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第二十二章 無敵形態
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霧の広がるスピードよりも馬の脚が勝り、僕とリナはすぐに霧の外へ抜けた。
『ミスト』の魔法自体は上手く唱えることができた。が、その効果はどの程度なのか――
そう思って後ろを振り向くと、かなりの範囲に白い霧が立ち込めているのが見えた。
よし、首尾は上々。
初めて使う魔法なので多少の不安はあったが、とりあえず成功したようだ。
だが、みんなが安全に逃げられようになるまでにはまだ全然足りない。
それを可能にするためには、もっともっと霧の煙幕を張らなければ――
そこで僕は、敵の密集している方向に向かって魔法を連発することにした。
『ミスト!』
『ミスト!』
『ミスト!』
狙いは当たった。
そのまま魔法の霧の効果範囲はどんどん拡大し、やがて白い大きなキノコ雲のようになって敵全体を包み込んでいく。
「リナ様、いい調子です。このまま大きく円を描いて馬の進路を取ってください! ただし徐々に敵から離れていく感じで」
「はい!」
僕はダメ押しのつもりでさらに『ミスト』魔法を唱え続けた。
結果的に、霧は広大な平原のおおよそ四分の一程度を覆うまでに広がった。
これで敵は視界を完全に失い相当混乱しているはずだ。
当然、こちらに向かって矢が飛んでくることもない。
「リナ様ありがとうございます。作戦の第一段階はどうやら成功です。さあ、いったんマティアス様と男爵様の所へ戻りましょう」
リナはうなずき、スピードを落とすことなく馬の向きを変える。
そして男爵たちが待つ元いた岩山のふもと――そこはまだ霧は到達していなかった――をめざし、一目散に走った。
リナの優れた馬術のおかげもあり、ここまではスムーズだ。
次は作戦の第二段階。
どうにかして敵を遠くに追い払い、エリックたちを霧の中から助け出すのだが――
その成否はすべて、リューゴたち王の騎士団の働きにかかっていた。
『ミスト』の魔法自体は上手く唱えることができた。が、その効果はどの程度なのか――
そう思って後ろを振り向くと、かなりの範囲に白い霧が立ち込めているのが見えた。
よし、首尾は上々。
初めて使う魔法なので多少の不安はあったが、とりあえず成功したようだ。
だが、みんなが安全に逃げられようになるまでにはまだ全然足りない。
それを可能にするためには、もっともっと霧の煙幕を張らなければ――
そこで僕は、敵の密集している方向に向かって魔法を連発することにした。
『ミスト!』
『ミスト!』
『ミスト!』
狙いは当たった。
そのまま魔法の霧の効果範囲はどんどん拡大し、やがて白い大きなキノコ雲のようになって敵全体を包み込んでいく。
「リナ様、いい調子です。このまま大きく円を描いて馬の進路を取ってください! ただし徐々に敵から離れていく感じで」
「はい!」
僕はダメ押しのつもりでさらに『ミスト』魔法を唱え続けた。
結果的に、霧は広大な平原のおおよそ四分の一程度を覆うまでに広がった。
これで敵は視界を完全に失い相当混乱しているはずだ。
当然、こちらに向かって矢が飛んでくることもない。
「リナ様ありがとうございます。作戦の第一段階はどうやら成功です。さあ、いったんマティアス様と男爵様の所へ戻りましょう」
リナはうなずき、スピードを落とすことなく馬の向きを変える。
そして男爵たちが待つ元いた岩山のふもと――そこはまだ霧は到達していなかった――をめざし、一目散に走った。
リナの優れた馬術のおかげもあり、ここまではスムーズだ。
次は作戦の第二段階。
どうにかして敵を遠くに追い払い、エリックたちを霧の中から助け出すのだが――
その成否はすべて、リューゴたち王の騎士団の働きにかかっていた。
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