255 / 505
第十八章 バロンの城
(6)
しおりを挟む
リナはさらに詳しくいきさつを説明した。
「ことが発覚すると、ルドルフ王もさすがにグリモ男爵をかばい切れなくなりました。そして男爵は逮捕され王国裁判にかけられたのです。当時の見せしめ的な大騒ぎは私もよく覚えていますよ。男爵には必ず死罪が言い渡されるであろう、と」
「なのに今、この城の城主におさまっているということは……」
「ユウトさんの察っする通りです。グリモ男爵はそれまでの功績を認められ死刑は免れました。ただし爵位を取り上げられ、二度と王都の土を踏めないようこの辺境のデュロワ城に追放されたというわけです」
「だけど……」
僕は頭を抱えるマティアスを横目で見ながら、ヒソヒソ声で言った。
「グリモ男爵と対面するだけで、なぜマティアス様はここまで落ち込んでいるのでしょうか? 今のリナ様のお話だけなら、特に理由が見当たらないのですが」
「そうですよね……」
と、リナも首をかしげる。
「お二人の間になにか因縁でもあるのかもしれません。――あ!?」
リナがそこまで話したところで、突如デュロワ城の城門部分が、スポットライトが当たるかの如くパッと明るく照らし出された。
続いて跳ね橋が「ギギギギギ……」と重々しい音を立てながら、ゆっくりとこちらに向かって下がり始めた。
もしや衛兵が考え直し、僕たちを中に入れてくれる気になったのか――!?
……と、思ったのだが、それは勘違いだった。
跳ね橋はだいたい四分の三ほど下りたところで、ピタリと止まってしまった。
これではまだ中には入れない。無理に進めば馬ごと堀の中にドボンだ。
どうしてそんな中途半端なことをするのか不思議に思っていると、城内から戻ってきたさっきの衛兵が城壁の上から叫んだ。
「グリモ男爵閣下のおーなーりーー」
「ことが発覚すると、ルドルフ王もさすがにグリモ男爵をかばい切れなくなりました。そして男爵は逮捕され王国裁判にかけられたのです。当時の見せしめ的な大騒ぎは私もよく覚えていますよ。男爵には必ず死罪が言い渡されるであろう、と」
「なのに今、この城の城主におさまっているということは……」
「ユウトさんの察っする通りです。グリモ男爵はそれまでの功績を認められ死刑は免れました。ただし爵位を取り上げられ、二度と王都の土を踏めないようこの辺境のデュロワ城に追放されたというわけです」
「だけど……」
僕は頭を抱えるマティアスを横目で見ながら、ヒソヒソ声で言った。
「グリモ男爵と対面するだけで、なぜマティアス様はここまで落ち込んでいるのでしょうか? 今のリナ様のお話だけなら、特に理由が見当たらないのですが」
「そうですよね……」
と、リナも首をかしげる。
「お二人の間になにか因縁でもあるのかもしれません。――あ!?」
リナがそこまで話したところで、突如デュロワ城の城門部分が、スポットライトが当たるかの如くパッと明るく照らし出された。
続いて跳ね橋が「ギギギギギ……」と重々しい音を立てながら、ゆっくりとこちらに向かって下がり始めた。
もしや衛兵が考え直し、僕たちを中に入れてくれる気になったのか――!?
……と、思ったのだが、それは勘違いだった。
跳ね橋はだいたい四分の三ほど下りたところで、ピタリと止まってしまった。
これではまだ中には入れない。無理に進めば馬ごと堀の中にドボンだ。
どうしてそんな中途半端なことをするのか不思議に思っていると、城内から戻ってきたさっきの衛兵が城壁の上から叫んだ。
「グリモ男爵閣下のおーなーりーー」
0
お気に入りに追加
220
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる