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第二十三章 ロードラントの笛吹き娘

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「あら、みんな少しは反省したようね。じゃあ、ここからはアタクシが仕切らせてもらうわ!」
 と、そこでタイミングよく男爵が宣言する。
「まず、この場にいる全員がそろって私の城――デュロワ城に行く。これは決定事項。ではそのために何をしたらいいか? まずは動けない重症の人の治療よね?」

「それは任せて下さい」
 僕は前に出て言った。 
「できる限りのことはします」

「私も手伝いましょう」
 クロードも横に並び、申し出た。
「ユウト君には及びませんが、ある程度のケガなら私の魔法でも治せます」

「ウンウン、それはあなたたちしかできないことだものね」
 男爵がうなずく。
「じゃあ悪いけれどミュゼットと、三人で力を合わせ大急ぎで頼むわね。――さあ他の人は出発の準備よ! いい? 今は騎士も兵士も、当分身分は関係なしにお互い助け合あっていくわよ! はい、レッツゴー!!」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 男爵の指示のもと、僕たちは早速治療に取りかかることにした。

 魔法での治療が必要な兵士はおよそ150名ほど。
 中でも特に重傷な50名を僕が、残りの人はクロードとミュゼットが担当することになった。     

「あの……」

 回復魔法リカバーを使いながら、僕はクロードに話しかけた。
 さっきみんなの前で助けてもらったお礼を言いたかったのだ。

「クロード様、先ほどは本当にありがとうございました」

「いいえ、そんな感謝されるようなことはしていませんよ」
 クロードは魔法を唱えるのを中断して、僕の方を向いてほほ笑んで言った。

「『リペア』の魔法――あんな切断された肉体をつなげる魔法があるなんて、僕は知りませんでした」

「私もある人にたまたま習っただけです。よかったら後でユウト君にも教えて差し上げますよ」

「ええ、いいんですか? 是非お願いします!」

 クロードの申し出は嬉しかった。
 貴族の彼が平民の僕に、わざわざ魔法を伝授してくれるなんて思わなかったからだ。
 それに、あの魔法は今後必ず役に立つ時がくる。

「お安いご用ですよ。――それで、その代わりという訳ではないのですが……」
 一瞬、クロードが何か訊きたそうに口ごもる。

「何でしょうか? 僕にできることがあれば何でもおっしゃってください」

私事わたくしごとですみません。ユウト君は、ティルファ――ティルファ=ド=ロレーヌという女騎士の消息をご存じありませんか? 第一軍と第二軍の全滅の報を告げる使者として、アリス様の元に向かったことまでは分かっているのですが……」

 ティルファ――

 それはもちろん、僕が命を救ったあの女騎士ティルファのことだろう。
 彼女なら一応、デュロワ城にいる。
 ただしその心は、今はほとんど壊れかけてしまっているが。

 ――ん?

 ティルファの姓は確か――ド=ロレーヌ。
 そしてクロードの姓も……。

 ティルファ=ド=ロレーヌ
 クロード=ド=ロレーヌ

 もしや二人は――

 兄と妹!?
 
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