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第八章 風の少女

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「パパ、だと?」
 アリスは眉をひそめた。

「そうよ、パパはあんたたちに殺されたのよ!! 何があっても絶対に許さないんだから!!」

「それは一体どういうことだ?」

「へえー。あくまでシラを切るんだ」
 セフィーゼの目が怒りに燃える。
「じゃあ教えてあげる。いい? 私のパパ――前の族長ウォルフはね、この間ロードラントの王様に呼び出されしぶしぶ王都に出かけて行ったの。しばらくして帰ってきたけど、その時はもう様子がおかしかった。そして言ったわ、『ロードラントはイーザを滅ぼすつもりだ』と」

「バカな! そんな話、私は聞いたこともないぞ」

「それだけじゃない。パパはその後すぐに倒れて、三日三晩苦しみ抜いて死んだわ。――ねえ、パパの最後の言葉なんだったと思う? 『ロードラント王に毒を盛られた』だって。わたしは別れの挨拶すらまともにできなかった」

「ロードラント王が――私の父が族長の毒殺を謀っただと?」

「そうよ! パパはそれまでは病気の一つしたことなかったのよ! それがいきなり死んでしまったんだから!」

 セフィーゼの目から涙がボロボロこぼれ落ちた。
 なにやら陰謀めいた、そして不可解な話だ。
 だが、もしセフィーゼの話がすべて真実だとしたら、イーザが反乱を起こした理由も納得がいく。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 
 セフィーゼの話を聞き、アリスは神妙な顔をして黙りこんでしまった。
 もしかして、何か思い当たる節でもあるのだろうか?

「黙ってないで、なんとか言いなさいよ!」
 セフィーゼがヒステリックに叫んだ。

「……残念ながら、私はその件についてはまったくの不知だ」
 アリスがようやく口を開いた。
「お前みたいな子供がイーザの族長を継ぐのはおかしいと思っていたが、そんないきさつあったのか」

「私は子供じゃない!! 偉大な族長ウォルフの娘、そして誰よりも強い風の魔法使いよ。さあ、覚悟なさい。わたしは今、あなたをここで殺す!」

 ああ……!
 イーザの族長である父親ウォルフの最期を思い出したことで、消えかかっていたセフィーゼの復讐心に再び火が付いてしまったようだ。

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