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第八章 風の少女
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「でもでも、もしわたしがあなたに勝つどころか本当に殺しちゃったら?」
すっかり開き直ったセフィーゼが、アリスに問いかける。
「ロードラントはイーザを絶対に許さないんじゃない?」
「いや、王位継承者に二言はない。レーモンに厳命し、たとえ私が死んでも約束は必ず実行させる。向こうで戦いを見守っている私の兵士たち全員がその証人だ。彼らが無事にロードラントに帰った暁に、この取り決めが真実だということを証言させる」
なるほど、それなら万が一アリスが決闘に負け命を失っても、セフィーゼたちが撤退するロードラント軍に手を出すことはないはずだ。
アリスはそこまで考えて発言しているのだ。
もちろん僕は、決闘でアリスをみすみす殺させるつもりはないが――
「あとは私が勝った場合だが――セフィーゼ、その時は武装を解除しおとなしく撤退しろ。その後は我々に武器と軍馬すべてを引き渡し、二度と反乱を起こさないように誓え。――それだけだ」
「いいわ、私もイーザの長として約束する」
セフィーゼがうなずく。
「それと決闘にハンデなどいらんぞ。最初から魔法を使って全力でこい」
「えー」
セフィーゼは口をあんぐりさせた。
「本当にいいの?」
「うむ。ただしこちらも一人、魔法を使える味方を呼ぶ。だがもちろん二対一ではない。セフィーゼはヘクターと組めばよい」
「二対二――計四人で戦うってこと?」
「そうだ。それで対等だろう」
「ホントに、本当にそれでいの?」
セフィーゼはあきれた顔で念を押す。
「言っとくけど、ヘクターはイーザの戦士の中でも一番強いんだよ? たぶん絶対後悔するよ。仲間の死体が一つ増えるだけだよ」
「かまわん」
「へえー、ずいぶん余裕なんだね。ねえヘクター、その条件ならいいよね?」
「……仕方ありません。我々もあまり時間がない。早く終わらせましょう」
ヘクターは渋々うなずいた。
とはいえヘクターも、自身の剣とセフィーゼの魔法との組み合わせなら、絶対に負けないという確信があるのだろう。
でなければこんな決闘を承諾するはずがない。
そんな二人に対して、僕たちは――
剣の腕に関してはまあまあのアリスと、白魔法しか使えない自分。
勝てるのか? それで……。
すっかり開き直ったセフィーゼが、アリスに問いかける。
「ロードラントはイーザを絶対に許さないんじゃない?」
「いや、王位継承者に二言はない。レーモンに厳命し、たとえ私が死んでも約束は必ず実行させる。向こうで戦いを見守っている私の兵士たち全員がその証人だ。彼らが無事にロードラントに帰った暁に、この取り決めが真実だということを証言させる」
なるほど、それなら万が一アリスが決闘に負け命を失っても、セフィーゼたちが撤退するロードラント軍に手を出すことはないはずだ。
アリスはそこまで考えて発言しているのだ。
もちろん僕は、決闘でアリスをみすみす殺させるつもりはないが――
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「そうだ。それで対等だろう」
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「……仕方ありません。我々もあまり時間がない。早く終わらせましょう」
ヘクターは渋々うなずいた。
とはいえヘクターも、自身の剣とセフィーゼの魔法との組み合わせなら、絶対に負けないという確信があるのだろう。
でなければこんな決闘を承諾するはずがない。
そんな二人に対して、僕たちは――
剣の腕に関してはまあまあのアリスと、白魔法しか使えない自分。
勝てるのか? それで……。
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