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第二十六章 デュロワの包囲戦

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 とりあえずここまでは作戦通り。
 後はクロードの元へセフィーゼを導いてやるだけ。
 なのだが、ここへ来て一つどうしても気になることがあった。

 それは、暴走するセフィーゼを、クロードがいったいどんな魔法を使ってつかまえるかというもっとも重要な点だ。
 クロードが得意とするのは僕と同じく白魔法で、用心怠らないセフィーゼにはまず通用しないだろう。
 殺してしまう覚悟で力で抑え込むならともかく、今のセフィーゼを傷つけずに捕えることなど、到底不可能なことのように思えるのだ。

 とはいえ、他に有効な作戦を思い浮かぶわけでもない。
 僕は不安をぬぐえないまま走りに走って、クロードが先回りしているデュロワ城別館と城壁の間にある芝生地に着いた。
 この先は行き止まりでどこにも逃げ道はない。けれど――

 あ、あれ!?
 アリスがいる。

 そこで待っているのは、てっきりクロードだけかと思っていたが、アリスとマティアスの二人がセフィーゼを待ち構えるように、突き当りの壁の前に堂々と並んで立っていたのだ。

 どうせアリスが我がまま言ってクロードについてきたのだろうけど、よりによってこんな危険な袋小路に……。
 セフィーゼと戦って、もしアリスの身に何かあったらどうするんだ!?

「ユウト君、ご苦労さまです。どうやらうまくいったようですね」

 ところがクロードはそんなこと気に留める様子もなく、僕に優しく声をかけてきた。
 すぐそこまで殺気をみなぎらせたセフィーゼが迫っているというのに、えらい余裕だ。

「あの、そんなことよりっ!」
 僕はたまらず叫んだ。
「今のセフィーゼは、触るものすべてを傷つけかねない危険な状態です。いくらなんでも、アリス様は安全な場所におられた方がよいかと――」
 
「何を言う、ユウト!」
 が、案の定、アリスは即刻僕の忠告を却下したのだった。
「私もロードラントの旗手として、セフィーゼと一度は剣を交えた間柄。最後までキチンと決着を見届ける権利と義務がある!」
 
 またしても頑固モードに入ってしまったアリス。
 横にいるマティアスも完全に諦めたのか、ゲッソリとした顔をして何も言わない。
 今さらもう逃がす時間はないか――
 と、ため息をついていると、背後から弾むような声が聞こえた。
 
「ああ――アリス!! アリス王女じゃない!!!」

 振り向くとそこには、小躍りして叫ぶセフィーゼがいた。
 まさかいきなりアリスが出てくるとは、セフィーゼも予想だにしていなかったのだろう。
 満面の笑みを浮かべ喜んでいる。

「このお城に隠れているのは知ってたけれど、ユウトと雁首がんくび揃えて私の前に現れるなんてくれるなんて!! なんて、なんておバカさんなの!!」
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