!ちょっと!待ってくれ!」
「待たない。無理した罰」
治癒魔法は、本来治すときに生じる痛みを無くす効果がある。だけど、その効果を無くすこともできるのだ。
...つまり、ものすごく痛い。
「ちょっと...フィリアちゃん、それはさすがに...」
「...じゃあ今度シリルが無茶して、死んだら?」
「それは...」
「可能性がないとは言えない。むしろ可能性は高い。私は...そんなことで死んでほしくない」
そう言うと、ベルも黙ってしまった。
この世界は魔物、そして盗賊という存在がいる。そのため、命はとても軽い。いつ死んでもおかしくは無いのだ。
「...はい、おしまい」
「すっげぇ痛かった...」
まぁ骨が無理やり戻されるからね。
「じゃあ帰ろっか」
「...うん」
「おう...」
オークを収納して、森を抜ける。道中は行きとは打って変わってとても静かだった。
今回の依頼、色々と改善するところが見つかった。
まずベル。ベルはその天真爛漫というか、天然で、そこがまぁ良かったりするのだけど、そのせいで物事を重要視していない。怪我くらい大したことないっていう考えが、楽観的過ぎるのだ。
シリルは無茶を普通にする。今まで一緒に行動していたから、そのことに気づけなかった。今回二手に分かれて行動したのは正解だったかも。今後相手と自分の力量差を見極めることが必要になってくるね。
門をくぐり、ギルドへ向かう。あれから2人とも黙ったままだ。
ギルドに着き、受付へ向かった。
「おや、おかえり...どうしたんだい?」
「色々とあってね...これ、討伐証明ね」
討伐証明とは、討伐した魔物の1部だったり、魔石だったりする。今回は右耳だった。
「ああ、確かに。じゃあギルドカードだしな」
「はい。あ、あとオーク本体の納品もあるんですけど」
「ならあの扉を抜けたとこで出しな。ほれ、ギルドカードを返すよ」
「はい、ありがとうございます」
ギルドカードを受け取り、言われた扉の先でオークを出した。
「おー!嬢ちゃん。いい腕してるな!」
解体担当の人がそう言ってくれたけど、私としてはまだまだかな。いつか翡翠みたいに一刀で斬りたい...。
「じゃあ行こっか」
「うん...」
「おう...」
2人とも落ち込んでるね...でも、これは2人の問題。私が言うのではなく、自分でどうしたらいいのか、答えを出さないといけない。
その後シリルと別れ、屋敷に戻った。ベルはリーナに心配されてたけど、私が説明すると納得していた。
「確かにそれは問題よね...フィリアちゃんはそのことを指摘したのね」
「うん。私と常に一緒に行動できるかは分からないからね」
「そうね。死んでしまったらそこで終わりだものね」
私は死んだことにされてるけど...ま、それはちょっと違うか。
私はそのままご飯を食べ、お風呂に入った。
...その時、お風呂にベルが入ってきた。
「あ!あのおじさんの店?」
そう、あのドワーフのおじさんの店だ。理由としては、ベル、そしてシリルの武器の新調だ。私にはロビンから貰った剣があるし、翡翠もいるからね。
「おじさんの店ってなんだ?」
「そういえばシリルは行ったことなかったね。シリルの今使ってる武器とかを用意してくれた人の店だよ」
そう、シリルの武器は私が全部用意した。まぁ言われたくないけど、一応師匠なので、それくらいはしてあげないとね。
...そういえば、シリルはあの店に入れるのかな?
そんな心配をしながら店に到着した。
「シリル、どう?」
「どうって?」
「なんか弾かれる感じとかする?」
「いや、そんなんはないぞ?」
ほ...とりあえず認められたみたいだね。扉を開け、中に足を踏み入れると、
「ハッハッハ!いらっしゃい」
久しぶりに聞く笑い声が聞こえ、ドワーフのおじさん...マルコムさんが出てきた。
「お久しぶりです。今日はこの2人の武器を新調しようと思って」
「ハッハッハ!どれ...うむ。なかなか使い込んでおるの。確かに新調が必要じゃな...ちょっと待っとれ」
そう言って奥に消えていった。
「なあ、ほんとに信用できるのか?」
「大丈夫。私が保証するよ」
シリルが心配そうに聞いてきた。確かに一見するとちょっと悪そうなおじさんにしか見えないものね。
「ハッハッハ!ほれ、これはどうじゃ?」
いつの間にか戻ってきたマルコムさんが、カウンターに剣と盾、弓を並べた。早速鑑定。
ミスリルの剣:ミスリルを用いて造られた剣。魔力伝導に優れる。
ガランウッドの盾:魔力を流すと硬化する特殊金属を用いて造られた盾。見た目は木そのもの。軽さに優れる。
ミスリル合金の弓:ミスリルの合金で造られた弓。弦はミスリルの糸。魔力伝導に優れ、矢に属性を付与しやすい。魔力を流すことでしなやかさが増加、矢の飛距離が伸びる。
お、おう...結構な代物だね...
「...大丈夫かな?」
私の心配はお金や品質ではなく、2人がこの武器を使いこなせるかということだ。
「ハッハッハ!大丈夫だ。この俺が保証するよ」
武器のことを1番理解しているマルコムさんが言うなら大丈夫なのかな?
「うーん...じゃあとりあえず、2人とも持ってみて?」
持ってみることで、自分に合ってるかとか、使いやすさとかが分かるからね。
「おー!なんかよくわかんねぇけど、しっくりくる!」
「私もー!」
どうやらあっているらしい。
「じゃあこれをお願いします。いくらですか?」
「ハッハッハ!そうだな、金貨10枚だな」
「またそんなに安く...」
恐らく、金貨50枚ほどはするはずだ。
「ハッハッハ!常連だからの。サービスじゃ」
この人はこういったら聞かないので、ありがくその値段で買わせて貰おう。
「はい、金貨10枚ね」
「うむ。確かに。またの」
「うん、またよろしく」
そう言って私たちは店を後にした。
「なぁ師匠。ほんとによかったのか?」
「いいの。半端な武器使って、怪我して欲しくないしね」
「ありがと!フィリアちゃん!でも、フィリアちゃんはいいの?」
「私は剣は使うけど、主に魔法だしね」
それに武器はこれ以上ないものを持っているしね。買う必要はない。
そうこうしていると、門に着いた。
「お、昨日の嬢ちゃんじゃないか」
門番の人は、昨日私が帰ってきたときの人だった。
「今日はちゃんと余裕をもって帰ってこいよ」
「分かってます」
「それならばよし。じゃ、気をつけていけよ」
「はい」
そんな会話をして、街の外へ。
「いつもの森だよね?」
「そうだけど...どうしたの?」
「じゃあそこまで競走しよ!」
なんかベルがとてもいい笑顔でそう言うので、競走することに。
「ちょ!ま、待ってくれ!俺が2人についていけるか?!」
「じゃ、スタート!」
「無視かよ!?」
うん、シリル。頑張れ。魔力量は多いんだから身体強化でなんとか行けるでしょ!
...私は全力でやったら多分地面が抉れるから、十分気をつけてやる。
◇◆◇◆◇◆◇◆
1位は私でした。まぁステータスの速さが桁違いなので、当然といえば当然なんだけどね。
「うぅぅぅ...やっぱりフィリアちゃんに勝てないー!」
ベルはそう言うけど、だいぶ接戦だったりする。私は手加減してたけど、それでもついてこれたのは凄いと思う。
「ぜぇぜぇ...2人ともはぇよ...」
シリルはダントツで最下位。魔力はあるんだけど、その扱いに慣れてないというか...そのせいで身体強化が上手く出来てないんだよね。そこも特訓しとかないとね。
「シリル、今からオークの討伐だけど...いける?」
「む、むり...ちょっと休ませて...」
ということなので、少し休憩することに。時間的にもお昼なので、アイテムボックスから昼食のサンドイッチを取り出した。
「美味しー!」
ベルはそう言ってパクパク食べていく。よく飽きないねぇ...まぁ私もこのサンドイッチは好きなんだけどね。セバスチャンさんからはレシピを教えて貰ってるから、また今度自分で作ってみようかな。
「よし、休憩終了!シリル、いくよ!」
「お、鬼だ...」
「じゃあ後で特訓メニュー...」
「はい!行きます!だからそれだけはやめてください!」
お、おう...そんなにキツいメニューじゃないんだけどなぁー。ただ走り回るだけのメニューだし...ま、魔法で走りのじゃまはするけどね。
「さて、今日の索敵は...」
「じゃあ私がやる!」
実はこのパーティでやる時は、索敵担当を毎回決めているのだ。今回はベルが担当だね。
「うーん...あっち、200メートル先くらいかな」
うん、正解。ベルの索敵もだんだん精度が上がっているね。ベルが見つけたのは、オークの集団。数にして10体。依頼の倍だけど、問題はないね。
「じゃあまずベルが弓で先制。その後私とシリルで突撃。ベルはそのフォローね」
「「分かった」!」
作戦が大方決まったので、オークに近づく。
そして配置が整ったら、ベルが弓で一体のオークの頭を貫く。
「いくよ!」
「おう!」
それと同時に突撃。私はロビンから貰ったほうの剣を取り出した。
ブモォォォォォ!!
私たちのことを見つけたオークが襲いかかる。私たちの目的は撹乱。ベルの所にオークを行かせないことだ。
「シリル!」
「おう!」
シリルが盾でオークの持つ棍棒の攻撃を受け止め、その隙に私がオークの足を斬る。
ブビィィィィィ!!
体制が崩れ、倒れ込むオークの頭をシリルが突き刺し、とどめを刺す。
「どう?調子は?」
「むっちゃ使いやすい!」
どうやら大丈夫なようだ。そう話している間にも、オークは襲いかかってくる。
「1人でいける?」
「もちろんだ!」
私はシリルと二手に分かれて、オークの相手をすることに。さっそくシリルとは別方向に駆け出す。すると五体のオークが付いてきた。
「じゃあちょっと試させてもらおうかな」
私は剣をしまって、鉄刀を取り出した。
「...刀術・多重戦・幻想乱舞」
武闘スキルは、今のところ刀用しか練習してない。剣と刀は、似て非なる武器らしく、刀の武闘スキルは剣では使えないらしい。だから刀を使うためにシリルと別れたかった訳。まぁ別にバレても問題はないだろうけど、念の為に、ね。
「お!なかなか...」
翡翠と1対1で特訓してたから、このスキルの真価を発揮することが出来なかったけど、やってみると結構使えるね。攻撃と防御を両立できるんだから。まぁ防御といっても、躱すだけなんだけどね。
「ふぅ...終わったね」
気づいたらオークは全て倒れていた。翡翠のように一刀で首を斬ることは出来なかったけど、なかなか上手く使えたっぽいね。
「さてと、シリルは...怪我したか」
オークは全て倒したみたいだけど、どうやら盾を持つ方の腕をやったらしい。
私はオークと刀を仕舞い、シリルの元に急いだ。
「シリル!大丈夫?」
「あ、ああ...なんとかな」
「...見せて」
シリルの腕は完璧に折れていた。前世では手術が必要なほどの骨折だ。たが、この世界には魔法がある。例え腕を失っても治すことができるほどだ。
「全く...こんな無茶して」
「無茶なんて...!」
「認めないといつか...死ぬよ」
「...っ!」
そう、自分の怪我の程度ぐらいは理解しとかないと、いつか死ぬ。これは脅しなんかじゃない。過信ほど恐ろしいものはないのだ。
「はぁ...まぁこれくらいなら治せるからいいけど」
「...すまねぇ」
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......でも、
「いってぇ!ちょっと!待ってくれ!」
「待たない。無理した罰」
治癒魔法は、本来治すときに生じる痛みを無くす効果がある。だけど、その効果を無くすこともできるのだ。
...つまり、ものすごく痛い。
「ちょっと...フィリアちゃん、それはさすがに...」
「...じゃあ今度シリルが無茶して、死んだら?」
「それは...」
「可能性がないとは言えない。むしろ可能性は高い。私は...そんなことで死んでほしくない」
そう言うと、ベルも黙ってしまった。
この世界は魔物、そして盗賊という存在がいる。そのため、命はとても軽い。いつ死んでもおかしくは無いのだ。
「...はい、おしまい」
「すっげぇ痛かった...」
まぁ骨が無理やり戻されるからね。
「じゃあ帰ろっか」
「...うん」
「おう...」
オークを収納して、森を抜ける。道中は行きとは打って変わってとても静かだった。
今回の依頼、色々と改善するところが見つかった。
まずベル。ベルはその天真爛漫というか、天然で、そこがまぁ良かったりするのだけど、そのせいで物事を重要視していない。怪我くらい大したことないっていう考えが、楽観的過ぎるのだ。
シリルは無茶を普通にする。今まで一緒に行動していたから、そのことに気づけなかった。今回二手に分かれて行動したのは正解だったかも。今後相手と自分の力量差を見極めることが必要になってくるね。
門をくぐり、ギルドへ向かう。あれから2人とも黙ったままだ。
ギルドに着き、受付へ向かった。
「おや、おかえり...どうしたんだい?」
「色々とあってね...これ、討伐証明ね」
討伐証明とは、討伐した魔物の1部だったり、魔石だったりする。今回は右耳だった。
「ああ、確かに。じゃあギルドカードだしな」
「はい。あ、あとオーク本体の納品もあるんですけど」
「ならあの扉を抜けたとこで出しな。ほれ、ギルドカードを返すよ」
「はい、ありがとうございます」
ギルドカードを受け取り、言われた扉の先でオークを出した。
「おー!嬢ちゃん。いい腕してるな!」
解体担当の人がそう言ってくれたけど、私としてはまだまだかな。いつか翡翠みたいに一刀で斬りたい...。
「じゃあ行こっか」
「うん...」
「おう...」
2人とも落ち込んでるね...でも、これは2人の問題。私が言うのではなく、自分でどうしたらいいのか、答えを出さないといけない。
その後シリルと別れ、屋敷に戻った。ベルはリーナに心配されてたけど、私が説明すると納得していた。
「確かにそれは問題よね...フィリアちゃんはそのことを指摘したのね」
「うん。私と常に一緒に行動できるかは分からないからね」
「そうね。死んでしまったらそこで終わりだものね」
私は死んだことにされてるけど...ま、それはちょっと違うか。
私はそのままご飯を食べ、お風呂に入った。
...その時、お風呂にベルが入ってきた。
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