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第二十五章 兄弟と兄妹

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「……確かにグリモの言うとおりやもしれぬ」
 アリスは納得したようにつぶやいて、三歩ほど身を引いた。
「すまぬなユウト。嬉しさのあまり頭に血が上り、つい先走りすぎたようだ」

「いえ、滅相もないです」
 僕はほっとして答えた。 

 ミュゼットもアリスが僕から離れたのを見て、急に我に返ったらしい。
 燃え上がらせていた嫉妬のオーラが、一気に消えた。

 そんなミュゼットに、すかさず男爵が声をかける。

「ちょっとミュゼット、ここはもういいから、アンタはおネエさんたちを手伝ってきなさい。きっと人手が足りなくててんてこ舞いよ」

「はーい。失礼しまーす」

 ミュゼットはこれ以上アリスと僕の間に何も起きないと思ったのだろう、二つ返事で城主の間を出ていった。

 やれやれ。
 一瞬どうなることかと思ったが、さすがは酸いも甘いも噛み分けたグリモ男爵。
 すべてを丸く収めてくれた。

 と、そこで――

 タイミングを見計らって、城主の座の脇に控えていたクロード、ティルフアの兄妹が僕の前に来た。

 戦いが小休止しているせいか、兄のクロードは僕と同じようなズボンとシャツの貴族の平服姿。
 一方、病み上がりの妹のティルファは白い地味なドレス姿だ。

 二人ともかなりの美男美女であることは、改めて確認するまでもない。
 でも、なぜかとっても変な感じがする。

 僕はしばし考えこんで、すぐにその違和感の正体に気が付いた。

 そうか――!

 クロードとティルファは血のつながった兄妹のはずなのに、まったくそう見えない。
 むしろ、腕を組み肩を寄せ合って
ベッタリする二人は、まるでラブラブなカップルのよう――というか、そのものなのだ。 

 一体全体なんなんだろう、この兄妹は……。

 
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