異世界最弱だけど最強の回復職《ヒーラー》

波崎コウ

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第十六章 魔女の正体

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 ヒルダは肩を落とし首を垂れ「ああ……あああ……」とほうけたような声を上げている。
 とても戦える状態ではなさそうだ。

 しかし、相手が相手だけにまだ油断はできない。
 僕は警戒を緩めることなく、慎重にヒルダに近づいた。

 すると――

 あっ!
 あれは……。

 よく見るとヒルダの股間が濡れている。
 そして、その周囲にはおおきな水たまりができていた。
 ヒルダは失禁したのだ。

 いくらなんでも、やりすぎたかな……?

 白痴化し失禁までしたヒルダを見て、僕は戸惑い、多少のうしろめたさを感じた。
 魔力はいわば魔法使いのパワーの根源。
 それを一瞬にしてロストしたヒルダが、これほどまで衝撃を受けるとは思わなかったのだ。

 僕が気を使うのも変だけれど、できることなら少量の魔力を残してあげてもよかったのかもしれない。
 憎き敵だとはいえ、若く美しい女性に対し大いに恥をかかせてしまった。

 それでも――

 僕はヒルダの目の前に立った。

 ――やっぱり、どうしても確かめたい。

「ねえキミ、ヒルダをそれ以上どうする気?」
 刀を鞘《さや》に収めながら、シャノンが訊く。
「もうすべて終わったんじゃない?」
 
「大丈夫、何もしません」
 僕は震える手で、ヒルダのマスカレイドマスクに手を伸ばした。
「……ただ、顔を見せてもらうだけです」

 ヒルダが現実世界の“あの人”と同一人物なのか、その素顔を確認せずにはいられなかったのだ。
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