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第3章 王都 学園中等部生活編

第58話 食堂でのお話

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目を開けると、そこは見た事のある景色が広がっていた。

「...ここは?」
「ここはシュラーク学園よ」

ほんとにきちゃったよ...

「で?伝手っていうのはなに?」

おっと、目的を忘れるところだった。

「あのね、いっぷく亭って店知ってる?」
「あー、なんか最近人気の店ね」

あ、知ってたんだ。

「そこにまずは行きたいの」
「分かったわ。えっと確かこっちよ」

リーナに手を引かれて学園を後にする。なんか昨日までいたのに久しぶりな感じがするなぁ...

「着いたわよ」

どうやら着いたらしい。そんなに歩いてないけどなぁ...ま、いっか。
お店はちょうどお昼時なのか混み始めていた。

「混んでるけど...どうするの?」
「うーん...とりあえず入ろ?お腹空いたし」
「それが目的じゃないわよね?」
「もちろん」

リーナを説得して、お店に入る。予想通り席はだいぶ埋まっていた。

「いらっしゃいませー!」

あ、オグリさんだ。さすがに今はまずいかな。とりあえず2人席に座って、注文をする。

「私は日替わり定食にする。リーナは?」
「私も同じでいいわ」

という訳で注文する。オグリさんじゃなかったけど、まぁ大丈夫。

「ちょっとトイレ行ってくる」

そう言って私は席を離れ、少し気配を隠蔽してオグリさんに近づく。

「あのぉー...オグリさん」
「うん?あ、フィリアちゃん。どうしたんだい?」
「ユーリに会いたいんですけど...」
「今かい?」
「はい」

そう言うとオグリさんはすこし考える仕草をした。

「うーん...ここじゃまずいから、前の部屋に行っといてくれる?すぐ呼ぶから」
「分かりました」

私は言われた通り2階の前来た部屋に向かった。ソファに座って、5分もしない内にドアが開いて、ユーリが入ってきた。

「おまたせ!ごめんね、いま立て込んでて」
「ううん、こっちこそごめんね、忙しいのに」
「全然大丈夫...とは言い難いから、とりあえず話してくれる?」
「分かった」

私は自分が魔力内包症であること、治すには王宮の魔道具...神器を使わないといけないことを話した。

「うーん...」
「無理...かな?」
「いや、無理じゃないと思う」

じゃあなんで悩んでるんだろうか?

「...実はね、その神器を使わないといけない事情が出てきてね?今魔力を込めてるところなの」

なるほど...つまりもうだいぶ溜まってしまっているわけか。

「でも、その事情ってなに?」
「なんか、森の1部が吹き飛んでて、その修復のためだって」

...それって私がやったやつじゃない?

「...その森って?」
「確かここから北東にある森だよ」

まじかぁ...ビンゴだわ。

「...ごめん」
「うん?なんで謝るの?」
「その森...直接的には私じゃないんだけど、間接的には私がやっちゃったんだよね」
「え?!」

うん、驚くよね、普通。

「なんで?いや、ちょっと、え?」

混乱してるねぇ...

「ていうか、その神器の効果って?」
「あ、それはね、農作物...つまり、植物の成長促進の効果だよ」

だから森の修復か。

「で、その神器使えるかな?」
「うーん...いま溜めてるとこだし、使い終わったら込められると思う」
「どれくらいかかる?」
「1週間かな」

長くない?!  

「それ、私も手伝えないかな?」
「あ!そっか、別に空っぽじゃなくてもいいもんね...うん!聞いてみるね」
「ありがとう!返事はどれくらいかかる?」
「すぐだよ?」

すぐ?!

「え、どういうこと?」
「念話だよ?親子ならかなり遠くても使えるの」

あ、念話か...すっかりそんなもんあるって忘れてたよ。ていうか親子でそういう効果があったんだね。

「あ、きた。大丈夫だって」
「ほんと?!ありがとう!」
「どういたしまして。あ、私も一緒に行くね」
「分かった。何時がいいかな?」
「ひとまず、いまの混み具合が解消してからかな」

となると、お昼すぎくらいかな?

「じゃあそれくらいになったらまたくるね」
「別にそれまでいていいよ?」

いやいや...

「お店に迷惑でしょ?」
「大丈夫だって!オーナーである私が言うんだから!」

わー、強引。ま、そっちの方が有難いかな?

「分かった。じゃあ下で食べて待ってる」
「うん!またね!」

そう言ってバタバタと部屋から出ていった。私も行かないとね。
下に降りて、リーナのとこに向かう。もう既に食事は来ていて、どうやら私のことを待っていてくれたらしい。

「ごめんね」
「大丈夫よ。さ、冷めないうちに食べましょ」
「うん。あ、話は付いたよ」
「は?!ちょっと、いつの間に...」
「いただきまーす!」

うーん、美味しい。今日はチキン南蛮定食だった。リーナがぎゃいのぎゃいの言ってるけど、気にしない、気にしない。

「気にしなさいよ!」

えー...まぁちゃんと話さないとね。

「えっとね、後で案内する人がくるから、それまでこのお店で待っててだって」
「ちょっと突っ込みたいこといっぱいあるけど、ひとまず神器は使えるのね?」
「うん、そのはず」
「はぁ...いつの間にそんな伝手ができたのよ...」

校外学習初日です!とは言わない。

ゆっくりと味わって定食を食べ終わって、そのままユーリを待つ。まだお客さんは多いけど、最初の時よりも少なくなってきてるし、もうちょっとかな。

「待っている間にこれはどうだい?」

そう言ってオグリさんが持ってきたのは...なんとパフェだった。

「え!いいんですか?」
「試作品だから、感想が欲しいんだってさ」
「じゃあ遠慮なく!」

私はパフェにスプーンを刺して、口に運んだ。

「んー!美味しい!」

バニラアイスに多分イチゴのジャムかな?がかかってて、下にはさらにチョコのアイスまであって、ほんとに美味しい!これが試作品なんて信じられない!

「あら、本当に美味しいわ。冷たくて甘くて、こんなの食べたことないわ」

リーナもご満悦だね。でも、確かにこの世界には甘味があんまりないんだよね。そう考えると、これは売れるかも。

「良かった。そろそろかな」

そう言ってオグリさんはお店を見回して、そのまま奥に消えていった。パフェを食べている間にだいぶ人は少なくなっていたみたい。
そして奥からユーリが走ってきた。

「おまたせ!じゃあ行こっか」
「うん、よろしくね」
「え?ちょっとフィリアちゃん?この子は?」

まぁなんも言ってないから、そういう反応になるよね。

「フィリアちゃん、この人は?」

...こっちにも説明してなかったわ。

「えっと、リーナ...カトリーナだよ」
「カトリーナって、あの六大英雄の?」
「そうそう」

たまに忘れそうになるけどね。

「あ、そうなんだ」

なんか軽いな。まぁ王女だし、そういうことには慣れてるのかな?

「改めて、カトリーナよ。あなたは?」
「あ、そうでした。初めまして、ユリーシャって言います。ユーリって呼んでください」

ファミリーネームは言わないのね。後でバレるとは思うけど。

「ユーリちゃんね。ユーリちゃんが案内してくれるの?」
「はい!ではついてきてください!」

ユーリが店を出ていったので、お金を払ってその後をついて行く。ちなみにパフェは無料だって。
歩きで王宮まで行くのかと思ったら、馬車が用意されていたみたい。真っ黒のなにも描かれていない、馬のいない小さな馬車...うん?馬のいない?

「これ、魔導馬車じゃない!」

どうやら魔導馬車というらしい。リーナが驚いているあたり、かなり珍しいのかな?自動車みたいな感じ?

「はい、そうですよ。はやく乗ってくださーい!」
「う、うん」

とりあえず乗り込んだ。中は2人がけのソファが向かい合わせになっていて、見かけによらず広かった。

「すごーい...」
「ふふふっ。お返しだよ!」

お返し?

「なんのこと?」
「私のことをで驚かせたでしょ?だからフィリアちゃんのことを驚かそうと思って」

あれって多分、森を吹き飛ばしたことかな...。

「じゃ、しゅぱーつ!」

ユーリがそう言うと、ひとりでに魔導馬車が動き出した。

「運転する人はいないの?」
「うん。魔導馬車っていうのは魔石で動く自動車みたいなもので、この魔導馬車は自動運転だと思えばいいよ」

思えばいいってことは、多分ちょっと違うんだろうね。だけど理解できる気がしないので、聞かないでおく。

「ちょっとまって?!勝手に動く魔導馬車なんて聞いたことないんだけど?!」

おっと、どうやら自動で動く魔導馬車は一般的では無いらしい。

「当たり前ですよ。なんたってこれは試作型の魔導馬車なんですから」

...つまりそんなに数がないってこと?

「そんな貴重なの、良かったの?」
「そんな大層なものじゃないよ。だから大丈夫!」

なんかユーリの大丈夫が当てにならないような気が...ま、いっか!

「あ、着いたよ」

色々ユーリと話していたら、もう着いたらしい。馬車から出ると、真っ黒でまさに魔王がいそうな城が佇んでいた。

あ、リーナはというと、あれからブツブツなにかを言っていて、自分の世界に入っちゃってる。

「おーい。リーナ?」
「は!ここは?」
「王城です!」
「...え?」

うん、いきなりそう言われても困るよね...
 
「え?ユリーシャちゃんって一体何者...?」
「あ、言ってなかったですね。この国の第2王女です!」
「...は?!」

またまたリーナがフリーズした。ユーリにいたっては、してやったりというニヤニヤした顔になっている。

「ひとまず、ユーリ。案内してくれる?」
「うん!こっちだよ!」

ユーリの案内で、城の中を進む。リーナはしばらくフリーズしてたけど、私たちが歩き出すと、しっかりと付いてきた。









...今更だけど、魔王に今から会うんだよね...大丈夫かな?









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