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第二十五章 兄弟と兄妹
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リナがさらわれてしまった事実は、アリスの耳にも当然届いているはず。
無断でリナを連れて戦場に戻り、挙句の果てに彼女を守ることができなかった僕に、アリスはどれだけ激怒したか……。
いや、僕が責められるだけならまだいい。
本当に困るのは、アリスが自分でリナを探しに行くなんて無茶を言い出すことだ。
そうなると、ますます誰の手も負えなくなる。
――いずれにせよ早くリナの無事を確かめなくては。
僕はテーブルの上の皮袋からスマホを取り出し、電源を入れた。
心配だったバッテリーの用量はまだ65%。
ずいぶん電池もちのいいスマホだ。
『マップ!』
早速魔法を唱えると、スマホの画面に地図が映し出された。
地図の中心にはちゃんとデュロワ城が正確に表示されている。
が、周囲にリナの印は見当たらない。
なので、僕は指を動かしスマホの地図をどんどん拡大していった。
すると――
見つけた!!
デュロワ城から南西およそ7キロの森の中。
青く点滅するリナの印が!!
光が赤くなっていない、ということは今のところリナは安全な状態。
魔女ヒルダにイタズラされないよう、約束通りシャノンがリナを守っているのかもしれない。
しかし、それでもまだ完全に安心はできなかった。
そこで僕は画面上からいったん地図を消し、清家《せいけ》セリカの顔のアイコンをタッチした。
現実世界から異世界のすべてを観察しているであろうセリカに、リナの無事を確かめるのだ。
1回、2回――
コールが始まってからすぐに現実世界との通信回路が繋がった。
スマホの画面いっぱいに、セリカの美しく冷たい顔が映し出される。
「あらユウト君、ずいぶん久しぶりね」
ずっと見ていたくせに、セリカは白々しいセリフを吐いた。
底意地が悪いというか、どうにも扱いにくい女の子だ。
「ずいぶん久しぶりって、僕が戦場に戻る前に話したばかりでしょ? それに清家さんは僕のことだけじゃなくて、こちらの世界で起こっている出来事を全部見ているんじゃないの?」
「ええ、そうね。正直言って、何もかもが面白いことばかりで一瞬たりとも目が離せないわ。さっきの美少女男の娘異世界ハーレムも中々の壮観だったし」
「……からかうのはやめてくれよ」
「照れなくてもいいじゃない。――それで、今はヒロインがさらわれちゃって、いよいよ物語は佳境に入ったってところかしら?」
思った通り。
おそらくセリカはリナの行方も、今どういう状態かも、すべてを把握しているのだ。
無断でリナを連れて戦場に戻り、挙句の果てに彼女を守ることができなかった僕に、アリスはどれだけ激怒したか……。
いや、僕が責められるだけならまだいい。
本当に困るのは、アリスが自分でリナを探しに行くなんて無茶を言い出すことだ。
そうなると、ますます誰の手も負えなくなる。
――いずれにせよ早くリナの無事を確かめなくては。
僕はテーブルの上の皮袋からスマホを取り出し、電源を入れた。
心配だったバッテリーの用量はまだ65%。
ずいぶん電池もちのいいスマホだ。
『マップ!』
早速魔法を唱えると、スマホの画面に地図が映し出された。
地図の中心にはちゃんとデュロワ城が正確に表示されている。
が、周囲にリナの印は見当たらない。
なので、僕は指を動かしスマホの地図をどんどん拡大していった。
すると――
見つけた!!
デュロワ城から南西およそ7キロの森の中。
青く点滅するリナの印が!!
光が赤くなっていない、ということは今のところリナは安全な状態。
魔女ヒルダにイタズラされないよう、約束通りシャノンがリナを守っているのかもしれない。
しかし、それでもまだ完全に安心はできなかった。
そこで僕は画面上からいったん地図を消し、清家《せいけ》セリカの顔のアイコンをタッチした。
現実世界から異世界のすべてを観察しているであろうセリカに、リナの無事を確かめるのだ。
1回、2回――
コールが始まってからすぐに現実世界との通信回路が繋がった。
スマホの画面いっぱいに、セリカの美しく冷たい顔が映し出される。
「あらユウト君、ずいぶん久しぶりね」
ずっと見ていたくせに、セリカは白々しいセリフを吐いた。
底意地が悪いというか、どうにも扱いにくい女の子だ。
「ずいぶん久しぶりって、僕が戦場に戻る前に話したばかりでしょ? それに清家さんは僕のことだけじゃなくて、こちらの世界で起こっている出来事を全部見ているんじゃないの?」
「ええ、そうね。正直言って、何もかもが面白いことばかりで一瞬たりとも目が離せないわ。さっきの美少女男の娘異世界ハーレムも中々の壮観だったし」
「……からかうのはやめてくれよ」
「照れなくてもいいじゃない。――それで、今はヒロインがさらわれちゃって、いよいよ物語は佳境に入ったってところかしら?」
思った通り。
おそらくセリカはリナの行方も、今どういう状態かも、すべてを把握しているのだ。
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