338 / 503
第二十三章 ロードラントの笛吹き娘
(10)
しおりを挟む
「あら、みんな少しは反省したようね。じゃあ、ここからはアタクシが仕切らせてもらうわ!」
と、そこでタイミングよく男爵が宣言する。
「まず、この場にいる全員がそろって私の城――デュロワ城に行く。これは決定事項。ではそのために何をしたらいいか? まずは動けない重症の人の治療よね?」
「それは任せて下さい」
僕は前に出て言った。
「できる限りのことはします」
「私も手伝いましょう」
クロードも横に並び、申し出た。
「ユウト君には及びませんが、ある程度のケガなら私の魔法でも治せます」
「ウンウン、それはあなたたちしかできないことだものね」
男爵がうなずく。
「じゃあ悪いけれどミュゼットと、三人で力を合わせ大急ぎで頼むわね。――さあ他の人は出発の準備よ! いい? 今は騎士も兵士も、当分身分は関係なしにお互い助け合あっていくわよ! はい、レッツゴー!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
男爵の指示のもと、僕たちは早速治療に取りかかることにした。
魔法での治療が必要な兵士はおよそ150名ほど。
中でも特に重傷な50名を僕が、残りの人はクロードとミュゼットが担当することになった。
「あの……」
回復魔法を使いながら、僕はクロードに話しかけた。
さっきみんなの前で助けてもらったお礼を言いたかったのだ。
「クロード様、先ほどは本当にありがとうございました」
「いいえ、そんな感謝されるようなことはしていませんよ」
クロードは魔法を唱えるのを中断して、僕の方を向いてほほ笑んで言った。
「『リペア』の魔法――あんな切断された肉体をつなげる魔法があるなんて、僕は知りませんでした」
「私もある人にたまたま習っただけです。よかったら後でユウト君にも教えて差し上げますよ」
「ええ、いいんですか? 是非お願いします!」
クロードの申し出は嬉しかった。
貴族の彼が平民の僕に、わざわざ魔法を伝授してくれるなんて思わなかったからだ。
それに、あの魔法は今後必ず役に立つ時がくる。
「お安いご用ですよ。――それで、その代わりという訳ではないのですが……」
一瞬、クロードが何か訊きたそうに口ごもる。
「何でしょうか? 僕にできることがあれば何でもおっしゃってください」
「私事ですみません。ユウト君は、ティルファ――ティルファ=ド=ロレーヌという女騎士の消息をご存じありませんか? 第一軍と第二軍の全滅の報を告げる使者として、アリス様の元に向かったことまでは分かっているのですが……」
ティルファ――
それはもちろん、僕が命を救ったあの女騎士ティルファのことだろう。
彼女なら一応、デュロワ城にいる。
ただしその心は、今はほとんど壊れかけてしまっているが。
――ん?
ティルファの姓は確か――ド=ロレーヌ。
そしてクロードの姓も……。
ティルファ=ド=ロレーヌ
クロード=ド=ロレーヌ
もしや二人は――
兄と妹!?
と、そこでタイミングよく男爵が宣言する。
「まず、この場にいる全員がそろって私の城――デュロワ城に行く。これは決定事項。ではそのために何をしたらいいか? まずは動けない重症の人の治療よね?」
「それは任せて下さい」
僕は前に出て言った。
「できる限りのことはします」
「私も手伝いましょう」
クロードも横に並び、申し出た。
「ユウト君には及びませんが、ある程度のケガなら私の魔法でも治せます」
「ウンウン、それはあなたたちしかできないことだものね」
男爵がうなずく。
「じゃあ悪いけれどミュゼットと、三人で力を合わせ大急ぎで頼むわね。――さあ他の人は出発の準備よ! いい? 今は騎士も兵士も、当分身分は関係なしにお互い助け合あっていくわよ! はい、レッツゴー!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
男爵の指示のもと、僕たちは早速治療に取りかかることにした。
魔法での治療が必要な兵士はおよそ150名ほど。
中でも特に重傷な50名を僕が、残りの人はクロードとミュゼットが担当することになった。
「あの……」
回復魔法を使いながら、僕はクロードに話しかけた。
さっきみんなの前で助けてもらったお礼を言いたかったのだ。
「クロード様、先ほどは本当にありがとうございました」
「いいえ、そんな感謝されるようなことはしていませんよ」
クロードは魔法を唱えるのを中断して、僕の方を向いてほほ笑んで言った。
「『リペア』の魔法――あんな切断された肉体をつなげる魔法があるなんて、僕は知りませんでした」
「私もある人にたまたま習っただけです。よかったら後でユウト君にも教えて差し上げますよ」
「ええ、いいんですか? 是非お願いします!」
クロードの申し出は嬉しかった。
貴族の彼が平民の僕に、わざわざ魔法を伝授してくれるなんて思わなかったからだ。
それに、あの魔法は今後必ず役に立つ時がくる。
「お安いご用ですよ。――それで、その代わりという訳ではないのですが……」
一瞬、クロードが何か訊きたそうに口ごもる。
「何でしょうか? 僕にできることがあれば何でもおっしゃってください」
「私事ですみません。ユウト君は、ティルファ――ティルファ=ド=ロレーヌという女騎士の消息をご存じありませんか? 第一軍と第二軍の全滅の報を告げる使者として、アリス様の元に向かったことまでは分かっているのですが……」
ティルファ――
それはもちろん、僕が命を救ったあの女騎士ティルファのことだろう。
彼女なら一応、デュロワ城にいる。
ただしその心は、今はほとんど壊れかけてしまっているが。
――ん?
ティルファの姓は確か――ド=ロレーヌ。
そしてクロードの姓も……。
ティルファ=ド=ロレーヌ
クロード=ド=ロレーヌ
もしや二人は――
兄と妹!?
0
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
龍騎士イリス☆ユグドラシルの霊樹の下で
ウッド
ファンタジー
霊樹ユグドラシルの根っこにあるウッドエルフの集落に住む少女イリス。
入ったらダメと言われたら入り、登ったらダメと言われたら登る。
ええい!小娘!ダメだっちゅーとろーが!
だからターザンごっこすんなぁーーー!!
こんな破天荒娘の教育係になった私、緑の大精霊シルフェリア。
寿命を迎える前に何とかせにゃならん!
果たして暴走小娘イリスを教育する事が出来るのか?!
そんな私の奮闘記です。
しかし途中からあんまし出てこなくなっちゃう・・・
おい作者よ裏で話し合おうじゃないか・・・
・・・つーかタイトル何とかならんかったんかい!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
働くおじさん異世界に逝く~プリンを武器に俺は戦う!薬草狩りで世界を制す~
山鳥うずら
ファンタジー
東京に勤務している普通のおっさんが異世界に転移した。そこは東京とはかけ離れた文明の世界。スキルやチートもないまま彼は異世界で足掻きます。少しずつ人々と繋がりを持ちながら、この無理ゲーな社会で一人の冒険者として生きる話。
少し大人の世界のなろうが読みたい方に楽しめるよう創りました。テンプレを生かしながら、なろう小説の深淵を見せたいと思います。
彼はどうやってハーレムを築くのか――
底辺の冒険者として彼は老後のお金を貯められたのか――
ちょっとビターな異世界転移の物語。
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる