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第十五章 信条と約定

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「フフン、どうした? クソザコ」
 ヒルダは笑い声を漏らしながら、三歩ほど前に進み出た。

 なぜだ!
 あんなに魔力を強めた『シール』が効かないなんてありえない!

「もしかして、今の魔法がキサマの切り札だったのか?」
 ヒルダの勝ち誇った声が森の中にこだまする。
「バカめ、剣で私を殺せば勝てていたのに」

「だ、黙れ!」
 と、叫んだものの、それは単なる負け犬の遠吠えでしかなかった。

「黙るのはキサマの方だ!」
 ヒルダが杖を振る。
『――イビルバインド!』

 杖の先から紫色をした魔法のリボンが伸び、僕の体をぐるぐる巻きにした。
 リナを捕らえたのと同じ呪文だ。

「うぐっ」

 全身をぎゅうっと締め上げられ、思わずうめき声が漏れでる。
 相当苦しい。
 が、それでも僕は『シール』が発動しなかった理由を考えずにはいられなかった。

 自分の魔力はヒルダを上回っているか、少なくとも拮抗きっこうしているはずなのにどうして――?

 思い当たる原因はただ一つ。
『デス』や『ストーン』の闇魔法が僕に効きにくかったのと同じように、ヒルダは『シール』の魔法に対し耐性を持っているということだ。

 特定の魔法が効かない。
 そんな敵は幾らでもいるのに、どうして考えが及ばなかったのだろう?
 結局、少しくらい魔法が使えるからといって、調子に乗ってしまった自分が愚かだったのだ。

 この異世界アリスティアに来て取り戻しつつあった自信――
 それが一瞬で、ものの見事に落ち砕かれてしまった。
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