382 / 505
第二十五章 兄弟と兄妹
(9)
しおりを挟む
ロゼットの鶴の一声によって、リゼットとミュゼットは瞬時に黙ってしまった。
二人とも基本的に気は強そうだけれど、若い身空で兄弟の親代わりを務めたロゼットにはやっぱり頭が上がらないのだろう。
急に静かになった部屋の中。
ロゼットは軽く咳払いをし、僕に大きめのグラスに入った水を差し出してくれた。
「ユウト様、まずはこれで喉をお潤しください」
やっと水が飲める!
僕はコップを受けとり、一気に飲み干した。
ああ……。
冷たくて最高にうまい。
ちょっぴり気取った表現をしてみれば、ただの水なのにどんな美酒よりも美味しい、と言ったところだ。
いや、お酒なんてビールを一口舐めたことがあるくらいだけれど――
「ロゼットさん、ありがとうございます。本当に美味しかったです」
と、僕はロゼットにグラスを返した。
「なんだか生き返った気分です」
「あの、ユウト様……」
グラスをお盆に載せたロゼットが、何か言いたげにモジモジしている。
いつもテキパキしている完璧メイドさんにしては珍しい。
「はい、なんでしょうか?」
「リゼットとミュゼットの会話を少し聞いてしまったのですが――」
ロゼットの端整な顔に、ポッと赤みが差す。
「その……あの……私も、ユウト様のお相手をするのはやぶさかではありませんわ」
「え……!?」
お相手って……?
まさか……そっち系の話?
「ユウト様がそれでお喜びいただけるなら、お客様をおもてなしするメイドとしても本望なのです。――あ、誤解しないでくださいませ。私も決して仕事だからということではなく、むしろユウト様とそういうご縁を結ぶことができればこの上なく嬉しい――かと、存じます」
「待って待って!」
ミュゼットが我慢しきれず叫んだ。
「まさかロゼット姉さまもユウ兄ちゃんを狙ってたの?」
「これはサプライズですねぇ」
と、リゼットも小首をかしげる。
「メイド業一筋、オトコにまったく興味のなかったあのロゼット姉さまが……」
「二人とも落ち着きなさい。もちろんすべてはでユウト様のご意志によります。でも――」
ロゼットが恥ずかしそうにつぶやく。
「この間の朝、ユウト様は私にこのメイド服を脱げとご命じされたので……当然ユウト様はその先のこともお望みなのかと……」
うわーっぁぁ!
そういえばそうだった!!
二人とも基本的に気は強そうだけれど、若い身空で兄弟の親代わりを務めたロゼットにはやっぱり頭が上がらないのだろう。
急に静かになった部屋の中。
ロゼットは軽く咳払いをし、僕に大きめのグラスに入った水を差し出してくれた。
「ユウト様、まずはこれで喉をお潤しください」
やっと水が飲める!
僕はコップを受けとり、一気に飲み干した。
ああ……。
冷たくて最高にうまい。
ちょっぴり気取った表現をしてみれば、ただの水なのにどんな美酒よりも美味しい、と言ったところだ。
いや、お酒なんてビールを一口舐めたことがあるくらいだけれど――
「ロゼットさん、ありがとうございます。本当に美味しかったです」
と、僕はロゼットにグラスを返した。
「なんだか生き返った気分です」
「あの、ユウト様……」
グラスをお盆に載せたロゼットが、何か言いたげにモジモジしている。
いつもテキパキしている完璧メイドさんにしては珍しい。
「はい、なんでしょうか?」
「リゼットとミュゼットの会話を少し聞いてしまったのですが――」
ロゼットの端整な顔に、ポッと赤みが差す。
「その……あの……私も、ユウト様のお相手をするのはやぶさかではありませんわ」
「え……!?」
お相手って……?
まさか……そっち系の話?
「ユウト様がそれでお喜びいただけるなら、お客様をおもてなしするメイドとしても本望なのです。――あ、誤解しないでくださいませ。私も決して仕事だからということではなく、むしろユウト様とそういうご縁を結ぶことができればこの上なく嬉しい――かと、存じます」
「待って待って!」
ミュゼットが我慢しきれず叫んだ。
「まさかロゼット姉さまもユウ兄ちゃんを狙ってたの?」
「これはサプライズですねぇ」
と、リゼットも小首をかしげる。
「メイド業一筋、オトコにまったく興味のなかったあのロゼット姉さまが……」
「二人とも落ち着きなさい。もちろんすべてはでユウト様のご意志によります。でも――」
ロゼットが恥ずかしそうにつぶやく。
「この間の朝、ユウト様は私にこのメイド服を脱げとご命じされたので……当然ユウト様はその先のこともお望みなのかと……」
うわーっぁぁ!
そういえばそうだった!!
0
お気に入りに追加
219
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!
京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。
戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。
で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
若き天才国王の苦悩
べちてん
ファンタジー
大陸の半分近くを支配するアインガルド王国、そんな大国に新たな国王が誕生した。名はレイフォース・アインガルド、齢14歳にして低、中、上、王、神級とある中の神級魔術を操る者。
国内外問わず人気の高い彼の王位継承に反対する者等存在しなかった。
……本人以外は。
継がないと公言していたはずの王位、問題だらけのこの世界はどうなっていくのだろうか。
王位継承?冗談じゃない。国王なんて面倒なことをなぜ僕がやらないといけないんだ!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【追放29回からの最強宣言!!】ギルドで『便利屋』と呼ばれている私。~嫌われ者同士パーティーを組んだら、なぜか最強無敵になれました~
夕姫
ファンタジー
【私は『最強無敵』のギルド冒険者の超絶美少女だから!】
「エルン。悪いがこれ以上お前とは一緒にいることはできない。今日限りでこのパーティーから抜けてもらう。」
またか…… ギルドに所属しているパーティーからいきなり追放されてしまったエルン=アクセルロッドは、何の優れた能力も持たず、ただ何でもできるという事から、ギルドのランクのブロンズからシルバーへパーティーを昇格させるための【便利屋】と呼ばれ、周りからは無能の底辺扱いの嫌われ者だった。
そして今日も当たり前のようにパーティーを追放される。エルンは今まで29回の追放を受けており次にパーティーを追放されるか、シルバーランクに昇格するまでに依頼の失敗をするとギルドをクビになることに。
ギルドの受付嬢ルナレットからの提案で同じギルドに所属する、パーティーを組めば必ず不幸になると言われている【死神】と呼ばれているギルドで嫌われている男ブレイドとパーティーを組むことになるのだが……。
そしてそんな【便利屋】と呼ばれていた、エルンには本人も知らない、ある意味無敵で最強のスキルがあったのだ!
この物語は29回の追放から這い上がり『最強無敵』になった少女の最強の物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる