170 / 503
第十一章 決戦
(4)
しおりを挟む
戦場に凄まじい怒号が鳴り響く。
刃と刃のぶつかる音が空気を鋭く震わせる。
ロードラント、イーザ両軍の戦いは緒戦から苛烈を極めた。
イーザ騎兵は幾重にも部隊を分け、押しては引く波のように突撃を繰り返す、いわゆる波状攻撃の戦法を取ってきた。
一方のロードラント軍はアリスを中心にして壁を作り、騎兵の攻撃を懸命に跳ね返すだけで精一杯。
さながら強い波を防ぐ防波堤、と言ったところか。
しかし――
どんなに強固な堤でも、幾度となく押し寄せる波の浸食には耐えられない。
そこそこ厚かったロードラント軍の兵士の壁も次第に崩され、いびつな形へと変化していく。
竜騎士たちが遊軍となってそのカバーに入るが、それも限界があった。
その上、イーザ軍は指揮統一された精鋭ぞろいの騎兵集団で、烏合の衆だったコボルト兵とはワケが違う。
決して無理はせず、こちらの消耗を待って徐々に押していくる手練れた攻め方をしてくるのだ。
このままだと、思ったよりずっと早く決着がついてしまうかもしれない。
もちろん最悪な方向へ。
その戦況をなんとか有利な方向へ持っていくには――?
やっぱり僕の魔法しかないだろう。
が、白魔法のみでいったいどうやって戦えばいい?
しかも相手は二千の騎兵だ。
一人一人『スリープ』をかけて眠らせる?
いやそんなことはもちろん不可能、何かもっと別の魔法を――
と、必死に考える。
しかし、悪い時には悪いことが重なるもの。
ロードラント軍のしんがりを務めていたはずの副官マティアスが、後方から馬を走らせ、兵士たちに向かって叫んだのだった。
「みんな気をつけろ! 後ろから新手のコボルト兵が大量に現れたぞ。さっき倒したのとは別のハイオークもいる!」
驚いて振り返ると、平原の彼方から迫る黒山のようなコボルト兵の集団が見えた。
その中にでも、一際目立つハイオークの巨体。
なんてことだ!
前門のイーザ騎兵団。
後門のハイオーク+コボルト兵軍団。
この二軍団に挟み撃ちにされ、何をどう気をつければよいと言うのか?
――絶体絶命。
もはやそんな言葉しか思い浮かばない。
刃と刃のぶつかる音が空気を鋭く震わせる。
ロードラント、イーザ両軍の戦いは緒戦から苛烈を極めた。
イーザ騎兵は幾重にも部隊を分け、押しては引く波のように突撃を繰り返す、いわゆる波状攻撃の戦法を取ってきた。
一方のロードラント軍はアリスを中心にして壁を作り、騎兵の攻撃を懸命に跳ね返すだけで精一杯。
さながら強い波を防ぐ防波堤、と言ったところか。
しかし――
どんなに強固な堤でも、幾度となく押し寄せる波の浸食には耐えられない。
そこそこ厚かったロードラント軍の兵士の壁も次第に崩され、いびつな形へと変化していく。
竜騎士たちが遊軍となってそのカバーに入るが、それも限界があった。
その上、イーザ軍は指揮統一された精鋭ぞろいの騎兵集団で、烏合の衆だったコボルト兵とはワケが違う。
決して無理はせず、こちらの消耗を待って徐々に押していくる手練れた攻め方をしてくるのだ。
このままだと、思ったよりずっと早く決着がついてしまうかもしれない。
もちろん最悪な方向へ。
その戦況をなんとか有利な方向へ持っていくには――?
やっぱり僕の魔法しかないだろう。
が、白魔法のみでいったいどうやって戦えばいい?
しかも相手は二千の騎兵だ。
一人一人『スリープ』をかけて眠らせる?
いやそんなことはもちろん不可能、何かもっと別の魔法を――
と、必死に考える。
しかし、悪い時には悪いことが重なるもの。
ロードラント軍のしんがりを務めていたはずの副官マティアスが、後方から馬を走らせ、兵士たちに向かって叫んだのだった。
「みんな気をつけろ! 後ろから新手のコボルト兵が大量に現れたぞ。さっき倒したのとは別のハイオークもいる!」
驚いて振り返ると、平原の彼方から迫る黒山のようなコボルト兵の集団が見えた。
その中にでも、一際目立つハイオークの巨体。
なんてことだ!
前門のイーザ騎兵団。
後門のハイオーク+コボルト兵軍団。
この二軍団に挟み撃ちにされ、何をどう気をつければよいと言うのか?
――絶体絶命。
もはやそんな言葉しか思い浮かばない。
0
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
お姉さまは酷いずるいと言い続け、王子様に引き取られた自称・妹なんて知らない
あとさん♪
ファンタジー
わたくしが卒業する年に妹(自称)が学園に編入して来ました。
久しぶりの再会、と思いきや、行き成りわたくしに暴言をぶつけ、泣きながら走り去るという暴挙。
いつの間にかわたくしの名誉は地に落ちていたわ。
ずるいずるい、謝罪を要求する、姉妹格差がどーたらこーたら。
わたくし一人が我慢すればいいかと、思っていたら、今度は自称・婚約者が現れて婚約破棄宣言?
もううんざり! 早く本当の立ち位置を理解させないと、あの子に騙される被害者は増える一方!
そんな時、王子殿下が彼女を引き取りたいと言いだして────
※この話は小説家になろうにも同時掲載しています。
※設定は相変わらずゆるんゆるん。
※シャティエル王国シリーズ4作目!
※過去の拙作
『相互理解は難しい(略)』の29年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の27年後、
『王女殿下のモラトリアム』の17年後の話になります。
上記と主人公が違います。未読でも話は分かるとは思いますが、知っているとなお面白いかと。
※『俺の心を掴んだ姫は笑わない~見ていいのは俺だけだから!~』シリーズ5作目、オリヴァーくんが主役です! こちらもよろしくお願いします<(_ _)>
※ちょくちょく修正します。誤字撲滅!
※全9話
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる