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第二十四章 油断
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ゆっくりと迫ってくるハイオークに対し、ミュゼットが恐怖の叫び声を上げる。
「イヤー! こっちに来ないで!」
もはや魔法を使うことも忘れたのか、ミュゼットはただ怯え、体を小刻みに震わせるだけだ。
……しかし。
白くスラリとした足を露わにし、しどけない姿で横たわるミュゼットは、何と表現すればいいのか――
妙になまめかしく、人の情欲をかき立てるような危うい色香を漂わせていた。
今の今まで強気な態度で戦っていただけに、その弱弱しい姿が逆に被虐嗜好をそそるのかもしれない。
もし敵がハイオークでなく、不届き者な人間の男だったらどうなっていだろう?
欲望を抑えきれず、この場でミュゼットを手籠めにしてしまったに違いない。
いや……でも、なんだかハイオークの鼻息もさらに荒くなってきたような……。
口から流れ出たよだれが、牙を伝わって地面にぼたぼた落ちてるし………。
「ちょっとちょっとちょっと! 本格的にヤバいわよ!」
結界の内側の様子を見て、男爵がキャーキャーわめく。
「ミュゼット! あんたホントなにやってんのよ! いい加減、ちゃっちゃっとこの炎の壁を消しちゃいなさい!」
が、男爵の声も、絶体絶命のミュゼットには届かない。
ミュゼットはハイオークから何とか逃れようと、「あわわ……」と声を漏らしながら、地面をずりずり這って後退するだけだ。
「ユウトさん! 速く速く! 何とかしてください!」
リナが僕の体を大きく揺さぶる。
「でないとミュゼットさんが――!!」
「リナ様、そう言われても! こっちも目いっぱいの魔力使ってやってるんです!」
僕は『炎の壁』に向かって、何度も何度も『ブレイク』の魔法をかけ続けた。
が、それでも多少炎の勢いが弱まるだけ。
結界自体を破ることがどうしてもできない。
くそっ、僕の魔法がここまで通じないとは!
ミュゼットはいったいどれだけの魔力を込めて、この『炎の壁』を作り上げたのだ?
そうこうするうちに――
「きゃーーーー!」
ひときわ大きなミュゼットの叫び声が聞こえた。
ハイオークがミュゼットを片手で捕まえ、クイッと軽く空中に持ち上げてしまったのだ。
「イヤー! こっちに来ないで!」
もはや魔法を使うことも忘れたのか、ミュゼットはただ怯え、体を小刻みに震わせるだけだ。
……しかし。
白くスラリとした足を露わにし、しどけない姿で横たわるミュゼットは、何と表現すればいいのか――
妙になまめかしく、人の情欲をかき立てるような危うい色香を漂わせていた。
今の今まで強気な態度で戦っていただけに、その弱弱しい姿が逆に被虐嗜好をそそるのかもしれない。
もし敵がハイオークでなく、不届き者な人間の男だったらどうなっていだろう?
欲望を抑えきれず、この場でミュゼットを手籠めにしてしまったに違いない。
いや……でも、なんだかハイオークの鼻息もさらに荒くなってきたような……。
口から流れ出たよだれが、牙を伝わって地面にぼたぼた落ちてるし………。
「ちょっとちょっとちょっと! 本格的にヤバいわよ!」
結界の内側の様子を見て、男爵がキャーキャーわめく。
「ミュゼット! あんたホントなにやってんのよ! いい加減、ちゃっちゃっとこの炎の壁を消しちゃいなさい!」
が、男爵の声も、絶体絶命のミュゼットには届かない。
ミュゼットはハイオークから何とか逃れようと、「あわわ……」と声を漏らしながら、地面をずりずり這って後退するだけだ。
「ユウトさん! 速く速く! 何とかしてください!」
リナが僕の体を大きく揺さぶる。
「でないとミュゼットさんが――!!」
「リナ様、そう言われても! こっちも目いっぱいの魔力使ってやってるんです!」
僕は『炎の壁』に向かって、何度も何度も『ブレイク』の魔法をかけ続けた。
が、それでも多少炎の勢いが弱まるだけ。
結界自体を破ることがどうしてもできない。
くそっ、僕の魔法がここまで通じないとは!
ミュゼットはいったいどれだけの魔力を込めて、この『炎の壁』を作り上げたのだ?
そうこうするうちに――
「きゃーーーー!」
ひときわ大きなミュゼットの叫び声が聞こえた。
ハイオークがミュゼットを片手で捕まえ、クイッと軽く空中に持ち上げてしまったのだ。
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