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第九章 決闘《デュエル》

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「セフィーゼ!」
 ヘクターが振り向いて叫んだ。声は明らかに焦っている。

 ヘクターはセフィーゼが攻撃される前に僕を殺し、それからアリスを捕えるつもりだったのだ。 
 だが、アリスの予想以上の戦いぶりで作戦が狂ってしまった。

 結果としてセフィーゼの守りはがら空きになり――
 これはまずいと思ったのだろう、ヘクターはセフィーゼを助けるためアリスから離れようとした。

「行かせるか!」
 すかさずアリスが鋭く切りかかり、ヘクターの行く手を阻む。
「お前の相手は、この私だ!」

「くっ!」

 ヘクターは止む無くアリスの剣を受ける。
 その間にも僕はセフィーゼにぐんぐん近づいていった。

「ちょ、ちょっとヤバいよ!」
 セフィーゼは慌てた様子で呪文を唱えた。

『エアブレード!』

 虹色の風が今度は僕の方に飛んできた。
 が、避けるまでもない。
 さっきのアリスと同じように、僕を守る『Mガード』の壁もまた効力が持続しているからだ。

 あと少し! 

 僕は腰のショートソードに手をかけた。
 殺しはしない。
 ただ脅すだけ、脅して降参させるだけだ。

 ショートソードを抜いた僕を見て、セフィーゼの顔に恐怖の色が浮かぶ。
 おそらく今までの戦闘で、こんな危険な目に合うことはなかったのだろう。
 それだけ彼女の魔法は強力だったのだ。

 だが、今回はそうはいかない。
 この勝負、もらった!

 僕が勝利を確信したその時――

 体が突然、動かなくなった。
 四肢に透明の何かが絡みついて、まったく前に進めないのだ。

「キャハハ」
 セフィーゼが大笑いして、僕に近づいてくる。
「あーあ。見事に引っかかっちゃったね『エアウイップ』の罠に」

 なんだこれ!
 もがけばもがくほど、体が見えない何かに締め付けられてしまう。

「暴れても無駄だよ。ユウトくん魔法には詳しそうだけど、さすがにこの『エアウイップ』は知らなかったでしょ?」

 セフィーゼの言う通りだ。
 こんな魔法、見たことも聞いたことない。

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