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第八章 風の少女
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「ですから言ったでしょう」
ヘクターがたまらず口を挟んだ。
「アリス王女、あなたが捕虜になればその他の者は全員助けると」
「散々私の仲間を殺してくれたお前たちの言葉を簡単に信じろだと? 無理だな」
「無理でも何でもアリス王女、あなたは我らに従うしかない。拒否権はないのです。さあ武器を捨てこちらに来なさい!」
「口を出すな、ヘクター! 私はイーザの族長であるセフィーゼと話をしているのだ」
アリスはそう言ってから、いきなり神剣ルーディスを投げ捨てた。
一歩、二歩とセフィーゼの方に向かって足を踏み出す。
「セフィーゼ、今すぐにここで私を思いのままに殺れ! 私は何の抵抗もしないぞ。お前は無抵抗の相手でも平気で殺せるのだろう?」
「わたしは…………わたしは…………」
「さあ、お得意の魔法で憎きロードラントの王女を殺ってみろ。それで私の兵を救えるなら、この命よろこんでくれてやる」
だがセフィーゼは動かない。体の震えがガタガタとさらに酷くなった。
アリスの言葉が相当ショックだったようだ。
「どうしたセフィーゼ? 顔色が悪いぞ」
「……………………」
「どうやら自分の犯した罪の重さに気付いたようだな。そうだ、どんな大義名分を掲げようとも、捕虜を虐殺した時点でお前たちに正義はなくなったのだ」
「………………黙れ」
「だが今ならまだ間に合う。ここで互いの軍を引けば、これ以上の流血は避けられる。違うか?」
「黙れ黙れ黙れ黙れ――!!!!!」
突然セフィーゼが叫んだ。
同時に全身から憎悪のオーラが湧き出し、魔力がぐんぐんと上昇し始めた。
まずい。
アリスが煽りすぎたのか?
「なに偉そうなこと言ってんのよ!! パパを殺したくせに!!」
と、セフィーゼが絶叫する。
その目には大粒の涙が光っていた。
ヘクターがたまらず口を挟んだ。
「アリス王女、あなたが捕虜になればその他の者は全員助けると」
「散々私の仲間を殺してくれたお前たちの言葉を簡単に信じろだと? 無理だな」
「無理でも何でもアリス王女、あなたは我らに従うしかない。拒否権はないのです。さあ武器を捨てこちらに来なさい!」
「口を出すな、ヘクター! 私はイーザの族長であるセフィーゼと話をしているのだ」
アリスはそう言ってから、いきなり神剣ルーディスを投げ捨てた。
一歩、二歩とセフィーゼの方に向かって足を踏み出す。
「セフィーゼ、今すぐにここで私を思いのままに殺れ! 私は何の抵抗もしないぞ。お前は無抵抗の相手でも平気で殺せるのだろう?」
「わたしは…………わたしは…………」
「さあ、お得意の魔法で憎きロードラントの王女を殺ってみろ。それで私の兵を救えるなら、この命よろこんでくれてやる」
だがセフィーゼは動かない。体の震えがガタガタとさらに酷くなった。
アリスの言葉が相当ショックだったようだ。
「どうしたセフィーゼ? 顔色が悪いぞ」
「……………………」
「どうやら自分の犯した罪の重さに気付いたようだな。そうだ、どんな大義名分を掲げようとも、捕虜を虐殺した時点でお前たちに正義はなくなったのだ」
「………………黙れ」
「だが今ならまだ間に合う。ここで互いの軍を引けば、これ以上の流血は避けられる。違うか?」
「黙れ黙れ黙れ黙れ――!!!!!」
突然セフィーゼが叫んだ。
同時に全身から憎悪のオーラが湧き出し、魔力がぐんぐんと上昇し始めた。
まずい。
アリスが煽りすぎたのか?
「なに偉そうなこと言ってんのよ!! パパを殺したくせに!!」
と、セフィーゼが絶叫する。
その目には大粒の涙が光っていた。
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