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第十四章 囚われの偽王女

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 思わず耳を塞ぎたくなるようなひどい罵声――

 にもかかわらず、その時の僕は魔女の真紅の返り血を浴び、はっと我に返っていた。
 そして思った。
 ついにやってしまった、と。
 リナを救うためだとはいえ、この世界に来て初めて剣で人を傷つけてしまったのだ。

「シャノン! 早く来い! コイツを殺すのだ!」

 魔女がそう叫んだ時、シャノンとマティアスの勝負はほとんど決着が付きかけていた。
 マティアスはもう立っているのがやっとの状態で、次がとどめの一撃、というところまで追いつめられていた。

 が、シャノンは魔女の叫びを聞きつけパッと空を跳んだ。
 そして――

「バシッ」
 と、音がした。

 一瞬何が起きたか理解できなかった。
 ただ両腕が痺れ、手が急に軽くなったのを感じた。

 ぎょっとして下を向く。
 そこには僕のショートソードが転がっていた。

 驚き顔を上げると――
 すぐ側にシャノンがいた。
 目に見えないような速さで、彼女に剣を叩き落されていたらしい。

「……弱すぎる」
 シャノンはそうつぶやき、僕の腹めがけいきなりキックをかました。

「うへっ」
 情けない声が出て、ドスンと地面に尻しりもちをついてしまう。

「戦場で生き延びたいのだったら魔法だけでなく剣の腕も磨くことね。もう手遅れかもしれないけれど……」

 シャノンはそう言って、僕の額に刀の切っ先をぴたりと突きつけた。 

 因果応報。
 まさか僕がセフィーゼにやったことを、そのままシャノンにやり返されるとは思わなかった。

 しかし、もちろんシャノンは僕を脅して降参させようというのではない。
 本気で殺す気なのだ。
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