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第十二章 秘密

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「え?」
 レーモンが何を言っているのか、一瞬わからなかった。

「お前の魔法の力はこの先々アリス様、それにロードラント王国のため必ずや必要になる。――おい!」

 いつの間にか、竜騎士二人が僕の背後に回っていた。
 彼らは僕の腕をグイッとひねり上げ、手首に縄をかけ始めた。

「痛! ちょっと――止めてください!」

 何と抵抗しようとしたが、逆に縄を強く締め上げられてしまう。
 ガチガチの拘束だ。

「魔法を唱えられと厄介だな。すまぬが口も塞がせてもらうぞ」

 レーモンはさらに、僕にも猿ぐつわをはめようとする。
 顔をぶるぶる振って悪あがきしたけれど、無駄だった。

「暴れると舌を噛むぞ」
 レーモンはそう言いながら、僕の口に布を噛ませ、頭の後ろできゅっと結んだ。

 く、苦しい。

 猿ぐつわなんてされたの生まれて初めてだ。
 本当に何も言葉を発することができない。

 しかしこの手際の良さ――
 レーモンたちはずっと、この場からアリスだけを逃がす機会を狙っていたに違いない。 

「安全な場所に行ったら、縄はリナにほどいてもらえ。――リナ! なにをぐずぐずしておる! 早くこちらへ参れ!」
 と、レーモンがリナを呼びつける。

 リナは悲しそうな顔をして、僕のそばに来て言った。

「ごめんなさい、ユウトさん。アリス様をお守りするため、こらえて下さい……」

 リナもレーモン側の人間だったのか――
 僕が非難の目を向けると、リナは顔を背けてしまった。

 もちろん彼女に悪意はないだろう。
 すべてはアリスのためを思ってしたことなのだから。

 が、信じていた人の裏切られた衝撃は限りなく大きい。
 失望のあまり、僕は全身の力が急速に抜けていくのを感じた。

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