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第二十七章 一夜の出来事
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危うく敵の計略にはまりそうになっていたことに気づき、しばし言葉を失うロードラント兵たち。
だが、そこから一転、彼らの間に激しい怒りの炎が燃え広がるまでに、そう時間はかからなかった。
「コンちくしょうっ! イーザの野郎ども!」
「俺たちをよりによってこの歌を使うなんて許せねえ!」
「ちょっと待ってろよ。今お返ししてやるからんな!」
もうかなりの深夜、しかも戦い続けて誰もがヘトヘトなはず。
なのに憤った兵士たちは疲れも忘れ、口々に怒鳴りながら一斉に弓や投石用の石を手に取り、『ルミナス』の光を浴びて慌てるイーザ兵に向かって再び攻撃を開始したのだ。
天から降り注ぐ矢と石つぶて――
この怒りに任せた突然の反撃は、歌をうたうがために無防備になっていたイーザ軍に、少なからない損害を与えた。
包囲網の一部は、矢と石の雨あられで、ちょうどブロックくずしのブロックが壊れるようにざっくり削られ、イーザ軍の陣は目に見えて大きく乱れた。
そしてその混乱ぶりは、後方に控えていた無数の化け物軍にダイレクトに伝播し、今まで比較的上手くいっていた二つの軍団の連携は、あっけなく崩壊してしまった。
やはりしょせんは烏合の衆。
城攻めどころではなくなった万を超える敵の軍勢は、その体制を立て直すことを余儀なくされ、一時的に後退を始めたのだった。
「おい見ろよ、やつら後ろに下がってくぜ!」
「やったやった!」
「ったく、ざまぁみやがれ!」
城壁の上からはやし立てるロードラント兵の歓声を聞きながら、僕はようやく一息ついた。
もしこちらに余力あるのなら、今こそ城から追撃の兵を出すべきかもしれないが、この状況では到底無理な相談だ。
それよりも、敵の攻撃が再開するまで全員ゆっくり休むべきだろう。
「いいぞ、みんな。よく目を覚ましてくれた」
アリスも安心したのか、落ち着いた口調で兵士たちに向かって言った。
罠にかかりそうになったみんなを咎めることはしない。
それから――
アリスが目の前で来て、いきなり僕の腕を取り、瞳を真っ直ぐ見つめる。
「ユウト、またしてもやってくれたな!」
「いいえ、今までと同じくたいしたことはしてません、本当に……」
現実世界から来たのだから、こんな四面楚歌もどきの計略、分かって当たり前なのだ。
「いや、そんなことはない。戦いが始まって以来、お前に助けられたのはこれで一体何回目だろう? しかし、私はお前に何の礼もしていないな……」
アリスはそうつぶやくと、いきなり僕の体を引き寄せきゅっと抱きしめた。
アリスの銀の胸当てが固くて冷たかったけれど、それでも、感極まったアリスの体の熱はしっかり伝わってくる。
「おおー」
「おいおい」
「大胆だねえ」
その光景を目の当たりにし、兵士たちがざわざわと騒ぎ出す。
たぶん――いや、確かにアリスのこの抱擁は、主君が臣下に示す親愛の情以上の想いが込められているように見られてしまうかもしれない。
下手すりゃ、僕だけえこひいきされていると思われても仕方ないだろう。
と、そんな心配を僕は一瞬したのだが、しかし兵士たちの反応は意外にも好意的だった。
「いいぞいいぞ!」
「ユウト、やるじゃねえか!」
「案外お似合いのカップルかもしれないな、これは――」
まわりから飛んでくる冷やかしの言葉に、僕は思わず顔を赤らめた。
が、アリスはそんなことお構いなしだ。
僕の体を強く抱きしめたまま、一向に離れようとしない。
だが、そこから一転、彼らの間に激しい怒りの炎が燃え広がるまでに、そう時間はかからなかった。
「コンちくしょうっ! イーザの野郎ども!」
「俺たちをよりによってこの歌を使うなんて許せねえ!」
「ちょっと待ってろよ。今お返ししてやるからんな!」
もうかなりの深夜、しかも戦い続けて誰もがヘトヘトなはず。
なのに憤った兵士たちは疲れも忘れ、口々に怒鳴りながら一斉に弓や投石用の石を手に取り、『ルミナス』の光を浴びて慌てるイーザ兵に向かって再び攻撃を開始したのだ。
天から降り注ぐ矢と石つぶて――
この怒りに任せた突然の反撃は、歌をうたうがために無防備になっていたイーザ軍に、少なからない損害を与えた。
包囲網の一部は、矢と石の雨あられで、ちょうどブロックくずしのブロックが壊れるようにざっくり削られ、イーザ軍の陣は目に見えて大きく乱れた。
そしてその混乱ぶりは、後方に控えていた無数の化け物軍にダイレクトに伝播し、今まで比較的上手くいっていた二つの軍団の連携は、あっけなく崩壊してしまった。
やはりしょせんは烏合の衆。
城攻めどころではなくなった万を超える敵の軍勢は、その体制を立て直すことを余儀なくされ、一時的に後退を始めたのだった。
「おい見ろよ、やつら後ろに下がってくぜ!」
「やったやった!」
「ったく、ざまぁみやがれ!」
城壁の上からはやし立てるロードラント兵の歓声を聞きながら、僕はようやく一息ついた。
もしこちらに余力あるのなら、今こそ城から追撃の兵を出すべきかもしれないが、この状況では到底無理な相談だ。
それよりも、敵の攻撃が再開するまで全員ゆっくり休むべきだろう。
「いいぞ、みんな。よく目を覚ましてくれた」
アリスも安心したのか、落ち着いた口調で兵士たちに向かって言った。
罠にかかりそうになったみんなを咎めることはしない。
それから――
アリスが目の前で来て、いきなり僕の腕を取り、瞳を真っ直ぐ見つめる。
「ユウト、またしてもやってくれたな!」
「いいえ、今までと同じくたいしたことはしてません、本当に……」
現実世界から来たのだから、こんな四面楚歌もどきの計略、分かって当たり前なのだ。
「いや、そんなことはない。戦いが始まって以来、お前に助けられたのはこれで一体何回目だろう? しかし、私はお前に何の礼もしていないな……」
アリスはそうつぶやくと、いきなり僕の体を引き寄せきゅっと抱きしめた。
アリスの銀の胸当てが固くて冷たかったけれど、それでも、感極まったアリスの体の熱はしっかり伝わってくる。
「おおー」
「おいおい」
「大胆だねえ」
その光景を目の当たりにし、兵士たちがざわざわと騒ぎ出す。
たぶん――いや、確かにアリスのこの抱擁は、主君が臣下に示す親愛の情以上の想いが込められているように見られてしまうかもしれない。
下手すりゃ、僕だけえこひいきされていると思われても仕方ないだろう。
と、そんな心配を僕は一瞬したのだが、しかし兵士たちの反応は意外にも好意的だった。
「いいぞいいぞ!」
「ユウト、やるじゃねえか!」
「案外お似合いのカップルかもしれないな、これは――」
まわりから飛んでくる冷やかしの言葉に、僕は思わず顔を赤らめた。
が、アリスはそんなことお構いなしだ。
僕の体を強く抱きしめたまま、一向に離れようとしない。
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