174 / 503
第十一章 決戦
(8)
しおりを挟む
アリスはどこだ?
僕は激戦の最中に見失ってしまったアリスの姿を探し、周囲を見回す。
ロードラント陣営は、新たなハイオークとコボルト兵の出現によって混乱具合が加速していた。
その中で、僕はまず馬に乗ったリナの姿を探し当てた。
ということはそばにアリスが――
いた。
アリスはちょうど自分の白馬に騎乗するところだった。
このロードランド軍存亡の危機に、馬上から兵士たちを励まし勇気づけようというのだろう。
が、その前に一つ、どうしてもアリスにやってもらいことがあった。
僕は兵士の山をかき分けアリスの元へ行こうとした、その時――
数本の流れ矢が頭上を飛び越えていくのが見えた。
「!!」
それはあっという間の出来事だった。
流れ矢のうちの一本が、リナの乗った馬の首の付け根を直撃してしまったのだ。
射抜かれたリナの馬はぶるっと痙攣し、大きくよろめいた。
このまま倒れたらリナが危ない!
下手をすれば馬体の下敷きになってしまう!
「リナ、馬から飛び下りろ!」
それに気付いたアリスが叫んだ。
言われた通り、リナは持ち前の運動神経の良さを発揮し、とっさに鞍を蹴って高く飛んだ。
その直後、馬はドスンと大きな音を立て横倒しになってしまった。
アリスが慌てて地面に転がったリナを抱き起す。
「大丈夫か、リナ!」
「はい、なんとか……」
リナはアリスに支えられ、ヨロリと立ち上がった。
全身が泥で汚れ腕に大きなアザができている。
「リナ、体を見せてみろ」
アリスはリナの体の泥をはたきながら、ケガの程度を確かめた。
「アリス様、おやめください。そんな恐れ多い……」
「いちいち気にするな。――よし、大した傷は負ってないようだな。まったく本当に肝が冷えたぞ。お前の身に何かあったら、私は永遠に立ち直れなくなる」
それはアリスだけじゃない。僕だって同じだ。
というかこの異世界でもリナを失ったら、この地で生きていく意味がほぼなくなるような気がする。
僕は急いでリナの元へ駆け寄った。
僕は激戦の最中に見失ってしまったアリスの姿を探し、周囲を見回す。
ロードラント陣営は、新たなハイオークとコボルト兵の出現によって混乱具合が加速していた。
その中で、僕はまず馬に乗ったリナの姿を探し当てた。
ということはそばにアリスが――
いた。
アリスはちょうど自分の白馬に騎乗するところだった。
このロードランド軍存亡の危機に、馬上から兵士たちを励まし勇気づけようというのだろう。
が、その前に一つ、どうしてもアリスにやってもらいことがあった。
僕は兵士の山をかき分けアリスの元へ行こうとした、その時――
数本の流れ矢が頭上を飛び越えていくのが見えた。
「!!」
それはあっという間の出来事だった。
流れ矢のうちの一本が、リナの乗った馬の首の付け根を直撃してしまったのだ。
射抜かれたリナの馬はぶるっと痙攣し、大きくよろめいた。
このまま倒れたらリナが危ない!
下手をすれば馬体の下敷きになってしまう!
「リナ、馬から飛び下りろ!」
それに気付いたアリスが叫んだ。
言われた通り、リナは持ち前の運動神経の良さを発揮し、とっさに鞍を蹴って高く飛んだ。
その直後、馬はドスンと大きな音を立て横倒しになってしまった。
アリスが慌てて地面に転がったリナを抱き起す。
「大丈夫か、リナ!」
「はい、なんとか……」
リナはアリスに支えられ、ヨロリと立ち上がった。
全身が泥で汚れ腕に大きなアザができている。
「リナ、体を見せてみろ」
アリスはリナの体の泥をはたきながら、ケガの程度を確かめた。
「アリス様、おやめください。そんな恐れ多い……」
「いちいち気にするな。――よし、大した傷は負ってないようだな。まったく本当に肝が冷えたぞ。お前の身に何かあったら、私は永遠に立ち直れなくなる」
それはアリスだけじゃない。僕だって同じだ。
というかこの異世界でもリナを失ったら、この地で生きていく意味がほぼなくなるような気がする。
僕は急いでリナの元へ駆け寄った。
0
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます
ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。
何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。
何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。
それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。
そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。
見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。
「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」
にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。
「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。
「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!
京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。
戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。
で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。
お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。
勇者としての役割、与えられた力。
クラスメイトに協力的なお姫様。
しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。
突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。
そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。
なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ!
──王城ごと。
王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された!
そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。
何故元の世界に帰ってきてしまったのか?
そして何故か使えない魔法。
どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。
それを他所に内心あわてている生徒が一人。
それこそが磯貝章だった。
「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」
目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。
幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。
もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。
そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。
当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。
日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。
「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」
──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。
序章まで一挙公開。
翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】
六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】
七章 探索! 並行世界【9/19〜】
95部で第一部完とさせて貰ってます。
※9/24日まで毎日投稿されます。
※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。
おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。
勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。
ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる