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第十三章 恐怖の森
(13)
しおりを挟む「怯《ひる》むな!」
マティアスがシャノンと切り合いを続けながら、横目で見て叫んだ。
「そいつらはただの肉塊、抜け殻だ! 迷わず切って切って切りまくれ」
「し、しかし……」
困惑する竜騎士たち。
戦いの間は冷酷な戦闘マシーンと化する彼らとはいえ、やはりそこは血の通った人間だ。
かつて共に戦った仲間に剣を振るうのは、どうしてもためらわれるのだろう。
だがアンデッドはそんなこと気にはしない。
群れを成して、竜騎士たちにワッと跳びかかってきた。
竜騎士たちは仕方なく馬上から剣や槍で応戦するが、相手は生ける屍《しかばね》。
振り払っても馬で踏みつぶしても簡単にはやられない。
倒れてもすぐに起き上って再び突っかかってくる。
そのうち、一体のアンデッドが竜騎士の馬に噛みついた。
馬はいななき、アンデッドをなんとか振り払おうと暴れ出す。
「うわっ!」
竜騎士は馬を制御しきれず、冷たい地面に投げ出された。
そこへ次から次へとアンデッドが覆いかぶさっていく。
まるでゾンビ映画でも見ているような凄惨な光景――
竜騎士の悲鳴がこだまする中、マティアスが叫んだ。
「みんな何をしている! 仲間を助けろ!」
その言葉で竜騎士たちは我に返った。
本気になってアンデッドたちに攻撃を開始したのだ。
「戦え戦え!」
魔女の高笑いが聞こえる。
「味方同士で殺し合うのだ」
ローブの魔女の思惑通り、そこからは竜騎士と元竜騎士との乱戦、血みどろの戦いとなった。
アンデッドは実際どのくらい強いのか――
と、思って見ていると、どうやら戦闘力はまちまちのようだった。
すぐさま首を切り落とされ動かなくなる個体もいれば、巧みに剣を操って竜騎士を圧倒する個体もいる。
たぶんアンデッドの生前のレベル、強さ弱さをそのまま反映しているのだろう。
しかし、どんなに強かろうがしょせんはアンデッド――白魔法使いがもっとも得意とする相手。
恐怖心さえ振り払えば、たぶん僕はここにいる竜騎士よりもずっとうまく戦える。
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