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第七章 死闘
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「わかった、まかせて」
僕はうなずいて言った。
確かに、マティアスはハイオークの鉄拳をまともに食らっている。
もし生きているのなら、エリックと同じようにすぐにでも治療を始めなければ危ない。
僕はリナにエリックのことを頼み、マティアスを探し始めた。
辺りは逃げ惑うコボルト兵と、それを追う竜騎士が入り乱れ滅茶苦茶な状態だ。
が、幸いにも、マティアスはすぐに見つかった。
彼の身に付けていた赤銅色の鎧が、混乱する戦場の中でも割と目立ったのだ。
マティアスは倒れてぐったりとしていたが、呼吸もしかっかりしており、エリックよりはずっと軽症な感じだった。
鎧が特別なのだろうか? 『リカバー』をかけると、かなりのスピードで回復していく。
まもなくマティアスは意識を取り戻した。
そして、上半身を起こして、
「ここは……? そうだ、ハイオークはどうした?」
と、僕に訊いてきた。
「マティアス様、もう大丈夫です。ハイオークは倒しました。コボルト兵もみんな逃げていきます」
「……あの男は――エリックは?」
「はい! 重傷を負いましたが、なんとか助かりました」
「そうか……」
それを聞いたマティアスが、ほんの少しだけほほ笑んだその時――
「ユウト!!」
向こうの方から僕を呼ぶアリスの声が聞こえた。
顔を上げると、白馬に乗ったアリスが、金の髪と濃紺のマントを風になびかせながらこちらに突き進んでくるのが見えた。
その後に、すっかり勢いを取り戻したロードラント軍の兵士たちが続く。
「見事だった、ユウト」
アリスはわざわざ馬を下り、僕のそばまで来てくれた。
すでに勝利を確信しているのか、その目は輝きを増している。
「いいえ、私はほとんど何もしていません。エリックとマティアス様に竜騎士、そしてリナ様のおかげです」
僕は正直に答えた。
事実、オークハイを倒すのに自分の魔法が役立ったのは、『リープ』と『エイム』を唱えた二回のみだ。
僕はうなずいて言った。
確かに、マティアスはハイオークの鉄拳をまともに食らっている。
もし生きているのなら、エリックと同じようにすぐにでも治療を始めなければ危ない。
僕はリナにエリックのことを頼み、マティアスを探し始めた。
辺りは逃げ惑うコボルト兵と、それを追う竜騎士が入り乱れ滅茶苦茶な状態だ。
が、幸いにも、マティアスはすぐに見つかった。
彼の身に付けていた赤銅色の鎧が、混乱する戦場の中でも割と目立ったのだ。
マティアスは倒れてぐったりとしていたが、呼吸もしかっかりしており、エリックよりはずっと軽症な感じだった。
鎧が特別なのだろうか? 『リカバー』をかけると、かなりのスピードで回復していく。
まもなくマティアスは意識を取り戻した。
そして、上半身を起こして、
「ここは……? そうだ、ハイオークはどうした?」
と、僕に訊いてきた。
「マティアス様、もう大丈夫です。ハイオークは倒しました。コボルト兵もみんな逃げていきます」
「……あの男は――エリックは?」
「はい! 重傷を負いましたが、なんとか助かりました」
「そうか……」
それを聞いたマティアスが、ほんの少しだけほほ笑んだその時――
「ユウト!!」
向こうの方から僕を呼ぶアリスの声が聞こえた。
顔を上げると、白馬に乗ったアリスが、金の髪と濃紺のマントを風になびかせながらこちらに突き進んでくるのが見えた。
その後に、すっかり勢いを取り戻したロードラント軍の兵士たちが続く。
「見事だった、ユウト」
アリスはわざわざ馬を下り、僕のそばまで来てくれた。
すでに勝利を確信しているのか、その目は輝きを増している。
「いいえ、私はほとんど何もしていません。エリックとマティアス様に竜騎士、そしてリナ様のおかげです」
僕は正直に答えた。
事実、オークハイを倒すのに自分の魔法が役立ったのは、『リープ』と『エイム』を唱えた二回のみだ。
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