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第二十二章 無敵形態

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「すべて了解しました。とても良い作戦ですね」

 グリモ男爵の説明を一通り聞いたリューゴが、いかにも好青年風にはきはき答えた。 

「ね、そう思うでしょう?」
 男爵がニッコリ笑う。
「勝ち戦とはいえ敵さんも相当疲労はたまっているはずよ。当然頭の回転も鈍っているだろうから、こんな単純な作戦でもきっと引っかかってくれるわ」

「ええ、私もそう思います。必ず成功してみんなを助け出すことがでますよ」

「ありがとう、そう言ってもらえると心強いわぁ。でもねリューゴ君……」
 と、男爵が言いにくそうな顔をする。
「あなたたちに最も危険な役割を任せることがアタシはちょっと心苦しいのよねぇ。一歩間違えば命の危険があるし、むしろ無傷で切り抜けられれば奇跡かもしれない……」

 だが、男爵の心配をよそに、リューゴは平然と言った。

「男爵、その点はご心配には及びませんよ。これぐらいの任務、我々にとって危険なうちに入りません。ましてや失敗するなどあり得ないことです」

 ――なんという自負心!

 しかしリューゴは、特に見栄や虚勢を張っているようには見えない。
 今のセリフもうわべを繕ったわけではなく、ごく自然に、本心から出たものなのだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 話によれば、リューゴ率いる王の騎士団キングスナイツは、アリス王女の初陣を心配するルドルフ王――つまりアリスの父親から「遊軍として第一軍、第二軍を援護せよ」と、直《じか》に拝命したという。

 とはいえ、たとえ王の騎士団キングスナイツがどんなに強くとも、先行する第一軍、第二軍がいきなり全滅してしまっては、如何いかんともし難かった。

 もはや戦況を覆すことは不可能と判断したリューゴたちは、せめて、敗走する兵士たちを一人でも多く助けようと戦場を奔走《ほんそう》し、最終的にこの平原にたどり着いたらしい。

 そんな騎士のお手本のようなリューゴが、リナから離れ、僕に近寄ってきた。
 当然リューゴには、現実世界の“佐々木龍吾”の記憶もなければ、僕のリナに対する気持ちも知らないのだろう。

「きみがユウト君ですね。話はリナから――いや、リナ殿から聞きました。
これまでみんなの危機を何度も救ってくれたそうですね」

 リナ → リナ殿。
 そのうっかりな言い換えはなんなんだ!
 呼び捨てにして、リナとの親しさをアピールしているのか!?

 と、情けない邪推をしつつも、僕はそんなことおくびにも出さず答えた。

「いいえ、ロードラントに仕える兵士としてごく当然の義務を果たしたまでです」

「いや、ユウト君はそれ以上のことをしてくれました。本来なら私たちが真っ先にアリス様の元に駆けつけねばならなかったのに状況がそれを許さなかった。……ちょっと言い訳めいていますが、とにかくユウト君には心より感謝しています。ありがとう!」

 リューゴはそう言って、握手しようと手を差し伸べた。
 身分は僕よりずっと上のはずなのに、その点はまったく気にしないタイプらしい。

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