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第二十四章 油断
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「キャアッ!!」
その時、異変に気が付いたリナの叫び声が聞こえた。
リナは乱入してきたシャノンとふらつく僕を見て、顔をこわばらせている。
一方、シャノンの動きは俊敏だった。
逃げ出す暇を与えないよう、地面を蹴ってリナに素早く跳びかかった。
「ごめんなさい王女様。あなたもしばらくの間眠っていてもらうわね」
シャノンはそう言いながら再び頭を軽く振って、リナの顔に長い黒髪を巻きつけた。
昨日の戦いの恐怖の記憶が甦り、動けなくなったリナは、その髪を振り払うことができない。
「ああ……」
と、リナが小さく吐息を漏らした。
僕と同じく、シャノンの髪に染みこんだ痺れ薬を吸いこんでしまったのだ。
途端にリナは体勢を崩し、その場に倒れそうになった。
「あら!」
リナの体を受け止めたシャノンがほほ笑む。
「うわー王女様、軽い! ヒルダとは大違いね」
リナにとって不幸だったのは、昨日アリスの身代わりになるために飲んだ薬の効果で、目と髪が金色のままだったことだ。
そのためシャノンは、自分の腕の中でぐったりする王女が偽物だという事実に、いまだ気づけないでいるのだ。
「じゃあね、ユウト君」
シャノンはそのままリナをひょいと抱きかかえると、僕の方を向いて言った。
「言った通り王女様は私が責任を持って預からせてもらうわ。――あなたももう戦うのは止めて故郷に帰りなさい。それと、この先くれぐれもヒルダみたいな悪い女とかかわっちゃダメよ!」
「……シャノン……待て!」
リナを連れどこかへ行ってしまおうとするシャノンを追って、僕は必死に前に進もうとした。
が、さっき嗅がされた痺れ薬のせいで足元がおぼつかない。
しかも眠い……。
まぶたが重くて、目を開けているのがやっとの状態だ。
「あっ!! ユウ兄ちゃん、どうしたの!?」
背後で誰かが叫んだ。
笛を吹きながら、少し遅れてやってきたミュゼットの声だ。
「ギャアアアアアアアア――!! 」
このたまぎるような金切り声は――
やっぱり、間違いなく男爵……。
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