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第十九章 再会

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 すると男爵は僕の視線に敏感に反応し、恋に恥じらう乙女のように両ほほに手を当てた。

「まあ、やだわ! いくらアタシの顔が美しいからって、そんなに見つめちゃいろいろ誤解しちゃうじゃないの! ――えーと、ところであなたのお名前は?」

「ユ、ユウトです」

「ユウちゃん、って言うのね。素性は知らないけれどアリス様のお付きの人なのかしら? ふーん、よく見るとカワイイ顔をしてるし性格も悪くなさそう。残念ねぇ、アタシがもうちょっと若かったら……」

「あ、あの!」
 話がおかしな方向に逸れそうなので、僕はあわてて聞き返した。
「アリス様と、グリモ様はいったいどういったご関係なのでしょうか?」

「うーん、そうだな――正式ではない、裏の家庭教師みたいなものだ」
 と、アリスが答えた。
「難解な学問に限らず、文学に歴史科学に音楽、果ては怪しい遊戯ギャンブルまで、グリモは幼い私にさまざまなことを教えてくれた。杓子定規で堅物ばかりの教育係どもの目を盗んで、こっそりとな」

「アタシはアリス様が子供のころから一目も二目も置いていましたからね。王国を継ぐのはこの方しかいない、それには膨大な知識と幅広い視野が必要。そう思って教えられることはすべてお教えしたつもりです」

「そのことについては今でも感謝している。――が、長い昔話はそれぐらいにしておこう。それよりさっきの病人の話はどうなったのだ」

「あら、そうでしたわね。ではこちらにどうぞ。アリス様にはそのご病気の方に実際会っていただき、それから事情をご説明いたしますわ」

 僕とアリスは男爵に導かれるまま、バラの間を抜ける。
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