異世界最弱だけど最強の回復職《ヒーラー》

波崎コウ

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第十八章 バロンの城

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 男爵の顔色がサッと変わった。
 リナをにらみ付け、叫ぶ。

「あらまあらまアラマ! 今の発言、ちょっと許せないわねぇ。ニセモノ王女様、もしアンタがお子さまじゃなかったら、ただちに愛の鞭打ち100回の刑に処してるところよ!」

「は、はぁ!?」

「いい? アタシがアンタに教えてあげる。愛ってものに定義はないの! 相手が男であれ女であれ、人を愛し愛されるってことは限りなく尊いことなの! なのにアンタは! まるで変人を見るような目をして!  ほんと失礼しちゃう!」

「で、でも……」
 リナは男爵に押されタジタジしてる。

「それに男×女でも男×男でも最終的にヤることは一緒よ! そこに大した違いはないわ! あ! 体の構造上、女×女だとちょっとそれをするのは難しいかもしれないけどさ」

 そう言って男爵はホホホ、と笑い、リナの顔は熟したリンゴのようにますます赤くなる。 

 ……それにしても下品すぎる。
 この男爵、まともな貴族とはとても思えない。
 リナに助け船を出してあげたいけど、とても僕の手には負える相手ではなさそうだ。

 だけど一方で――

 男爵は不思議といやらしい人という感じはしなかった。
 陽気なキャラクターと明るい人柄のおかげか? 
 暴走気味に下ネタを連発しても、さっぱりしていて不快ではないのだ。

「……そこまでにしておけ、グリモ」
 が、マティアスは今にも死にそうな顔をして言った。
「リナ殿にそれ以上恥ずかしい思いをさせるな」

「あら、マティアス、観念して答える気になった?」

「……ナナジュウニカイ、だ」

「ダメよ。声が小さくて聞こえない」

「七十二回だ!」
 男爵にのせられ、マティアスは必要以上に大声を上げてしまう。

「まあ!」
 それを聞いた男爵の顔に、パッと喜色があふれた。
「ちゃーんと覚えておいてくれたのね! ウレシイ! うれしすぎるわ! 几帳面なその性格、変わってないみたい!」

 敵がすぐそこまで迫っているというのに、いったい僕たちは何をやっているんだろう……。

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