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第九章 決闘《デュエル》
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静まり返る戦場に立つ四つの影があった。
王女と兵士、少女と将軍――
傍から見れば何ともおかしな組み合わせだろう。
僕だって、まさか異世界にまで来て、こんな奇妙なタッグマッチをするはめになるとは思わなかった。
ただし、決闘のルールは至ってシンプルだ。
基本的に勝敗はアリスかセフィーゼ、どちらかが死ぬか戦闘不能になった時点で決する。
僕とヘクターの生死は考慮に入れない。
加えて降参もあり、ということになった。
これはヘクターのたっての申し出で、万が一の時、セフィーゼの命を守るための保険だろう。
もっともセフィーゼ本人は不満そうだったが――
とにかく降参できるということはこちらにとっても好都合なので、もちろん僕たちはその申し出を受けた。
後はひとたび戦いが始まれば誰がどう動いても、攻めても守ってもまったくの自由。攻撃方法にも制限はなし。
第三者の介入は不可。これは言うまでもない。
一つ気がかりなのは、アリスが勝った場合、彼らが本当に約束を守るかという点だ。
勝敗が決した後、丘の上で待機しているイーザの騎兵隊が襲いかかってこないという保証はどこにもないのだ。
しかし、先回りをしてあれこれ心配しても意味がないのもまた事実。
結局、今は勝つことだけに全神経を集中させるしかないのだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「さ、そろそろ始めよ」
セフィーゼが向こうから叫ぶ。
「それともやっぱり怖くなった? ユウトくん、止めるなら今のうちだよ?」
「いいえ、戦います。でも少しだけアリス様と話させて下さい」
「最後のお別れでも言いたいの? ま、好きにすれば?」
と、セフィーゼは余裕たっぷりだ。
しめた。
甘いな、セフィーゼ。
「アリス様――」
僕とアリスはそれから少しの間話し合った。
セフィーゼとヘクターの持つ能力のこと、この場で使えそうな白魔法のことを伝え、僕なりに考えた作戦をアリスに説明する。
「いけそうだな」
アリスがうなずく。
「ユウトと一緒なら、きっと勝てる」
「はい!」
僕はこの人に信用されてる――
それが分かっただけで、嬉しくて、胸が一杯になった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「さあ、もういいよね」
セフィーゼが大声で言った。
「名残惜しいかもしれないけれど――」
「ああ、いつでもいいぞ」
と、アリスが言い返す。
王女と兵士、少女と将軍――
傍から見れば何ともおかしな組み合わせだろう。
僕だって、まさか異世界にまで来て、こんな奇妙なタッグマッチをするはめになるとは思わなかった。
ただし、決闘のルールは至ってシンプルだ。
基本的に勝敗はアリスかセフィーゼ、どちらかが死ぬか戦闘不能になった時点で決する。
僕とヘクターの生死は考慮に入れない。
加えて降参もあり、ということになった。
これはヘクターのたっての申し出で、万が一の時、セフィーゼの命を守るための保険だろう。
もっともセフィーゼ本人は不満そうだったが――
とにかく降参できるということはこちらにとっても好都合なので、もちろん僕たちはその申し出を受けた。
後はひとたび戦いが始まれば誰がどう動いても、攻めても守ってもまったくの自由。攻撃方法にも制限はなし。
第三者の介入は不可。これは言うまでもない。
一つ気がかりなのは、アリスが勝った場合、彼らが本当に約束を守るかという点だ。
勝敗が決した後、丘の上で待機しているイーザの騎兵隊が襲いかかってこないという保証はどこにもないのだ。
しかし、先回りをしてあれこれ心配しても意味がないのもまた事実。
結局、今は勝つことだけに全神経を集中させるしかないのだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「さ、そろそろ始めよ」
セフィーゼが向こうから叫ぶ。
「それともやっぱり怖くなった? ユウトくん、止めるなら今のうちだよ?」
「いいえ、戦います。でも少しだけアリス様と話させて下さい」
「最後のお別れでも言いたいの? ま、好きにすれば?」
と、セフィーゼは余裕たっぷりだ。
しめた。
甘いな、セフィーゼ。
「アリス様――」
僕とアリスはそれから少しの間話し合った。
セフィーゼとヘクターの持つ能力のこと、この場で使えそうな白魔法のことを伝え、僕なりに考えた作戦をアリスに説明する。
「いけそうだな」
アリスがうなずく。
「ユウトと一緒なら、きっと勝てる」
「はい!」
僕はこの人に信用されてる――
それが分かっただけで、嬉しくて、胸が一杯になった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「さあ、もういいよね」
セフィーゼが大声で言った。
「名残惜しいかもしれないけれど――」
「ああ、いつでもいいぞ」
と、アリスが言い返す。
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