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第十一章 決戦

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 戦場に凄まじい怒号が鳴り響く。
 刃と刃のぶつかる音が空気を鋭く震わせる。

 ロードラント、イーザ両軍の戦いは緒戦から苛烈を極めた。

 イーザ騎兵は幾重いくえにも部隊を分け、押しては引く波のように突撃を繰り返す、いわゆる波状攻撃の戦法を取ってきた。

 一方のロードラント軍はアリスを中心にして壁を作り、騎兵の攻撃を懸命に跳ね返すだけで精一杯。
 さながら強い波を防ぐ防波堤、と言ったところか。

 しかし――

 どんなに強固なつつみでも、幾度となく押し寄せる波の浸食には耐えられない。
 そこそこ厚かったロードラント軍の兵士の壁も次第に崩され、いびつな形へと変化していく。
 竜騎士たちが遊軍となってそのカバーに入るが、それも限界があった。

 その上、イーザ軍は指揮統一された精鋭ぞろいの騎兵集団で、烏合の衆だったコボルト兵とはワケが違う。
 決して無理はせず、こちらの消耗を待って徐々に押していくる手練れた攻め方をしてくるのだ。
 
 このままだと、思ったよりずっと早く決着がついてしまうかもしれない。
 もちろん最悪な方向へ。

 その戦況をなんとか有利な方向へ持っていくには――?
 やっぱり僕の魔法しかないだろう。

 が、白魔法のみでいったいどうやって戦えばいい?
 しかも相手は二千の騎兵だ。

 一人一人『スリープ』をかけて眠らせる?
 いやそんなことはもちろん不可能、何かもっと別の魔法を――
 と、必死に考える。

 しかし、悪い時には悪いことが重なるもの。 
 ロードラント軍のしんがりを務めていたはずの副官マティアスが、後方から馬を走らせ、兵士たちに向かって叫んだのだった。

「みんな気をつけろ! 後ろから新手のコボルト兵が大量に現れたぞ。さっき倒したのとは別のハイオークもいる!」

 驚いて振り返ると、平原の彼方かなたから迫る黒山のようなコボルト兵の集団が見えた。
 その中にでも、一際目立つハイオークの巨体。

 なんてことだ!

 前門のイーザ騎兵団。
 後門のハイオーク+コボルト兵軍団。
 
 この二軍団に挟み撃ちにされ、何をどう気をつければよいと言うのか?
 
 ――絶体絶命。

 もはやそんな言葉しか思い浮かばない。

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